見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし、リベンジ果たして成りあがる

腰尾マモル

文字の大きさ
上 下
333 / 459

【第333話】閃きの材料

しおりを挟む


「無我夢中だったから断言は出来ないが、恐らく俺は広げた魔砂マジックサンドを触覚の代わりにして全てのバンブレとフィルの動き出しを感知することで攻撃を避けた……と思う」

 俺は問いかけに対してハッキリとした答えを返せなかったが、フィルは何故か納得したらしく、満足そうに頷いている。フィルは場外にいるリリスへ少しだけ目を向けた後、すぐに俺の方へと向き直り、質問を続けた。

「なるほどね、技の原理は理解できたよ。だけど、もう一つだけ聞かせて欲しい。ガラルド君が技を閃く事が出来たのはリリスさんの声掛けがきっかけかな?」

「着想を得られたのはリリスのお陰だな。やたらと耳に突き刺さるリリスの叫びは聞く度に色々と考えさせられるんだ。特に今回のリリスは俺に気付きを与えたかったみたいだしな」

「……その気付きとやらを聞かせてもらってもいいかな?」

「漠然とした言い方になっちまうが、今までの経験全てが技の閃きに繋がったと言えるだろうな。俺は女神長サキエル様にスキル鑑定をしてもらう前は全然スキルを理解していなかったし、鑑定後も自分なりに工夫を重ねながら使ってきた。攻撃、移動、防御、隠密、牽制、挙げだしたらキリがないが、一番のきっかけは過去視で見たシルフィだと思う」

「シルフィ母さんが技を閃くきっかけだって? 詳しく聞かせてくれないか?」

 フィルは戦闘中なのを忘れているのかと思うぐらい熱心に尋ねてきた。『シルフィ母さん』という言い方からも俺よりよっぽど母親の事をリスペクトしているのが感じられる。

 この試合は真剣ではあるものの、あくまで訓練の一環だ。今この瞬間だけは勝敗を忘れてフィルの熱意に応えるべきだろう。俺は自分の考えを精一杯整理してから問いに答えた。

「過去視を通して俺はシルフィが魔砂マジックサンドを戦闘以外に使っている事を知ったんだ。元々、目の見えないディザールを補助したい気持ちから生まれたスキルらしいしな。シルフィは怪我の治療にも魔砂マジックサンドを使っていたらしいが、残念ながら今の俺には繊細に砂粒を動かす技量はない。だから現時点で俺がやれる範囲の真似事をしてみようと決めたんだ」

「なるほど、確かに自身の周囲十数メードに魔砂マジックサンドを浮遊させるだけなら繊細なコントロールは必要ないし、ガラルド君でも可能だろうね。それでも広範囲に砂を拡散する訳だから魔量の消費は激しそうだけど」

「ああ、フィルの言う通りだ。だから早めに決着をつけさせてもらうぜ。魔砂マジックサンドよ、敵の動きを知らせて、俺を導いてくれ――――行くぞ、フィル! レッド・モード!」

 俺は走りながらでもバンブレを感知して避けられると信じて全力でフィルに向かった。フィルは今できる精一杯の連撃を繰り出してきたけれど、俊敏さと感知を備えた今の俺ならギリギリのところで避けられるはずだ。

 俺の服に掠るほど、際どい連撃が四方八方から飛んできて、地面と空気を強烈な破裂音と共に叩いている。さっきよりも鋭さを増したバンブレに恐ろしさを感じつつも、俺の集中力は高まる一方だ。

 俺は少しずつ距離を詰め、フィルが振り抜いたバンブレを横跳びで回避すると同時に拳へ回転砂を纏わせて突いた。

「隙あり! レッド・インパクト!」

 俺の拳に久々の手ごたえが響き渡る。赤く熱せられた回転砂はマグマの渦と言わんばかりのエネルギーをフィルの横腹に炸裂させる。

「ぐあああぁぁっ!」

 煙とうめき声を上げながらフィルがゴロゴロと遠くへ転がっていく。だが、単発で終わらせるつもりはない、追撃を加えて逆転しなければ。俺は動きが鈍くなったバンブレの間をレッド・ステップで駆け抜けて追い打ちをかける。

「まだ終わりじゃないぜ! オラオラオラァッ!」

 俺からの追撃を受けるのはマズいと判断したのか、フィルは手に持っていたバンブレを捨てて、グリーン・セスタスで防御を固めた。それでも俺がやることに変わりはない。俺はひたすら赤き拳撃を繰り出し続ける。


――――ガラルド一点追加! 合計6ポイント!――――


――――ガラルド一点追加! 合計7ポイント!――――


 シリウスが連続でクリーンヒットをコールして俺達の点数は7―6となり、遂に俺が逆転することができた。七本のバンブレから繰り出す鞭の連打ヘヴィ・レインはもう二度と出させるつもりはない。

 このまま俺が押し切って、魔量の尽きる前に10ポイントになって勝利してやる。心の中で強く念じながら順調に拳撃を繰り出し続けていた――――だが、フィルの後方から何故か突然強い魔力を感じ、俺は思わず後ろへ下がってしまった。

 その魔力の正体は単にフィルの後方へ設置されていただけのバンブレなのだが、強い魔力を纏ったバンブレは俺ではなくフィルの体を叩いて遥か上空へと打ち上げてしまった。

 俺はフィルが間違ってバンブレを暴走させてしまったのかと思ったし、シリウスも自滅のような打撃を見てクリーンヒットの加点をしていいのか迷っているようだ。

 だが、俺はすぐにフィルが暴走したわけでも自滅したわけでもないと確信する事となる。何故なら打ち上げられたフィルは遠く離れた瞬間に笑みを浮かべたからだ。

 俺はフィルが上空から何か攻撃を仕掛けてくるのではないかと警戒しながら腕を構えていた。しかし、フィルは十秒以上経っても上から落ちてくることはなかった。何かの植物を利用して浮遊しているのだろうか?

 武舞台から30メードほど真上の位置で停止しているせいで手元や魔力の波動もよく見えない。サンド・ホイールを飛ばしてみてもいいが、これだけの距離があるうえに威力が近距離技やレッド・テンペストに劣る技を放っても魔量の無駄遣いになりそうだ、ここは大人しく出方を伺おう。

 俺とフィルが睨み合ったまま沈黙の時間を続けていると、先に動き出したのはフィルだった。フィルは両手をゆっくりと動かし、魔力で紋章の様なものを描くと、遥か下方にいる俺へ聞こえるように大声で呼びかける。

「次に僕が仕掛ける攻撃で決めさせてもらう! ガラルド君を真似るような手を打たせてもらうが許してくれ。僕は兄弟に負けたくないんだ!」


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。 ※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。 ※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。 俺の名はグレイズ。 鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。 ジョブは商人だ。 そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。 だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。 そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。 理由は『巷で流行している』かららしい。 そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。 まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。 まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。 表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。 そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。 一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。 俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。 その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。 本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~

川嶋マサヒロ
ファンタジー
 ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。  かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。  それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。  現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。  引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。  あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。  そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。 イラストは ジュエルセイバーFREE 様です。 URL:http://www.jewel-s.jp/

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...