見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし、リベンジ果たして成りあがる

腰尾マモル

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【第273話】迫る別れ

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 グラド達がスキル鑑定を終えてから数日後、民衆の関心は五英雄のことでもちきりだった。

「聞いたか? 五英雄のグラドが魔獣を引き寄せるスキルを持っていたらしいぞ?」

「本当か? って事はこれまでイグノーラが度々魔獣に襲われてきたのも……」

「まだ確定の情報じゃないと思っていたけど、これだけ噂になっていたら確定しているようなものなのかな? 最高の英雄が現れたと思っていたのに残念だわ……」

 どうやら思っていた以上にグラドの悪評が広がっているようだ。まだスキルの解読が完全に完了している訳ではないのにここまで酷くなっているのは、恐らくコルピ王が必要以上に不安を煽るような情報伝達をしてきたからだろう。

 民衆は少しずつコルピ王の思想へと偏っていき、五人は更に居心地の悪い暮らしを強いられている。しまいには帝国への帰還準備を進めていた海洋ギルドへの補助金と人手も減らされたりとグラド以外の五英雄にも風当たりがきつくなっているようだ。

 過去の映像を見ている俺達には何も出来ないのが本当に歯痒い。出来る事ならグノシス王を殺した証拠を見つけ出してコルピ達を突き出したいところだ。

 だが、グラド達にとって散々な状況ではあるが、それでもめげずに自分達の仕事を続けている姿を見て、五人は立派だと感心させられるばかりだ。

 グラドのスキル鑑定で出た石版の写しは翻訳の為にイグノーラ内外に散らばり、多くの学者たちが解読作業に勤しんでいるようで、完全に解読されてしまう日も近そうだ。

 そんな日々を送っていると、五人とコルピ王の前に数人の学者が現れた。その中でも一際賢そうな老年の女性が解読の進捗についてコルピ王へ提言する。

「お目にかかれて光栄ですイグノーラ王コルピ殿。早速ですが、古代文字解読の経過を報告させてください。我々学者団の解読によると、やはりグラド殿のスキルは広範囲の魔獣を引き寄せるものである確率は高そうです」

「そうか、やはりグラドは私にとって疫病神になりそうだな……」

「ですので、一つ提案があります。グラド殿を人の居ない遠方の地へ送り、魔獣の引き寄せがどう推移するか調べてみるのはいかがでしょう? ちょうど北方の死の山手前は人が住んでおらず、森林も多いので魔獣も多くいることでしょう」

「ふむ、それは良い提案だな。兵士を一定間隔で配置して魔獣の数と動きを計測させれば違いがハッキリする事だろう。早速明日からグラドを北方へ移動させることとする。結果次第では一生イグノーラへ帰ってくることは出来ないだろうから別れは今日中に済ませておけ、分かったなグラド?」

「ああ、好きにしろ……」

 急すぎる提案に対しグラドは諦念の表情を浮かべながら即答する。動揺する四人の仲間はすぐにコルピへ反論するが、カーラン派の数に押されて決定が覆る事はなかった。

 こぶしを震わせて悔しがる四人とは対照的にグラドは謁見の間を出た後も自分の家で淡々と明日の準備を進めていた。その様子を見たディザールは声を荒げてグラドへ詰め寄る。

「おい! グラド! お前はこのままで本当にいいのか? もし、魔獣を呼び寄せるスキルがあったら一生町で暮らせないどころか殺される可能性だってあるんだぞ?」

「それならそれで仕方がないさ。俺は死ぬ運命だったということさ。むしろ俺一人に憎しみの目が向けば、他の四人への風当たりは軽減されるかもしれないし、そうなった方がいいのかもな」

 自暴自棄になったグラドは乾いた笑いで語った。そんなグラドを見ているのが耐えきれなくなったディザールはグラドの胸倉を掴み、怒鳴りつける。

「お前はいつからそんな腑抜けになったんだ! いつものお前なら諦めずにどうにかする方法を探す筈だろうが!」

「正直、俺は恐くなったんだ。何万もの人間から懐疑の目や憎しみの目を向けられることが……。魔人ディアボロスとの戦争では兵士にも民衆にも少なからず死傷者が出た。中には大事な人を失った遺族や友人もいるだろう。そんな悲しみに暮れる人達を生み出したのが俺かもしれないと思うと正気を保ってなんかいられない……俺は自分のスキルを確かめて、結果によってはケジメをつけなきゃいけないんだ」

「……グラドの気持ちを少しは分かったよ。だったらせめて僕達も北へついていってグラドを守らせてくれ。僕達は五人で一つの――――」

「駄目だ! ついてくるなっ!」

 長時間記憶の水晶を見てきたが、ここにきてグラドが初めて仲間へ怒鳴った。俺だけではなく仲間の四人も声を失う程に驚いているなか、グラドは自分の考えを伝える。

「もし、俺に魔獣を引き寄せるスキルがあったなら北方のエリアは危険すぎる場所になる、城壁も無ければ兵士もろくに配備されていないんだからな。そんな場所にお前達を連れて行くことなんてできるはずがない」

「何を言っているんだ、危険だからこそ僕達がついて行くんじゃないか。グラドが嫌だと言っても僕は行くぞ」

「気持ちはありがたいがそうはさせないぞ。俺はコルピ王に提言してお前達四人を北へは来させないようにする。コルピ王は俺達のことが嫌いだが、国にとって役立つ人材とは認めているからな。みすみすお前達四人を北へやることはないだろう」

「ちくしょう……何で僕達の想いを分かってくれないんだよ……」

 何を言っても聞き入れてくれないグラドにとうとうディザールは膝から崩れ落ちてしまう。のちにアスタロトとなるディザールが誰よりも熱く仲間想いだったなんて皮肉な話だ。

 眉を八の字にしながら地面に座り込んだディザールを見つめるグラドはまるで遺言でも伝えるかのように四人へ語り掛ける。

「みんな、最後に俺からのお願いを聞いてくれ」


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