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【第235話】リヴァイアサンが得たもの
しおりを挟む大陸南側の国々へ大陸会議招集の話をしに行こうとした矢先、リリスはドラウの森に残りたいと言いだした。リリスも俺に負けず劣らずの旅好きな奴だと思うし、特別修行が好きなタイプでもないから不思議に思い、理由を聞いてみる事にした。
「ドラウで何かやりたいことがあるのか?」
「えー、まぁそうですね。同じ女神であるフローラさんから学べることも多いですし、不思議な植物は私も興味あります。それに政治的な動きをするならガーランド団代表のガラルドさんとドライアド代表のサーシャさんがいれば成り立ちますしね」
確かにリリスの言う通りだが、それでも普段のリリスなら残れと言ってもついてきそうな気がするのだが……。それに理由を言っている時も少し歯切れが悪かった気がする。
無理についてこいと言ってもリリスの負担になるかもしれないし、他に理由があるんじゃないかと掘り下げるのも良くない気がするからそっとしておこう。
「分かった、それじゃあ俺とグラッジとサーシャでササッと国々を巡ってくることにするか。一通り仕事を終えたら直ぐにドラウの森へ迎えに来るからな。頑張れよ、ゼロ、リリス。そして二人の事をよろしくな、フローラ」
リリスもフローラもゼロも俺の言葉に頷きを返した。俺達はフローラのスキルで森の入口まで移動して、そのままリヴァイアサンが待つドラウ港まで歩いて行った。
グラッジはリヴァイアサンと合流すると、早速フローラと野盗組織の話を伝えた。リヴァイアサンは怒っているのか悲しんでいるのかも分からない微妙な表情をした後、何かを喋り、それをグラッジが翻訳した。
「リヴァイアサンは『自分が破壊した港町を再び目にすることが正直怖かったが、七恵の楽園が復興しつつある事が知れたし、フローラの偉大な活躍も知ることが出来てよかった。ガーランド団の為に連れてきたつもりだったが自分が一番得るものが多かったかもしれない。多くの事を知れたのも君達のおかげだ、ありがとう。これからも色々と手伝わせてくれ』と言っています」
礼を言ったり、恩返しをしたいのはこちらの方なのにリヴァイアサンは本当に義理堅い奴だ。俺達はグラッジを通してリヴァイアサンにお礼を言い、『これからもよろしく頼む』と伝えると、リヴァイアサンは逞しくも優しい雄叫びをあげた。
より一層リヴァイアサンとの仲を深められたような気がする。俺達はこれからの予定をリヴァイアサンに伝えると、早速俺達を背に乗せてシンバードに向かってくれた。
道中ではリヴァイアサンの背に乗せたモンストル号の上で俺とグラッジが戦闘訓練に明け暮れた。これから先どんな戦いや冒険が待っているか分からないから移動中といえども鍛えられる時に鍛えておくべきだと思ったからだ。
戦闘音が鳴り響く船を乗せたリヴァイアサンは順調に水中を進み、翌日シンバードに到着した。
※
シンバードの港に降り立った俺達は早速シンの居る宮殿へと向かった。シンにただいまの挨拶をした後、俺達はドラウの旅で得た情報を全て話した。
シンはディアトイルへの差別とスターランクが生まれた経緯を伝えている時が一層険しい顔をしていて、ずっと下唇を噛みながら話を聞いていた。一通り話し終えると、シンはこれからのことについて話し始めた。
「君達が得たものはよく分かった。君達が大陸南を旅している時も帝国は少しずつ領地を拡大していて大陸の王様だと言わんばかりの振る舞いをみせていたんだけど、やっぱり大昔からの血や理念みたいなものがそうさせているのかもしれないね。過去の帝国の恐ろしさも聞けたことだし、一層防備を固めておくことにするよ」
シンバード領と帝国領は近い訳ではないけれど、手出しできない距離でもないから防備を固めるシンの判断は悪くないと思う。ジークフリートを支配しようとしたビエードの件もあるし、モードレッドだって何を考えているのか分からないから尚更だ。
そしてシンは俺達へ次の任務を出した。
「それじゃあ早速ガラルド君達には次の仕事をお願いする事にしよう。と言っても予想はついているだろうけどね。仕事は主に二つあって『大陸南の国々に大陸会議の参加を依頼してきてもらう』ことと『ジャッジメントを持っていき、ザキールに尋問してくる』ことだ」
そう言ってシンは腰にぶら下げていたジャッジメントを手に取り、俺へ渡した。シンバードの国宝と言ってもいい程に貴重なアーティファクトだから絶対に失くさないようにしなければ。俺はジャッジメントを胸の前に掲げ、任務の成功を誓った。
「シンがいつも肌身離さず持っていた宝物を預かってしまったからな、必ずザキールから貴重な情報を引き出してくるよ。それじゃあ行ってきます!」
俺達は互いに手を振り合って宮殿を後にした。
行ったり来たりでバタバタとしているからストレングやドライアドの人間に挨拶していきたいところだが、ゆっくりとしていたらまたサーシャに尻を叩かれてしまう。そのまま一直線にリヴァイアサンへと乗り込んだ。
一時間前にリヴァイアサンから降りたばかりの俺達は再びリヴァイアサンにお願いしてイグノーラへ向かうことにした。
リヴァイアサンに「休まなくても大丈夫なのか?」 と尋ねると「自分は人間とは時間の感覚が違う、数日寝れば数十日は動き続けることが出来るから心配するな」と言い、すぐさま動き出してくれた。
分かってはいたが、やはり神獣という存在は次元が違うんだなと改めて実感する事となった。
働き詰めのリヴァイアサンに感謝しつつ、俺達はすぐさまイグノーラへ進んだ。
イグノーラの皆とお別れしてからまだそれほど月日は流れていないが、それでもイグノーラの人々に会えるのは楽しみだ、正直ザキールとは会いたくないけれど……。
シンバードからイグノーラへの航海も何事もなく進み、翌日俺達は近くの海岸から歩きイグノーラへ到着した。
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