186 / 459
【第186話】ヒュドラ戦 決着
しおりを挟むヒュドラの心臓に狙いを定めて走る俺達に対し、ヒュドラはこちらを見つめながら、後ろへ大きく飛んで距離をあける。そして獲物を狙う虎のように両手足を地に付けて、姿勢を低くした。
俺達の狙いが勘づかれたのかと思ったが、ヒュドラには別の考えがあった。それは、全ての頭を一点に固めて、一斉に各種ブレスを放って片をつけるというものだった。
あらゆるエネルギーが一点に集まる様子は破壊力を持つという情報さえなければ色とりどりの模様に見えて綺麗だと感じるだろう。だが、俺達にはただひたすら禍々しいものにしか見えない訳だが。
数秒後には放出されるであろうブレスを前にレックが覚悟を促してきた。
「あれだけのエネルギー集合体なら、横に飛んで避けるなんて不可能だ。このまま真正面からバニッシュ・レイピアで一直線にブレスを突き破ってヒュドラの胸に飛び込むぞ、気合を入れろよ!」
「レックこそ、ブレスを貫通しきる前にバテるなよ? お前が力尽きた瞬間、俺とグラッジも終わりだからな」
「よろしくお願いします、レックさん!」
俺とグラッジの返答を受けて、小さく微笑んだレックは大きく息を吐き出し、鬼気迫る程に集中し始めた。その間にブレスエネルギー完成させたヒュドラは一斉にブレスを吐きだした。
「ヴアアアァァァ!」
けたたましい音と共に一本の螺旋状になったブレスエネルギーは、重なることで虹を彷彿とさせる極太の光の筋となった。予想通り絶対に躱すことのできない広範囲ブレスが迫ってきているが、レックは怯むことなく先頭を走り、レイピアを突き出した。
「バニッシュ・ペネトレーション!」
レイピアだけではなく、体にまで魔力を消失させるオーラを纏ったレックは、まるで激しい川を逆流する魚のように、向かってくるエネルギーを割いて進んでいった。
後ろにいる俺とグラッジは、少しでもレックから横にずれてしまうと、たちまちブレスに飲み込まれてしまうことを恐れ、ついていくのに必死だった。
前方は眩しくて見え辛いからどれだけヒュドラに近づけているのか分からないが、強大なエネルギーをかき消し続けているレックは確実に消耗していた。
魔量が枯渇したとき特有の『五感が鈍る状態』になりながらも前へ前へと進み、俺達に合図を出した。
「あと少しでヒュドラの胸元に到着だ、絶対に決めてこい!」
肩で息をしながら虚ろな目と擦れた声でレックは強く言い切った。そして、最後にレイピアをギュッと握り直したレックはモードレッド戦でも使った、放出する消失スキルを放った。
「バニッシュ・トラストォォ!」
最後の叫びを合図に俺とグラッジはレックの両脇から飛び出した。真上ではブレスが消失して視界がクリアになり、ヒュドラの顔がこちらを見下ろしているのが分かった。
螺旋のブレスがごっそりと消失させられて、驚いているヒュドラを尻目に俺とグラッジは渾身の一撃をヒュドラの胸に向かって放つ。
「レッド・テンペスト!」
「双蒸撃!」
『紅蓮の砂嵐』と『炎氷の二槍』がほぼ同時にヒュドラの胸に当たると、閃光爆発とも言うべき衝撃がヒュドラを中心に巻き起こった。
あまりの爆風と爆音に目と耳が痛くなり、一瞬息が出来なくなって、三人とも後ろへ飛んでいってしまった。
ゴロゴロと転がってしまった体を手をつき地面に滑らせ、無理やり止めて起き上がるとヒュドラの頭は全て、直立で停止していた。
「た、倒せたのでしょうか?」
不安げにグラッジが呟き、全員でヒュドラの胸元を見てみたが、雲海のように真っ白な煙が長々と漂い続けて、致命傷を与えたのかが確認できなかった。
俺も無事倒せたのか不安になっていたが、ヒュドラは首を直立にしたまま、全ての頭が棒を倒すようにバタンと勢いよく倒れて、手足も胴体もべたりと地面にくっ付いた。
ヒュドラの顔を見てみると全て白目を剥いている、うつ伏せになった影響で胸の損傷具合は確認できないが、どうやらヒュドラを撃破する事が出来たようだ。俺は遅れて湧いてきた勝利の実感をヘトヘトになりながら呟いた。
「や、やったぞ、遂にヒュドラを止めたんだ」
俺達三人がこぶしを天に掲げると、兵士と民衆がウッド・ローパーを倒した時よりも大きな歓声をあげ、武器と足踏みで音を鳴らして称えてくれた。
ウッド・ローパーと戦っていた時よりもずっと消耗しているだろうに、それでもこれだけの声をあげてくれたのは、本当の勝利が近いからなのかもしれない。
後は残された魔獣を全滅させるだけだ、体力が充分に残っている帝国第四部隊の加勢を以てすればきっと倒せるはずだ。俺達三人も加勢するべく、魔獣の群れへ足を向けるとレックが突然膝から崩れ落ちた。
レックが頭をぶつける前に俺は慌てて支えにいったが、レックの体重すら支えきれず二人一緒に地面へ倒れてしまった。俺は地面に倒れたままレックの身を案じた。
「おい、大丈夫かレック、顔が真っ青だぞ」
「ふん、人の事を言えないだろう、ガラルドも憔悴しきってるじゃないか。お互い……いや、三人とも体力が底をついたようだな」
グラッジの方に視線を向けると、グラッジも片膝をついて息を切らしていた。このままじゃとても加勢できそうにない、それどころか雑魚魔獣にすらやられてしまいそうだ。
そんな俺達の様子を遠くから見ていたのか、ソル兵士長と部下の兵士が慌てて駆け付け、俺達三人を馬に乗せて、街の中の診療所へと運んでくれた。
馬を走らせる道中、ソル兵士長は「本当にかっこよかったですよ御三方。貴方達は紛れもなくイグノーラの英雄だ」と涙ぐみながら称えてくれた。
戦争の音が鳴り響く中、診療所に入ると、そこにはサーシャとリリスの姿があった。リリスの横のベッドに寝かされた俺は、首を横に向けてリリスの身を案じた。
「頭の怪我は平気か、リリス?」
「正直、血を流しすぎて横になっててもフラフラします。もう、この戦いに戻るのはきびしいかもしれません」
「ああ、ゆっくり休んでくれ。それにヒュドラを倒して、帝国第四部隊まで駆け付けてくれたから、後はもう雑魚魔獣を全滅させるだけだ。俺達はゆっくり休んでも勝てるはずだ。褒めるのは癪だが、正直レック達のお陰だよ」
俺がそう呟くとレックは照れくさそうに頭を掻いた。戦いはまだ続いているが、診療所で横になっている今なら帝国第四部隊がどのように旅してきたかをゆっくりと話す事が出来るかもしれない、俺はレックに尋ねた。
「ようやく、座ることが出来た事だし、聞かせてくれレック。レック達はどういう流れでイグノーラに来て、俺達を助けてくれたんだ?」
0
お気に入りに追加
390
あなたにおすすめの小説
おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる
シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。
※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。
※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。
俺の名はグレイズ。
鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。
ジョブは商人だ。
そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。
だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。
そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。
理由は『巷で流行している』かららしい。
そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。
まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。
まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。
表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。
そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。
一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。
俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。
その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。
本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

【完結】投げる男〜異世界転移して石を投げ続けたら最強になってた話〜
心太
ファンタジー
【何故、石を投げてたら賢さと魅力も上がるんだ?!】
(大分前に書いたモノ。どこかのサイトの、何かのコンテストで最終選考まで残ったが、その後、日の目を見る事のなかった話)
雷に打たれた俺は異世界に転移した。
目の前に現れたステータスウインドウ。そこは古風なRPGの世界。その辺に転がっていた石を投げてモンスターを倒すと経験値とお金が貰えました。こんな楽しい世界はない。モンスターを倒しまくってレベル上げ&お金持ち目指します。
──あれ? 自分のステータスが見えるのは俺だけ?
──ステータスの魅力が上がり過ぎて、神話級のイケメンになってます。
細かい事は気にしない、勇者や魔王にも興味なし。自分の育成ゲームを楽しみます。
俺は今日も伝説の武器、石を投げる!

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!
よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。
10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。
ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。
同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。
皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。
こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。
そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。
しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。
その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。
そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした!
更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。
これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。
ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~
川嶋マサヒロ
ファンタジー
ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。
かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。
それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。
現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。
引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。
あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。
そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。
イラストは
ジュエルセイバーFREE 様です。
URL:http://www.jewel-s.jp/

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる