見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし、リベンジ果たして成りあがる

腰尾マモル

文字の大きさ
上 下
160 / 459

【第160話】求めていた情報

しおりを挟む


 手紙を鞄にしまったグラッジは大きくため息をついた後、これからの事について話し始めた。

「僕達がこれからどう動くかが決まりましたね。まずは僕の魔獣寄せとは関係なしにイグノーラを襲っている魔獣群を何とかしましょう。もしかしたら僕がイグノーラに近づけば現在イグノーラ襲っている魔獣の注意を僕の方に向ける事が出来るかもしれません、だから行ってみようと思います。危険ですがガラルドさん達は死の山の真実をお父さん……いや、グラハム王に直接伝えてきてもらえますか? そして、可能であれば防衛を手伝ってほしいです」

「ああ、勿論そのつもりだ。グラハム王へ近づく前にソルに襲われるかもしれないが、何とかしてみせるぜ。イグノーラが最初に死の山の真実を知り、イグノーラが大陸の中心国となって死の山と戦えるようになるといいな」

「はい、そうなるように頑張りましょう! そして全てがうまく片付いたら、その時はエリーゼさんにお爺ちゃんが亡くなったことを伝えに行きたいと思います。とは言っても僕は魔獣寄せがあって村には近づけないので何か手を考えないといけませんが……」

「その時は俺達がエリーゼさんを村から連れ出して、護衛しながら離れた場所にいるグラッジのところへ連れて行くさ。それこそ俺達が最初に寝泊まりした千年樹の洞窟でもいいしな。千年樹の上でいくらでもグラドに関する思い出話をしたらいい」

「何から何まで……本当にありがとうございます! この恩は戦いで返してみせます」

 グラッジは嬉しそうにお礼を言ってくれた。グラッジとの約束を守る為にもまずは近々の問題を何とかしなければ。俺達は六心献華ろくしんけんかによって灰色の砂粒と化したグラドの欠片を袋に詰めた、落ち着いたら墓に埋めてあげる為だ。

 そして俺達はイグノーラへ行くべく小屋を後にした。小屋にいた時間は一時間にも満たないが、手紙の内容があまりにも濃かったせいで、長時間いたような錯覚を起こしそうだ。

 俺達は小屋を出て、洞窟の細い通路を歩いていると、洞窟の外が何やら騒がしくなっていた。もしかしたら魔獣が入口に溜まっているのかもしれないと警戒しながら洞窟を出ると、そこには俺の予想通り、三十匹以上の魔獣が入口を囲んでいた。

 一刻も早くイグノーラへ向かいたいのに……と焦る気持ちを抑えながら武器を構えると、群がる魔獣の奥から、絶対に出会いたくなかった存在が現れた。


それは、青色の体をした魔人だった。青の魔人は血走った目で俺達の事を睨んでいる。

 イグノーラで読んだ本にはディアボロスの容姿について『人と同じような身体に赤と黒の紋章を刻み、蝙蝠の羽に似た強靭な翼を持ち、狼の様な鋭い牙と目を持っている』と書いてあったが、青の魔人はディアボロスの赤い部分をそのまま青くしたような見た目をしていた。

獅子のような鋭い目つきと眉間に深く刻まれた皺は猛獣のようなオーラを醸し出しているものの、分け目をつけずに髪を全部後ろになで上げる整った髪形からは野性味と共にどことなく気品を感じさせた。

 青の魔人が生きているということは六心献華ろくしんけんかを避けてしまったのか、それとも目の前の魔人はよく似た別の個体なのか? とも考えたが、目の前の魔人の体は左の羽がほとんど無くなっていて、まるで溶けているかのように根元からボロボロになっており、左腕と左足も羽ほどではないもののズタボロになっている。

 このことからもグラドは六心献華ろくしんけんかを青の魔人に当てることは出来たものの、とどめには至らなかったと推測できる。俺は目の前にいる青の魔人から聞き出してやろうかと思ったが、それより先に青の魔人が語り始めた。

「てめぇがグラドの孫かァ? 俺様はグラドの自爆技を喰らってこんな体になっちまったんだ。長い間ろくに動けなかったうえに飛び回るのにも不自由で、あいつが憎くてたまらねぇよ。だから、消えちまったグラドの替わりにお前を殴り殺させてくれよ」

 今にも飛び掛かってきそうな青の魔人の気迫に正直俺はビビっていた。しかし、グラッジは全く怯んではおらず、強く言い返す。

「憎くてたまらないのは僕の台詞だ。お爺ちゃんを散々いたぶったお前の方こそ許せない存在だ。僕の名はグラッジ、まずはお前の名を名乗れ!」

「ん? お前は俺様がグラドをなぶり殺しにしようとしていたのを知っているのか? フンッ、グラドめ、遺言を残していやがったか。まぁいいだろう、冥土の土産に教えてやる。俺様の名はザキール。死の山の魔獣を統括する魔人の一人だ」

 『死の山の魔獣を統括する魔人の一人』……この言い方から察するに、他にも魔人、もしくはそれに準ずる存在がいると考えられそうだ。それが、グラドが過去に戦った二番目の魔人という奴だったら相当厄介なことになりそうだ。

魔人という存在がどの程度の寿命を持つのかは分からないが、かなりの強敵だという二番目の魔人には既に死んでおいてほしいものだ。俺はザキールにグラドを襲った目的を尋ねた。

「おい、ザキール。お前はどうしてグラドを襲ったんだ? 絶対に答えてもらうぞ」

「ほほう、孫のグラッジに負けず劣らず殺しがいがありそうな男がいるじゃないか。いいだろう答えてやろう。一言で言えば、我々魔獣・魔人にとって邪魔な存在だったからだよ。長い年月人類が足を踏み入れてなかった死の山に入ってきたグラドは人間にしては腕が立つようでな、魔獣集落の規模や位置を調べ上げて、情報を人里へ持って帰られそうだったからな。だから、殺してやるつもりだったんだ。まぁ時間をかけていたぶったのは俺様の趣味だがな、ギャハハ」

 ザキールは邪悪な笑みを浮かべ、反吐が出る台詞を吐いた。その瞬間、堪忍袋の緒が切れたグラッジがザキールへ突進し、氷の槍を突きだした。しかし、ザキールは片手で難なく突きを受け止め、余裕の笑みを浮かべている。

 予想はしていたが、やはりザキールは俺達よりずっと強い。このままではザキールに近づいたグラッジが危険だ。俺はすぐに離れるよう呼びかけた。

「落ち着けグラッジ! 怒りにまかせて戦っちまえばザキールの思うつぼだ。あいつは言葉で揺さぶる様な下衆野郎だ、聞く耳を持つな。俺達全員で対処するぞ!」

「くっ! でも、こいつは……。いえ、分かりました、一旦頭を冷やします。すいませんでしたガラルドさん……」

 そう言うと、グラッジは氷の槍を回転させてザキールの手を払いのけ、後ろへ大きく飛んで俺達のいる位置へ戻ってきた。これで一旦状況を落ち着かせることができた。俺達は全員武器を構えて、ザキールの周りを囲んだ。

 しかし、ザキールはうろたえる様子はない、むしろ顎に手を当てて何かを考えているようにも見える。この状況でそんな呑気な態度を取っていられるなんてよっぽど自分に自信があるようだ。俺はザキールが何をしているのかを尋ねた。

「取り囲まれているのに随分余裕じゃないかザキール。死んじまったら考え事なんか出来ないぜ?」

「フンッ、蟻が何匹囲もうが同じ事だろう。それよりも貴様……名をガラルドというのか?」

 こんな状況にも関わらず、何故かザキールは俺の名を尋ねてきた。この時俺は魔人がわざわざ俺の名を尋ねてくる状況に嫌な予感を覚えた。だが、今更違うとも言えるわけもなく「ああ、その通りだ」と返事を返した。

「そうかそうか、貴様がガラルドだったか。不快なパラディアの匂いが洞窟の方へ移動していると魔獣達が騒いでいたから、グラドの家族を殺せるチャンスかもしれないと思って来てみたが、まさかグラッジだけではなく北の英雄ガラルドにまで会えるとはな、今日の俺様はつくづく運が良い」

「……俺に何か用か?」

「その様子だとコロシアムでフィルから何も聞いていないようだな」

「フィル? 誰だそいつは?」

「そうか、あいつは名前すら名乗っていないのか。フィルは貴様がコロシアムの決勝で戦った緋色の眼をしたローブを着た男の名前だ。まぁ考えてみればあの時点でガラルドに全てを伝えちまうと頭が追い付かないと判断するかもな」

「さっきからお前は何が言いたいんだ? さっぱり分からないぞ、さっさと本題に入れ」

「フッ、いいだろう、じゃあガラルドにいい事を教えてやろう。それは貴様の親についてだ」

 ザキールは何を言っているんだ? 何故魔人であるザキールが俺すら知らない実親の事を知っているんだ? それだけじゃなくローブマンもといフィルとすら関りがありそうだ。

数秒の間に色々と嫌な予想が頭をよぎっておかしくなりそう俺に対し、ザキールはお構いなしに話を続けた。



=======あとがき=======

読んでいただきありがとうございました。

少しでも面白いと思って頂けたら【お気に入り】ボタンから登録して頂けると嬉しいです。

甘口・辛口問わずコメントも作品を続けていくモチベーションになりますので気軽に書いてもらえると嬉しいです

==================
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

旅の道連れ、さようなら【短編】

キョウキョウ
ファンタジー
突然、パーティーからの除名処分を言い渡された。しかし俺には、その言葉がよく理解できなかった。 いつの間に、俺はパーティーの一員に加えられていたのか。

『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~

川嶋マサヒロ
ファンタジー
 ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。  かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。  それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。  現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。  引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。  あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。  そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。 イラストは ジュエルセイバーFREE 様です。 URL:http://www.jewel-s.jp/

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

霊感頼みの貴族家末男、追放先で出会った大悪霊と領地運営で成り上がる

とんでもニャー太
ファンタジー
エイワス王国の四大貴族、ヴァンガード家の末子アリストンには特殊な能力があった。霊が見える力だ。しかし、この能力のせいで家族や周囲から疎まれ、孤独な日々を送っていた。 そんな中、アリストンの成人の儀が近づく。この儀式で彼の真価が問われ、家での立場が決まるのだ。必死に準備するアリストンだったが、結果は散々なものだった。「能力不足」の烙印を押され、辺境の領地ヴェイルミストへの追放が言い渡される。 絶望の淵に立たされたアリストンだが、祖母の励ましを胸に、新天地での再出発を決意する。しかし、ヴェイルミストで彼を待っていたのは、荒廃した領地と敵意に満ちた住民たちだった。 そんな中、アリストンは思いがけない協力者を得る。かつての王国の宰相の霊、ヴァルデマールだ。彼の助言を得ながら、アリストンは霊感能力を活かした独自の統治方法を模索し始める。果たして彼は、自身の能力を証明し、領地を再興できるのか――。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

処理中です...