見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし、リベンジ果たして成りあがる

腰尾マモル

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【第136話】魔獣寄せの分析

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「僕の楽しかった思い出話はここまでにして、そろそろ一年前の話をしなきゃいけないですね」

 グラッジが遠い目をしながら呟いた。

 グラドがローラン家からグラッジを連れだして、旅をしながら育てていたのが確かグラッジが七歳から十四歳までの間だ、つまり現在十五歳のグラッジには一人で暮らしていた一年間が存在することになり、一年前に祖父と別れたということにもなる。

 グラッジは大陸地図を指差しながら一年前の事を教えてくれた。

「ずっと二人で旅をしてきた僕達は日を追うごとに違和感を覚えました、それは魔獣の襲撃が強く、多くなっている点です。二人の魔獣寄せが強くなっている可能性も考えられますが、それにしても魔獣を呼び過ぎていると考えたお爺ちゃんは、イグノーラの少し北にある魔獣の巣窟『死の山』に単身で異変調査へ向かったんです」

 この事実に俺は血の気が引いた。死の山は死の海よりもずっと危険だと言われている場所だ。今まで死の山に入って帰ってきた者は一人も確認されていない事実からも、グラドが生きている可能性は限りなく0に近いだろう。

 それはグラッジも分かっているようで、淀んだ表情で話を続けた。

「死の山は死の海よりずっと危険な場所です……だから、恐らくお爺ちゃんはもう生きていないと思います。当時の僕も死の山の危険さは分かっていましたから、全力で止めたんですけど、翌朝お爺ちゃんは僕が寝ている間に手紙だけを残して去ってしまったんです」

「なるほどな、ん? ちょっと待ってくれ、いくつか気になることがある」

 俺はグラッジの話に感じた違和感を言葉にした。

「もし、本当にグラドが亡くなったのならスキル『魔獣寄せ』を持つ人間が一人になって、イグノーラが襲われる頻度は下がるはずじゃないか? イグノーラの王グラハムは年々魔獣の襲撃がきつくなっていると言っていたぞ?」

「言われてみれば確かに……。僕が七歳の頃に魔獣寄せスキルを発現したタイミングで魔獣に襲われる頻度が上がったと当時のお爺ちゃんは言っていました。魔獣寄せの強さが単純な足し算的なものなのかどうかは断言出来ませんが、もしかしてお爺ちゃんは生きているのでしょうか?」

「とにかく魔獣寄せの細かい仕組みが分からないと判断できないところだな。ただ、さっきとは逆のことを言ってしまうが、グラドが生きているなら一度グラッジところへ異変調査の報告をしに帰ってきそうな気もするがな」

 この時俺は余計な事を言ってしまったと後悔した。生きている可能性の話だけで留めて置けばグラッジも希望を持てるだろうに、もう一つの可能性にも言及してしまった。

 配慮に欠けた言葉を言ってしまい、すぐに「デリカシーの無い事を言ってしまった、すまない」と謝ったが、グラッジは首を横に振って否定してくれた。

「いえいえ、真剣に考えてくれているからこそ出た言葉だって分かっていますから、どうか気を使わないでください。それにお爺ちゃんが亡くなっている可能性が高いと思える要素が他にもあるので」

「他にも?」

「はい、僕は死の山に向かったお爺ちゃんが心配になり、死の山の入口でお爺ちゃんが帰ってくるのを待っていたんです。だけど、たった一つの入口をお爺ちゃんが通る事はありませんでした。せめてお爺ちゃんの亡骸だけでも持って帰って墓に埋めてあげたいと思いましたが、僕の力では死の山には入れません、これ程自分の力不足を呪ったことはありませんでした……」

 十四、十五の子供が背負うにはあまりにも重い過去に胸が苦しくなった。グラドが生きているにせよ亡くなっているにせよ、真実を知らなければグラッジは前に進めないような気がした、何とかしてやりたいところだ。

 しかし、どうすればいいのか全く手が思いつかずに悩んでいた俺の横で話を聞いていたシルバーが全知のモノクルを取り出し、提案してくれた。

「グラドの事はどう調べればいいか分からねぇが、とりあえず全知のモノクルでグラッジを調べてみることにしねぇか? ずっと街から離れていたグラッジは長い間スキル鑑定をしていないだろ?」

「全知のモノクルって何ですか?」

 初めて聞く名前にグラッジが首を傾げた。俺達はグラッジに全知のモノクルがどんなアーティファクトか説明した。すると、グラッジはこれまで見せた事がないキラキラした目で話し始めた。

「うわ~、これがアーティファクトってやつなんですね、実物を見るのは初めてですよ! 是非僕の体に光を当てて調べてみてください、シルバーさん!」

「それじゃあ遠慮なく当てるぞ、レンズに出てきた文字は古代文字に詳しいサーシャに読んでもらうからな……えい!」

 全知のモノクルから細い光が飛び出し、グラドの体を貫通した。レンズに次々と文字が浮かび上がり、解析が完了したようだ。全知のモノクルをシルバーから預かったサーシャは早速読み上げを開始する。

「えーと、体重とかの情報はカットして読んでいくね。後天スキル『虹の芸術レインボーアーツ』 七つの属性(火・水・風・地・光・闇・無)を宿した武具を生成できる能力 硬度・質量・火力の上昇によって魔量の消費が変動する」

 後天スキルは大体グラッジから聞いた情報と同じようだ。属性が七つあって、火・水・風・地・光・闇は魔術でも存在するから理解できるのだが『無属性の武具』というのがいまいちピンとこない、また機会があったら実戦で教えてもらう事にしよう。

 そして、サーシャは続いて先天スキルについて読み上げた。

「先天スキル『魔獣寄せ』 超広範囲型のヘイト(敵視)上昇スキル スキル保持者の意思とは関係なく超広範囲の魔獣を軽度の興奮状態に変える。あらゆる魔獣に対し有効で帰巣本能に近い感覚でスキル保持者の近辺に寄って来させる能力である。範囲と効果は加齢や体の状態によって変動する。なお特定の――――えっ! 何だろうこの文字……古代文字と思うけど、読み方が分からない……」

 サーシャが読み上げた先天スキルは前半の説明は周知のものだった。しかし、サーシャでも読み上げられない古代文字が後半にびっしり書かれているとは思わなかった。俺は後半の解読不能文字についてグラッジへ尋ねた。

「グラッジが小さい頃にしたスキル鑑定にも、こんな記述があったのか?」

「……いえ、サーシャさんが読み上げてくれたところまではありましたが、解読できない部分に関しては文章すら存在していませんでした」

「ということは変化・成長が起きているのかもしれないな。だが、範囲と効果の上昇に関しては既に記述があるし、別の要素が加わったと考えるのが妥当かもな」

「悪い要素じゃなければいいんですけど……カリギュラにいけば、もしかしたら解読不能な部分も読める人がいるかもしれませんね。カリギュラに行くのは恐いですけど、ほんの少しだけ楽しみになってきました」

 俺達には博識なサーシャがいるから古代文字に関してはかなり読める方だとは思う。そんなサーシャでもまだまだ読めない古代文字は多いし、全知のモノクルが映し出す古代文字は特に難しいものが多い。

 だから、サーシャの知識量をアップさせる意味でもカリギュラに行く事は大きな利点になるかもしれない。治安さえよければウキウキ気分で行けるのだが、その点だけは残念だ。

 ひとまず全知のモノクルによる鑑定は終了したかと思ったが、サーシャが文末に何かの数字が書かれているのを発見した。

「あれ? この末尾に書かれている文字と数字は読めそうだよ。えーと、多分魔力と魔量を表す数値だね、魔力5200 魔量25000って書いてあるね、基準がどのくらいか分からないから何とも言えないね」

 どうやらシルバーでは気づけなかった表記をサーシャは読めたようだ。この事実を知ってテンションが上がったシルバーとグラッジはすぐに全員の魔力と魔量を調べようと提案してきた。


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