見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし、リベンジ果たして成りあがる

腰尾マモル

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【第17話】王へのアピール

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「ま、待ってくださいガラルドさん! どこに行くんですか?」

「シンって奴と話してみたい、こんな変わった国を僅か十五年程で作り上げたという男ならきっと面白い話が聞けるはずだ!」

 そして俺達は街路を走り続けてシンに追いついた。息も整わないまま俺はシンに声をかけた。

「ハァハァ、待ってくれ! シン国王。俺はヘカトンケイルでハンターをしていたガラルドという者だ。この変わった国で俺は一旗あげたいと思っている。この国はどんな風に発展して、どんな人間が成り上っていったのか聞かせてくれないか?」

 仮にも一国の王に対して他国のハンター風情が軽々しく声をかけてしまったわけだが、シンは嫌な顔一つせずに質問に答えてくれた。

「ガラルド君といったね、元気があっていいね。僕はエネルギーに満ち溢れた人間が大好きだから質問に答えてあげよう。この国で成り上る方法は至ってシンプルさ。君たちが積み上げてきたスターランクの様に、良い事をしたらプラス、悪い事をしたらマイナスになる『バードランク』というシステムがあるだけさ。シンバードだから『バードランク』分かりやすいだろ?」

「バードランク……ハンターの俺の場合だと魔獣を倒すことがプラスになって、失敗したり損害を出したりしたらマイナスになるってことか?」

「悪い事っていうのは所謂ルール違反や犯罪に該当することぐらいだな、ハンターなんていくらでも失敗するもんだし、失敗で減点なんてことはしないさ。失敗を許容できず、チャレンジのやり辛い組織なんて絶対に発展性はないからね」

 私闘を認めているような国王だから、もっと厳しい人間かと思ったが、意外にもミスには寛容なようだ。失敗してもマイナス査定にならない国なんて少なくとも俺は聞いたことがない。

 シンは更にバードランクの説明を続けた。

「プラスになることについてだが、これはハンターが本業だとしても魔獣討伐だけがプラスになるわけじゃないぞ。兵士の様に警備の仕事をしてプラスにしてもいいし、極端な話、農業で活躍したってプラスにはなる。要はどれだけ世の為・人の為に役立てるのか……って事だね」

「なるほど、上に行くにはとにかく実績を積んでいくしかないってことか」

「実績を積むのが基本ではあるが、一つ例外はあるぞ。それは披露会ひろうかいでアピールすることだな」

「披露会? 技自慢みたいなものか?」

「大体合っているよ、ハンターならスキル披露だったり剣技を披露したり、商人なら目の前で目利きをしたり、アピールなら何でもありの場だ。これは俺の部下である四聖しせいの四人と俺が日替わりで毎日審査をやっているから、披露したければいつでも王宮殿に来るといい」

 披露会……これは正直かなりのチャンスだと思う。俺のスキルも攻守に渡って役に立つ自信があるし、リリスのスキルなんて幾らでも汎用性があるとアピールできる。

 俺はリリスとアイコンタクトをとり、シンへ披露会に参加する旨を伝えた。

「オッケー、二人とも参加するんだな。今日の担当は丁度、王である俺だから、このまま王宮殿まで乗せていってあげよう」

「乗せていく? 私たちは何か乗り物に乗せて頂けるのですか?」

 リリスの問いかけにシンは首を横に振った。シンはそのまま路地から広場の方へ歩いていき、両手を天に掲げて、魔力を練り始めた。

 すると空間に突如切れ目が入り、中から羽の生えた白いクジラのような生き物が出現した。クジラのようなソレは家のように大きく、威圧的な体格とは裏腹に瞳はとても優しく見えた。

 シンはクジラの上に乗ると、俺達にも乗るように手招いた後、クジラに手を当て巨体を30メード程ふわりと浮かせた。

「乗り物ではなく、俺のスキル兼ペットの『白鯨モーデック』だ。食費がかかるという点以外は最高にイカした相棒だ」

 シンの誉め言葉を理解しているかのように『白鯨モーデック』は嬉しそうに低音で長い声をあげた。

「ハハハ、お前は早く宮殿に帰って飯が食いたいんだな? じゃあガラルド君達の披露会もあることだし、戻るとするか!」

 そしてモーデックは更に体を天に浮かせて、そのまま宮殿へと向かった。


 シンのペット兼スキルの『白鯨モーデック』の背に乗った俺達はとんでもない高さまで浮き、馬の様なスピードで空を駆けて行った。

 下にある街を覗き込むと、高さのせいで人々がかなり小さく見える。そして上空にあるモーデックに気づいた人々は皆、シンに向かって手を振っている。

 この様子からもシンが街の人に慕われているのがよく分かる。モーデックはそのまま真っすぐ王宮殿四階のやたらと広いバルコニーまで移動した。


「よし、到着だ。ガラルド君とリリス君はここで降りて待っていてくれ。俺はモーデックを餌場まで連れて行き、役人を呼んで直ぐに戻ってくる、多分5分もかからないと思う」

 俺達は頷き、モーデックから飛び降りてバルコニーでシンが来るのを待った。宣言通り5分後に現れたシンは、如何にも貴族的な服を着た役人を二人引き連れ、改めて披露会ひろうかいのことを説明してくれた。

「それじゃあ改めて披露会のルールを説明する。と言ってもルールなんてほぼないけどね。戦闘でも商売でも芸術でも何でもいいから『自分は何ができるか』をアピールしてくれ。言葉でも実演でも何でもいいぞ。説明は以上だ」

たったそれだけ? と思わされるぐらい随分とざっくりとした説明だったが『闘争と誠の街』と言われるぐらいのところだ、シンプルに能力・実力重視なのだろう。

 リリスと相談した結果、先にリリスのスキルを見せて掴みを得ようということになり、まずはリリスがシンの前に出て発表を始めた。

「それじゃあ、まずは私から、私の名前はリリスです。得意なことは回復・補助系の魔術で、スキルはテレポートが使えます」

「テレポート? 聞いたことがないスキルだが、どういった能力なんだい?」

 興味津々で前のめりになったシンがリリスに尋ねた。

「簡単に言いますと、自分が見つめた地点に瞬時に移動する事ができるスキルです。今からお見せしますね、あちらの工廠こうしょうの屋根を見ていてください、一瞬であそこへ行きますから」

 そしてリリスは宣言通り、工廠こうしょうの屋根へ瞬間移動し、すぐさまシンの目の前へ帰ってきた。それを見たシンと役人たちは目が飛び出る勢いで驚いている。

 シンはアイ・テレポートが相当お気に入りのようで、スキルのメリット・デメリットなど、沢山の質問をリリスに投げかけた。結果かなりの好感触だったようで、リリスのアピールは大成功で終わった。

 この勢いに乗るべく俺もすぐさまアピールを開始した。

「では次は俺が……。俺は三年以上ハンターを続けてきて、魔獣の注意を引きつけるヘイト系の魔術、そして盾役として攻撃を受ける耐久力には自信があります。そんな俺のスキルは『魔砂マジックサンド』と言って魔力を帯びた砂のようなものを出現させ、動かすことができます、特に回転運動に秀でていて、それを攻守において様々な使い方をすることができます」

 そして俺はハイオーク戦やヘカトンケイル防衛戦で見せた、あらゆる技を演武のように披露した。自分的には上手くアピールできたと思えたが、何故かシンはずっとこちらを見つめて微動だにしていなかった。

 不安になった俺はシンに評価のほどを尋ねてみた。

「どうかなシンさん? あまり気にいってもらえなかったかな?」

「いや、ガラルド君が強いというのはよく分かったし、スキルも力強く汎用性のあるものだということは分かったよ。でも何故か動きが素人的というか発展途上というか、スキルが覚えたてみたいな動きに感じたんだ」

 シンは一国の王を名乗るだけあって相当鋭いようだ。ヘカトンケイルのハンター達には回転砂が覚えて間もないスキルだということはバレなかったが、シンには直ぐにバレてしまった。

ハンター歴がそこそこあるにも関わらず、動きがぎこちない理由は問い詰められればバレるだろうし、ましてやジャッジメント持ちのシンの前では誤魔化しも通用しないだろう。俺は出身地からこれまでの経緯まで包み隠さずシンに打ち明けた。

 それを見ていたリリスも話に整合性を付ける為か自身が女神であることを打ち明け、追放者を集めていることも包み隠さずシンに話した。


 すると、ずっと話を聞いていたシンは、嬉しそうな顔で俺たちを歓迎してくれた。

「君たちは実に面白いな! 俺にはディアトイル出身の友達も女神の友達もいない、だから是非友達になってくれ。それにスキルだって独自性や発展性に優れたものが揃っていて、これからの活躍が楽しみだよ」

 いくら自由な国とはいえ、さすがにディアトイル出身を打ち明ければ少しは嫌な顔をされると覚悟をしていたけれど、シンは100パーセント純粋に嬉しそうな顔をしてくれた。

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