見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし、リベンジ果たして成りあがる

腰尾マモル

文字の大きさ
上 下
11 / 459

【第11話】混乱のヘカトンケイル

しおりを挟む
 ガルムを討伐してから二日後の朝、事件は突然訪れた。

――――カラン カラン カラン――――

 眠っていた体がビックリして跳ねるほどに大きな鐘の音が聞こえてきた。何事かと窓の外を見てみると町民が血相を変えて広場の方へ走っている。

 状況が飲み込めない俺とリリスは急いで宿屋のカウンターへ向かい、主人に騒動の詳細を尋ねた。

「ご主人教えてくれ、この騒がしさは一体何なんだ?」

「おお、ガラルドさん丁度呼びに行こうと思っていたんです、この鐘の鳴らし方は魔獣の襲撃があったことを知らせるものです。ガラルドさん達ハンターは直ぐに町の中央にある噴水広場へ向かって、町の兵士長から指示を仰いでください。ワシも客を全員避難させたら直ぐに向かいますので。どうか気を付けてください」

「魔獣が……分かった、ご主人も無事を祈ってるぞ」

 そして俺達は何があってもいいように荷物を全て持ち出し、噴水広場へと向かった。所々に魔獣の血や死体が散乱しており事態の深刻さがうかがえる。

噴水広場へ到着すると、そこには町中の住民が集まっており、それを囲むように兵士とハンターが守っていた。

 俺達が駆けつけた直後、噴水の前に身なりの良い初老の男性が現れた。男性は全員に聞こえるような大きな声で喋り出した。

「皆のもの、どうか落ち着いてくれ。町の長である私の指示通りに動いてくれれば、きっと魔獣の群れを追い払う事ができる。女子供は噴水の近くに寄って身を固めてくれ、強い兵士とハンターを配置して必ず守ってみせよう。そして男は分散して兵士・ハンターの後ろにつき、魔獣討伐を援護せよ。しかし君たちは戦闘のプロではない、決して無理はしないように」

 町長の指示に従い、町民はそれぞれの位置に移動した。それなりに信頼のある町長なのか特にパニックもおきず、スムーズに移動をすませることができた。

 そして、町長は全員を鼓舞させる為なのか、勝利を確信したような大々的な宣言をした。

「私たちは必ずこの困難を突破することができる。何故ならヘカトンケイルには三つの強みがあるからだ。一つは迅速な移動・対応ができる我が誇りの町民たちがいること。二つ目は腕の立つ兵士とハンターが数多くいる事、そして三つ目は……」

 町長は息を溜めたあと、噴水広場にあるヘカトンケイル像の足元を指してこう言った。

「この町最強の戦士レック殿とその仲間たちがいるからだ!」

「わあああぁぁぁ!」

「頑張れヒーロー!」

「お前達ならできるぞぉぉ」

耳を引き裂かんばかりの歓声が沸き上がった。それに応える様にレックは剣を高々と掲げて町民を鼓舞している。

 盛り上がる町民を見て頬を膨らましたリリスが不満をぶちまける。

「何であんな人が人気者扱いされているんですか!」

「実際スターランクは高いし、近隣国の王族の次男っていう生まれって噂もあるらしいからな。強さと身分と実績面で人気なんだろうな」

「ふんっ! 今なら絶対ガラルドさんの方が強いのに……」

「どっちが強いかなんてどうでもいいさ。今は町民がパニックを起こさず希望が持てる様に盛り上げた町長とレックの行いは正しいとは思うよ。レックが褒められているのは個人的に癪だがな。それより俺達も魔獣を撃退しに行くぞ」

 そして俺達は町に散らばる魔獣を討伐する為に走り回った。リリスは怪我人へ簡易的な治癒魔術を施しつつ、アイ・テレポートを使って高いところへ登り、魔獣の位置を教えてくれた。

 人々からは「瞬間移動で高い場所に現れるあの銀髪の女性は何者だ?」 とざわめかれていた。人々から噂されたリリスは自慢げに「フフンッ」と鼻を高くしている。

普段からあまり人と関わりたくないタイプの俺からしたら楽しそうに自分をアピールしているリリスが少し羨ましく思えた、全く女神っぽくはないけれど……。

 リリスから教えてもらった魔獣の位置を周りのハンター達と共有しつつ、俺自身も着々と魔獣を討伐していった。

 本当は実績や討伐報酬の多そうな魔獣は自分の手で倒した方が得ではあるのだが、今は早期討伐を最優先にすべきと判断し、大声で魔獣の場所情報を伝えまくった。今日ほど声を出す日は今後こないのではなかろうか。

 時々、怪我をして戦線離脱しているハンター達を見かけるものの、体感的には確実に魔獣の数は減っているのが分かる。戦況はきわめて順調のようだ。

 魔砂マジックサンドの操作訓練を兼ねつつ、魔獣を討伐し続けた俺はハイオークと戦った時よりもスキルの練度が上がっているのを感じていた。今まで間違ったスキルの解釈をしていた時間が本当に悔やまれる。

 そんな事を考えていると、見張り台の頂上へアイ・テレポートをしていたリリスが、下にいる俺に向かって大声で呼びかけてきた。

「た、大変ですガラルドさん、あっちでレックさんが!」

 リリスが指差す方を見てみると、その方向には町の象徴である超巨大な『ヘカトンケイル像』があり、像の上で魔獣のオーガがレックを何度も殴りつけていた。

 『ヘカトンケイル像』は巨人を模した像で、宿屋やギルドよりもずっと縦横に大きいから登るのも一苦労に違いない。

それなのにオーガが像の上へ登っていることを考慮すると、もしかしたら魔獣襲撃のボスはオーガであり、見渡しの良い位置から各魔獣へ攻撃を促す指示を出しているのかもしれない。

 威圧で雑魚魔獣を大移動させたガルムとは違い、頭が切れるタイプの厄介さを持つオーガは魔獣の序列から言えばガルムやハイオークよりも上になる。

魔術は使わないものの、常人の二倍近い背丈と筋骨隆々とした肉体から繰り出される打撃で恐れられる人型の魔獣だ。それ故にレックが勝てないのも納得ができる。

 ハンターや兵士が何名か中心部を守っていたはずなのに、レックの援護をしていないということは、像に登ることができないのか、もしくは既にやられてしまっているのかもしれない。

 このままではレックが危険だ、離れた位置にいるハンター達を呼ぶ時間もない以上直ぐに助けに行かなければ。

『アイ・テレポートで俺を飛ばせ』と指示を出すべく、リリスがいる見張り台の頂上へ顔を向けると、リリスは既に頂上から飛び降りている最中だった。

「受け止めてくださいガラルドさぁぁぁん!」

「うわああぁぁぁぁ」

 何の相談もなくいきなり飛び降りるリリスに対して、慌てて魔砂マジックサンドで螺旋状のクッションを作って衝撃を和らげ、両腕でリリスの身体をキャッチした。

「いきなり過ぎだ、危ないだろうが!」

「アイ・テレポートは消耗が激しく、触れた人しか飛ばせませんから、階段を降りたり、アイ・テレポートでガラルドさんの近くに飛んでいる余裕はないんですよ。さぁ、お姫様抱っこから降りるのは名残惜しいですが、早く助けに行きましょう」

 お姫様抱っこはともかく、リリスの言う事にも一理あると納得させられた俺は右手で棍を持ち、左手でリリスの手を握った。

「アイ・テレポート!」

 リリスの叫びと共に消えた俺達は一瞬でオーガの真後ろへ移動した。尻もちをついたレックを今まさにオーガが踏みつけようとしている。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。 ※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。 ※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。 俺の名はグレイズ。 鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。 ジョブは商人だ。 そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。 だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。 そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。 理由は『巷で流行している』かららしい。 そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。 まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。 まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。 表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。 そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。 一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。 俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。 その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。 本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~

川嶋マサヒロ
ファンタジー
 ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。  かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。  それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。  現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。  引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。  あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。  そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。 イラストは ジュエルセイバーFREE 様です。 URL:http://www.jewel-s.jp/

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

処理中です...