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4章:闇の始動編
第16話 罪咎
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【罪咎】
アタシが彼等と接触しようと決めたのは理由がある
ある日、神から啓示を受けたんだ
神は言った、貴女は選ばなくてはならない、って
《複数の使徒の命か、貴女の命か・・・》
そんな馬鹿げた事を言って来たのは水の神、あの金魚だ
アタシは神があまり好きじゃない
一時期は恨んだり憎んだ事すらある・・・あ、これは内緒ね
神はいつも一方的で、アタシの私情なんて知ったこっちゃない
ううん、一方的でもないか・・・神は神で世界に恩恵を与え続けてる
ちょっと言い過ぎたね、反省反省
それにしても、使徒の命とアタシの命が等価な訳ないじゃん
アタシは死んでもやり直せる、でも彼等は違うんだ
久々に声かけてきたと思えば、神でもボケるのかな?
そんな考えは神の次の言葉で消し飛んだ
《近い未来、貴女は選ばなくてはなりません
複数の使徒の命か、貴女の魂・・・どちらかしか救う事はできません
魂を失う、それは輪廻から外れるという事です・・・その先に待つのは・・・無です》
無茶振りにもほどがあるでしょ?これが神さまって奴等なのよ
でもね、アタシは色々な事に合点がいったんだ
新たな神の子が生まれた事、災厄神が復活した事
そして、言いようの無いモヤモヤが晴れた気がしたんだ
アタシは嬉しかったんだ
やっと終われる、彼等を救って終われるんだ
こんな最高の終わり方ってある?アタシの頑張りの集大成だよ
悪くない終わり方、そう思えたんだ
災厄神との決戦に参戦出来ないのは少し悔しいけど
今回の候補者達は面白いのが揃ってる
勇者候補の彼・・・エイン・トール・ヴァンレン
6000年前の彼の面影が少しある、懐かしい気分にさせてくれる
真面目で堅物なところも似てるかな
そのせいか、アタシは期待しちゃうんだ、彼に
ヒッタイトで彼の素質をじっくり見させてもらった
六神の繋がりはあるけど、オルフェーと比べて弱かった
特に火と水が弱いかな、あれじゃ勇者にはなれないと思う
でも期待しちゃうんだ、彼に
神の勇者、巫女、使徒、みんな六神のどれかの繋がりを持ってる
勇者だけは六神全部の繋がりを持つ者にしかなれないけどね
でも、不思議なんだ、彼は
彼にはあの災厄神との繋がり・・・加護みたいなものが微弱だけどある
あんなの見たことないよ、だってあの災厄神だよ?
敵であるアタシ達に加護なんて与える訳ないじゃない
でも、彼は持ってる、その繋がりを、加護を
それは希望になるかもしれない、アタシはそう思えたんだ
次に気になる子と言えば、地の巫女・・・マルロ・ノル・ドルラード
神の子、うん、そう、神の子
彼女はアタシのように輪廻転生の輪に囚われてる
多分これから何千年も彼女は苦しむと思う
そう思うと心が痛いけど、アタシは彼女に感謝してる
産まれて来てくれて・・・ありがとう
でも、あの子は自分を押さえ込んでるみたい
そこだけは気になったかな、無理しないでいいのにな~
次に気になった子は、ジーン・ヴァルター
あ~、悪魔王アスタロトって言った方がいいのかな?
なんでアスタロトがこっちに着いたのか分からないけど
彼女は自我を保っていた、という事は共存してるって事
これは今までに無かった事だからアタシは面白いと思った
もし悪魔王が味方してくれたらこれほど力強い事はないよ
だって悪魔王は四神をも超える力を有してるんだから
これは勝てるかもしれない、そう思えたんだ
そして、未来のアタシ、シャルル・フォレスト
あの子と出会えて良かった
ずっと気になってた胸のつっかえが取れた気がした
彼女なら大丈夫、アタシはそう思えた
今回の候補者達は本当に面白い
他にも面白い子はいるけど、今はいいよね
アタシが生を受けてから6500年は経ってる
最初は意味分からなかったけど、神の啓示を理解して
世界を理解して、アタシは頑張って来た
誇れる事ばかりじゃないけど、アタシは自分に"よくやった"って言いたい
それじゃ、お仕事と行きますか!
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・
マナの魔法により水の拘束を受けていたナビィは
内に秘める魔力を溜め込み、一気に爆発させる
ボンッ!
水が吹き飛ばされ、一瞬だが拘束が解ける
その一瞬を逃さずナビィは飛翔し、拘束を逃れた
「貴様、何者だ」
ナビィとは思えない低く重い声が響き
その声はヒッタイトとメンフィス両軍を相手しているマナに届く
「世界の敵である君に名乗る名は無いよ」
すると、マナの四方に水の刃が出現する
それは一直線にナビィに向かってゆき
彼女は巨大な光翼を羽ばたかせ大空へと逃げてゆく
だが、水の刃は彼女を追尾して行った
ボンッ、ボンッ、と爆発音のような腹に響く音が鳴る
空中でナビィの拳や蹴りと水の刃がぶつかり合う音だ
そんな常軌を逸した光景を両軍の者達は眺めていた
「めんどくさいな・・・」
マナが首からネックレスを外し、それを強く握り締める
それと同時に水の刃は変化し、6本の水の剣へと姿を変えた
「お前、もう落ちろよ」
水の剣はぷるぷると震え出し、刀身は激しい水流のようだった
そして、6本の剣がナビィに向かって一斉に動き出す
ナビィが高速で回避行動に移る・・・が、それよりも早く剣は彼女に届く
「がはっ」
黄金の鎧の口元から大量の血が吐き出される
右腕に2本、脇腹に1本、右翼に1本、左翼に2本の剣が深々と刺さっていた
刺さった剣はズズっと動いてゆき、そのまま彼女を切断してゆく
『うああああああああああああああああああっ!!』
彼女の空っぽの右腕が切断され、脇腹は大きく開き
両翼はもがれる事となった
そして、ナビィは落下してゆく・・・・
水の剣の形状が変化し、切断された黄金の右腕を包み込む
それはマナの元へと戻ってゆき、彼女はその腕を掴み取る
「・・・なるほどね、あの半神になった魔獣の力か」
マナは腕を投げ捨て、水で包み込み、圧縮する
黄金の腕は一瞬で片手に収まる程度の小さな残骸となった
残骸を一瞥もせずに彼女は墜落して呻き声を上げているナビィの元へと向かう
「ねぇ、君、その力はどこで拾ったの?」
「うっ・・・だ、誰が・・・言うか」
「ふぅん」
マナは頭の後ろで腕を組み、ナビィを見下ろしていた
「それはね、元はヒッポグリフだったスパルナって魔獣でさ
アタシが4000年くらい前に殺した奴なのよ
なんで君がそれを持ってるの?どこで手に入れたの?」
4000年前に?何を言っている、この女は
だが、一族の伝承では4000年ほど前にいた神の血という話だ
何故それを知っている?本当にこの女は何者なのだ
「言いたくないならいいけどさ、君何したか分かってるのかな?」
「私は・・・侵略者を・・敵を倒しただけだ」
「あぁ、ヒッタイトの事?そんな事聞いてるんじゃないよ、バカなの?」
「・・・・」
「アタシが言ってんのは、何故神の使徒候補者を殺したって事だよ」
「神の使徒・・・候補?」
「そう、君が放ったあれで1人死んだんだよ
君のせいで人類は10万の兵よりも強い味方を失った事になる
来たる聖戦において、それは大きな痛手となる・・・わかる?」
「お前は・・・まさか・・・ごふっ」
ナビィが大量の血を吐き出し、鎧のあちこちから血が流れる
「そのままじゃスパルナに食われるよ」
マナは魔法を発動し、螺旋状の水を作り出す
「我慢しろ」
そう言うと、彼女はその水でナビィの黄金の鎧を攻撃し始めた
ギィィィィィィィッ!
1撃1撃が入る度に黄金の鎧は砕け、飛び散ってゆく
そして、ナビィが身に纏っていた黄金の鎧は全て破壊された
「くっ・・・ごほごほっ」
ナビィは血を吐き出し、意識が薄れてゆくのを感じていた
だが、マナがそれを許してはくれない
「勝手に死ぬな」
マナはナビィの腹部を押さえ、淡い桃色の光を放つ
その瞬間ナビィに激痛が走るが、それも次第に弱くなっていった
そして、不思議と意識はハッキリとしてくる
「血が・・・何故・・何故助ける」
出血は止まっており、傷口も塞がっていた
マナは立ち上がり、ナビィを見下ろして答える
「神の使徒候補を殺した責任は取れ」
「お前は・・・いや、貴女は神の使いなのか」
「アタシは神の子、世界を見守る者」
「そうか・・・そうか・・・・私は神に牙を剥いてしまったのだな」
「やっぱバカだね、アタシは神じゃないって言ってんじゃん」
「ふふ、そうだったな・・・すまない」
ナビィは不思議な気持ちに包まれていた
目の前のこの少女は私など手の届かない存在、そう思えたのだ
まるで神を崇めるように、彼女を見上げていた
「君はよく見ると使徒としての資質が少しだけある
だから君は殺さない、助ける、君が殺した彼の代わりになれ」
「でも私はもう・・・」
ナビィは自身の身体を見る
右腕は無く、両足は逆に曲がりくねり、二度と使い物にはならないだろう
「歩けなくても戦え、来るべき時が来たら、約束して」
「・・・・分かった・・・しかし、この地の水不足が解決せねば滅亡は必至
再びこの不毛な争いが始まるだろう
その時、我らメンフィスは再び力にすがってしまうかもしれん」
「・・・それは大丈夫、水の巫女であるアタシに任せて」
「水の巫女・・・そうか、貴女様はやはりそうなのか」
「様とかやめて、気持ち悪い」
「感謝する」
ふんっ、とマナは後ろを向いて歩き出す
その後姿を見ながらナビィは微笑み、気を失った
・・・・・
・・・
・
戦争は止まっていた
水の巫女と嵐神の戦いは人智を超えており
誰もがその戦いの行く末を見守っていた
両軍の中央、最前線の隅にマナは立つ
彼女は魔法でゆっくりと浮かび上がり
静まり返っていた戦場に大声で警告を放つ
『水が欲しいならくれてやる!もう争いはやめろ!!』
マナは気づいていた、今が神の言う選択の時だと
ここで選ばなくてはならない、自分の魂か、彼等の命か
答えは最初から決まっている
マナはハーフブリードの元へと飛んで行き
シャルルを1度抱き締める
「シャルル、後は頼んだよ」
「え?」
シャルルを解放し、マナは歯を見せ笑った
その笑顔は今まで見た彼女の笑顔の中で1番良く
シャルルも自然と笑顔になり、親指を立てて言う
「よくわかんないけど任された!」
「「にしし!」」
二人が笑い、マナは真顔に戻ってジーンへと近寄る
「アスタロト」
「なに?」
「裏切らないでね」
「そのつもりだけど」
「ならいい、頼むね」
ジーンは何の事だろう?といった表情をしており
その顔が何かおかしくてマナは笑う
彼女は悪魔王と完全共存している、人間らしい人間だ
彼女なら大丈夫、そう思えた
「あ、そうそう、この戦争の原因は北の国の商人だから
懲らしめたいなら好きにやって、多分君たちにはいい経験になる」
マナが去ろうとした時、彼女の足が止まる
「・・・・・・え?」
彼女がじーっと見つめていたのはシルトだった
「え、何?僕にも何か用?」
「・・・・・・ちょっといい?」
「どぞ」
マナがシルトへと歩み寄り、彼の顔を両手でガシッと掴む
「うおっ」
「君、水あたりもらってるね」
「よくわかんね、流石水の巫女」
「このままじゃ死ぬから治したげるよ」
彼女が少し魔力を込めるとシルトは吐き気を催す
ビシャビシャと少量の水を吐き出し、息を整えた
「これでもう大丈夫だよ」
「おぉ、助かった」
「それはいいとして、ちょっといい?」
「ん?」
再びシルトの顔を両手でガシッと掴み
目の下を親指で伸ばされ、じっと目を見つめられる
こんな至近距離で女性に見つめられた事の無いシルトはドキドキするが
彼女の両手が視線を外す事を許してくれなかった
「・・・・・君、生きてたんだね」
「は?」
「ねぇ、なんで君は生きてるの?」
「ちょ、生きてちゃいけないのかよ!」
「ううん、そうじゃなくて、どうやって生きてるの?」
「・・・・冒険者とかして?」
「そうじゃなくて、君もバカなのかぁ・・・」
「バカですみませんね」
「君、魔力無いよね?」
「らしいね」
「どうして生きてるの?生命の源たる魔力が無いんだよ?
魔力切れの魔法使いがどうなるか知ってるよね?普通死ぬんだよ?」
「そう言われてもな・・・」
「君、面白いね」
マナがニカっと笑顔になる
その笑顔が可愛くて、シルトの顔は赤くなる
「い、いい加減、離してくれないかな、それと、顔近い」
「あ、ごめんごめん」
マナが離れた事によりシルトが大きなため息をしていると
サラが彼の背中を撫でていた
「えっと・・・黒い人」
「シルトだよ」
「シルトくん、その鎧と盾には気をつけな」
「・・・どういう意味だ?」
「ただの勘、だよ」
そう言ってマナは空へと駆けて行った
彼女はそのままエイン達の元へと飛んで行く
その間、戦争は停止しており、にらみ合いが続いていた
「やぁ、勇者くん」
「巫女様、どうしたのですか」
「君に伝えたい事があってね・・・
この戦争の原因を作ったのは北の国の商人だよ」
「っ!?」
エインが目を丸くしていると、マナは彼の背にいるミラを覗き込む
「これは危ないね、ちょっと下ろして」
地面に寝かされたミラに治療を施し、マナは満足そうに微笑んだ
「これでもう大丈夫、それじゃ勇者くん、大事なことを伝えるよ」
「なんでしょうか」
「君は北東にある3つの高い山に向かって
そこに君の助けるになる聖剣があるから、貰ってきな」
「聖剣・・・ですか」
「うん、頑張れ」
「はい」
マナはぴょんっとジャンプして水の上に立ち、振り向く
「マルロちゃんに言っておいて、君は無理しすぎって
これから大変だろうけど、自由に生きていいんだよって」
それだけ言い残し、彼女は空へと駆けて行った
・・・・・
・・・
・
「それじゃ、最後のお仕事と行きますかっ!」
マナはにらみ合いの続く両軍の間に陣取り、大声を上げる
『死にたくない奴は今すぐ逃げろ!さもなくば絶対の死が待ってる!』
両軍に動揺が広がる
だが、指揮が上手く機能しておらず、両軍はあまり動いていなかった
「ま、仕方ないか・・・」
マナは首から下げている小さなネックレスを手に目を閉じる
彼女は祈るように、大切なものを抱えるようにネックレスを握り締め叫ぶ
『神器解放!キー・オブ・リィンカーネーション!』
勢いよくネックレスを上へと投げると
夕闇に染まっていた世界に眩い光が降り注ぎ
目にした者は目を細め、顔をしかめた
しばらくして光は収まり、2メートル以上ある黒く重い十字が中空に現れる
それは先程マナが投げた錨十字(アンク)が巨大化したものである
中空で停止していた"それ"は落下を始め
マナはキャッチするとくるりと一回転してアンクを大地へと突き刺す
『神気・・・解放っ!』
彼女が叫ぶと同時に膨大な魔力の波動が辺りに広がり
魔力感知など出来ない者ですらその力は認識出来た
肉眼でも確認出来るほどの魔力が彼女が溢れ出し
放電現象のようにバチバチと火花を散らす
その時、彼女の瞳に変化が起きる
黒目は十字に割れてゆき、その瞳は輝き始めた
「冗談でしょ・・・何よ、あの魔力・・・」
目の前の事実を否定したいような言葉を吐き出したのはジーンだった
今のマナの有する魔力は内に秘めるアスタロトを凌駕している
・・神の子め・・・忌々しい魔力だ
アスタロトの恐れる声がする
あの悪魔王が恐れている、その事実がジーンを震え上がらせた
《神の定めし理を冒す者、我の名はマナ・マクリール!
最も醜き肉体と最も気高き魂を捧げ、我、絶対たる破壊をもたらさん!》
彼女の声は神の声のように辺り一帯の者達の脳内に響く
アンクを引き抜き、重そうな巨大な錨十字を軽々と持ち上げると
肩に担ぐように構え、彼女の詠唱は続く
《我は望む、一面の青を、我は望む、万物の素たる水を
命の息吹を枯渇する大地へと与え、悠久の潤沢を・・・・》
彼女を中心に光の文字が無数に浮かび
ゆっくりと彼女の周りを周り始める
《理を歪め、この地を統べる龍を断たん
響け!我が願い、届け!我が想い、奏でるは命の唄!
幾万幾億の夜が明け、幾万幾億の朝が来る
限りなく悠久の刻の中でも揺るがぬ安寧を、唱え・・・唱え・・唱えっ!
過去と未来、生きとし生ける全ての者よ・・・聞けっ!我が魂を!!》
マナがアンクを構えると、十字の一番長い下部分が半分に割れ
ガチャガチャと激しい音を立てながら変形してゆく
それと同時に黒い表面には赤い紋様が浮かび
半分に割れた部分から光が伸び、それはまるで巨大な鍵のような形になった
《この罪を、この咎を、アタシは受け入れる!》
マナの瞳の輝きは増し、その全身も淡く輝き始める
様々な色の光が彼女に集まってゆき、彼女の神器に吸い込まれてゆく
鍵状の先端に3つの光の輪が出現し
辺りに浮いていた光の文字が集まり、回り始めた
《こじ開けろ!キー・オブ・リィカーネーションッ!》
神器を大地へと深く突き刺し、力強くひねる
ガチャンと低く重い音が響き、辺りの空気は一変した
誰もが感じたその変化に、その場にいた全ての者は本能から鳥肌が立つ
本能で解るのだ、ここは危険だ、と
《悠久の青(エテーナ・ヴェルダ)!!》
キィィィィィィンッ!!
誰もが耳を塞ぎたくなるような強烈な高音が鳴り響き
ずるっと何かがズレるような感覚が辺り一帯の者を襲う
大地は小さく揺れ始め、揺れは次第に大きくなってゆき
神器が突き刺さる大地から間欠泉のように膨大な量の水が吹き出した
水は留まる事を知らず、メンフィス、ヒッタイト両軍の一部を押し流す
高さ40メートルを優に超える大津波が砂漠の真ん中で発生したのだ
人間に抗う事など不可能だった
逃げ遅れた数千の人間を巻き込みながら大量の水は流れてゆく
扇状に広がってゆくそれは数十キロ先にある大地の裂け目にまで届き
裂け目を水で満たしていった・・・
水は沸き続けている
無限とも思える水が巨大な河を作り、何本も枝分かれしてゆき
幾つもの川を作り上げてゆき・・そして、いつしか海までたどり着く
この砂と岩しかない乾き切った大地に、無尽蔵の水源が生まれた瞬間だった
・・・・・
・・・
・
水の発生源である場所には大きな湖が出来上がり
その中央にはマナ・マクリールが満足気な顔で浮いていた
「しんど・・・これが禁呪かぁ・・・」
そこへリーガベントで飛んで来たシャルルが彼女の身体を抱き上げる
「マナ!マナ!何これ凄い!!」
「すごいっしょ・・・ふひひ」
今まで水を使っても一切濡れていなかった彼女の身体はびしょびしょに濡れていた
彼女を抱いたままシャルルは岸へと向かう
「シャルル・・・」
「なに?もうちょっとで岸に着くから待ってね」
「うん・・・・てきてくれて・・・・がと」
「ん?」
リーガベントの風の音で上手く聞き取る事が出来なかった
「・・・産まれて来てくれて・・ありがとう
アタシは・・・シャルルに出会えて良かったよ」
「何恥ずかしいこと言ってるの?喋ってると舌噛むよ!」
「はは・・・そだね」
ハーフブリードの皆がいる岸まで彼女を運び、ゆっくりと下ろす
だが、マナの瞳は閉じられており
先程まであった膨大な魔力は感じる事が出来ない
「マナ?大丈夫!?」
「・・・・・」
『マナ!?』
「・・・・・」
シャルルの呼びかけに一切反応は無く、彼女は眠っているようだった
「ジーン、マナは大丈夫なの??」
「・・・・魔力が完全に消えてる、もう・・・」
「は?何言ってんの?さっきまで喋ってたじゃん!」
「魂と呼べるものが砕けてるのよ・・・」
『ふっざけんなっ!!何とかしろっ!!』
シャルルが大粒の涙を流しながら自身の膝を叩く
彼女の涙はマナの顔を濡らすが、そんなマナの顔は安らかな顔だった
「やだよ・・・やだよぉ・・・・マナぁ」
シャルルが彼女の胸に顔をうずめ、泣きじゃくる
その涙にサラもラピもジーンすらも泣いていた
だが、一人泣いていないシルトがシャルルの横に座る
「なぁシャルル、この子はすっごい人数を救ったんだよ」
シャルルの頭を撫でながらシルトは続ける
「それを否定しないでやろうぜ」
「・・・ずずっ・・・・うん」
鼻をすすりながらシャルルは顔を上げた
その顔は鼻水や涙でぐちゃぐちゃだ
「さっきこの子が言ったろ、頼むってさ」
「・・・うん」
「なら任されようよ、僕らに出来る事でさ」
「うん・・・・・うん・・・私、もう大丈夫だよ、もう泣かないよ」
目をぐしぐしと擦り、シャルルは涙を我慢する
「何言ってんだよ、さっさと泣け、我慢すんな」
「うぅ・・・・うわぁぁぁ!マナぁ、マナぁ!」
夕闇の中、しばらく彼女の泣き声が響いていた
・・・・・
・・・
・
日も落ちた頃、両軍は停戦協定を結んだ
もう争う理由が無かった事と、両軍共に被害が甚大だったからだ
悲しく不毛な戦争は終わった
そして、突如夜の闇を照らすような青白い光が差す
誰もがその光を見上げ、まだ何か起こるのかと恐怖した
それと同時に、マナの遺体から青白い光が離れてゆく・・・
「何これ・・・」
「巫女の力だよ、巫女が死んだ時に力は神に返り、次の巫女が選ばれるの」
「へぇ・・・綺麗だね」
ラピが光に手を伸ばすようにしていると
その光はゆっくり上ってゆく
「あれは・・・水の神だ」
「え?お魚さん?」
上空から青白い光の柱を作り出していたのは水の神だった
水の神はゆっくりと空を漂っており、光はマナへと向けられた
その光の道を巫女の力たる光が上ってゆく
誰もがその光は神の元まで行くものと思っていた
だが、そうはならなかった
光は途中で停止し、方向を変える
「あれ?戻ってくるよ?」
「おかしいな、神の元に戻るはずなんだけど・・・」
巫女の力はゆっくりと降下を続ける
それはマナの元へと戻るのかと思われたが、僅かに軌道が違っていた
「え?」
光はシャルルの元へと降り、彼女の胸元で輝く
「え?どういう事?シャルルが水の巫女って事!?」
「え!?ホントに!?」
サラが驚き、その尻尾はピーンと伸びる
「た、多分そう・・・だと思うけど」
ジーンも断言は出来ず、ただその光景を見守っていた
そこに神の声が響く
《・・・巫女よ、私の新たな巫女よ》
「あわわわ、本当にシャルルが巫女なんだー!」
ラピが興奮のあまり転んでいる
当の本人であるシャルルはずっと黙ったまま空を見上げていた
《・・・・貴女を新たな巫女とします・・・》
『待って!!』
ずっと黙っていたシャルルが突然大声を上げる
しかも神に待ったを言い放った
「ちょ、何言い出してんの!?」
「うっさい、シルさんは黙ってて」
《・・・何でしょうか・・・》
『巫女になるのはいいけど、生の魔法は使えるの?』
《・・・・いえ、それは叶いません、貴女は水の巫女なのですから・・・》
『じゃあ嫌だ!!』
彼女は即答だった、辺りは静まり返り、しばし沈黙が訪れる
「ちょ!!おまっ!!」
「シャ、シャルルッ!?」
「いやいやいやいやいや、それはまずいんじゃ」
「ふふ、シャルルらしい」
ジーンだけ笑っているがハーフブリード達は慌てふためく
『私は生の魔法でみんなを助けたい!そのためにずっと頑張ってきた!
だからそれが使えなくなるなら巫女になんてなりたくない!』
《・・・・・・・・・・》
「おいおい、神さま困ってんじゃん!受けとけって!」
「そうだよー、こんなチャンス二度とないよー!」
「うんうん、私もそう思うよ、シャルル」
「マナにも頼まれたのにね?」
ジーンの一言がシャルルの胸に刺さる
「う・・・・それはそれ!これはこれ!!」
それから10数分、神からの返事は無かった
「ほら、神さま怒ってんじゃないの?マジで受けときなって!」
「やだよ、生の魔法が使えないとかありえない」
「そうは言ってもさ、巫女だよ?巫女」
「だから嫌だって言ってるじゃん!」
シャルルの意志は固く、一切揺るがないものだった
そんな彼女にシルトは大きなため息を洩らし、やれやれと首を振った
その時、神の声が響く
《・・・・わかりました、貴女の望みに応えましょう・・・》
「「「「え?」」」」
《・・・生の魔法は使えるようにしましょう
・・しかし、巫女としては半人前になります、それでも構いませんね・・》
『うんっ!!』
「いいのかよっ!!」
思わずツッコんでしまったが、相手は神だったのを思い出し、シルトは縮こまる
《・・・・新たな巫女よ、世界のため尽くしなさい・・・》
『わかった!任せて!』
シャルルの胸元で光っていた巫女の力は彼女の胸の中へと消えてゆき
彼女の中に何かが流れ込んでくる
「あ・・・あぁ・・・・・マナ・・・」
シャルルの瞳から再び涙が溢れ、その場でうずくまる
マナの記憶の一部が映像としてシャルルの頭を駆け抜け
彼女の感情が、想いが、願いがシャルルに伝わってくる
「・・・・アタシに任せて、マナ」
立ち上がったシャルルは歯を見せ"にしし!"と笑うのだった
《・・・・先代の巫女・・・彼女の罪を、咎を許しましょう・・・》
「え?」
神が突然意味の分からない事を言い出し、皆は不思議がっていた
《・・・貴女は使命から解放され、記憶を失い
輪廻から外れ、もう1度だけ生まれ変わります・・・》
神の声はどこか悲しそうな、寂しそうに思えた
《・・・私達神々からのせめてもの償いです・・・》
マナの遺体が浮き上がり、光の中を通り、水の神の元へと向かってゆく
《・・・おつかれさまでした・・・》
ゆっくりと時間をかけて神の元に辿り着いたマナは光に包まれる
そして、水の神と共に消え、辺りは夜の闇に支配された
「マナは、生まれ変わるんだね・・・良かった」
「うんうん、神さまの保証付きってすごいね?」
「多分幸せな人生が待ってるんだろうなー、羨ましいー」
その後、両軍は自国へと戻り、停戦を祝う細やかな宴が開かれた
後日、マナが作り出した大河は"マクリール大運河"と命名され
その発生地点である水の湧き続ける湖の辺には神殿が作られる
水の女神マナ・マクリールを祀る神殿だ
ヒッタイトは停戦日に元老院が暗殺された事により混乱するが
それも次第に収まり、ヒッタイトとメンフィスは終戦を宣言
和平を結び、この地に豊かさと平和が訪れた
後に、この地は水と緑溢れる美しい大地となる事は今は誰も知らない
アタシが彼等と接触しようと決めたのは理由がある
ある日、神から啓示を受けたんだ
神は言った、貴女は選ばなくてはならない、って
《複数の使徒の命か、貴女の命か・・・》
そんな馬鹿げた事を言って来たのは水の神、あの金魚だ
アタシは神があまり好きじゃない
一時期は恨んだり憎んだ事すらある・・・あ、これは内緒ね
神はいつも一方的で、アタシの私情なんて知ったこっちゃない
ううん、一方的でもないか・・・神は神で世界に恩恵を与え続けてる
ちょっと言い過ぎたね、反省反省
それにしても、使徒の命とアタシの命が等価な訳ないじゃん
アタシは死んでもやり直せる、でも彼等は違うんだ
久々に声かけてきたと思えば、神でもボケるのかな?
そんな考えは神の次の言葉で消し飛んだ
《近い未来、貴女は選ばなくてはなりません
複数の使徒の命か、貴女の魂・・・どちらかしか救う事はできません
魂を失う、それは輪廻から外れるという事です・・・その先に待つのは・・・無です》
無茶振りにもほどがあるでしょ?これが神さまって奴等なのよ
でもね、アタシは色々な事に合点がいったんだ
新たな神の子が生まれた事、災厄神が復活した事
そして、言いようの無いモヤモヤが晴れた気がしたんだ
アタシは嬉しかったんだ
やっと終われる、彼等を救って終われるんだ
こんな最高の終わり方ってある?アタシの頑張りの集大成だよ
悪くない終わり方、そう思えたんだ
災厄神との決戦に参戦出来ないのは少し悔しいけど
今回の候補者達は面白いのが揃ってる
勇者候補の彼・・・エイン・トール・ヴァンレン
6000年前の彼の面影が少しある、懐かしい気分にさせてくれる
真面目で堅物なところも似てるかな
そのせいか、アタシは期待しちゃうんだ、彼に
ヒッタイトで彼の素質をじっくり見させてもらった
六神の繋がりはあるけど、オルフェーと比べて弱かった
特に火と水が弱いかな、あれじゃ勇者にはなれないと思う
でも期待しちゃうんだ、彼に
神の勇者、巫女、使徒、みんな六神のどれかの繋がりを持ってる
勇者だけは六神全部の繋がりを持つ者にしかなれないけどね
でも、不思議なんだ、彼は
彼にはあの災厄神との繋がり・・・加護みたいなものが微弱だけどある
あんなの見たことないよ、だってあの災厄神だよ?
敵であるアタシ達に加護なんて与える訳ないじゃない
でも、彼は持ってる、その繋がりを、加護を
それは希望になるかもしれない、アタシはそう思えたんだ
次に気になる子と言えば、地の巫女・・・マルロ・ノル・ドルラード
神の子、うん、そう、神の子
彼女はアタシのように輪廻転生の輪に囚われてる
多分これから何千年も彼女は苦しむと思う
そう思うと心が痛いけど、アタシは彼女に感謝してる
産まれて来てくれて・・・ありがとう
でも、あの子は自分を押さえ込んでるみたい
そこだけは気になったかな、無理しないでいいのにな~
次に気になった子は、ジーン・ヴァルター
あ~、悪魔王アスタロトって言った方がいいのかな?
なんでアスタロトがこっちに着いたのか分からないけど
彼女は自我を保っていた、という事は共存してるって事
これは今までに無かった事だからアタシは面白いと思った
もし悪魔王が味方してくれたらこれほど力強い事はないよ
だって悪魔王は四神をも超える力を有してるんだから
これは勝てるかもしれない、そう思えたんだ
そして、未来のアタシ、シャルル・フォレスト
あの子と出会えて良かった
ずっと気になってた胸のつっかえが取れた気がした
彼女なら大丈夫、アタシはそう思えた
今回の候補者達は本当に面白い
他にも面白い子はいるけど、今はいいよね
アタシが生を受けてから6500年は経ってる
最初は意味分からなかったけど、神の啓示を理解して
世界を理解して、アタシは頑張って来た
誇れる事ばかりじゃないけど、アタシは自分に"よくやった"って言いたい
それじゃ、お仕事と行きますか!
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・
マナの魔法により水の拘束を受けていたナビィは
内に秘める魔力を溜め込み、一気に爆発させる
ボンッ!
水が吹き飛ばされ、一瞬だが拘束が解ける
その一瞬を逃さずナビィは飛翔し、拘束を逃れた
「貴様、何者だ」
ナビィとは思えない低く重い声が響き
その声はヒッタイトとメンフィス両軍を相手しているマナに届く
「世界の敵である君に名乗る名は無いよ」
すると、マナの四方に水の刃が出現する
それは一直線にナビィに向かってゆき
彼女は巨大な光翼を羽ばたかせ大空へと逃げてゆく
だが、水の刃は彼女を追尾して行った
ボンッ、ボンッ、と爆発音のような腹に響く音が鳴る
空中でナビィの拳や蹴りと水の刃がぶつかり合う音だ
そんな常軌を逸した光景を両軍の者達は眺めていた
「めんどくさいな・・・」
マナが首からネックレスを外し、それを強く握り締める
それと同時に水の刃は変化し、6本の水の剣へと姿を変えた
「お前、もう落ちろよ」
水の剣はぷるぷると震え出し、刀身は激しい水流のようだった
そして、6本の剣がナビィに向かって一斉に動き出す
ナビィが高速で回避行動に移る・・・が、それよりも早く剣は彼女に届く
「がはっ」
黄金の鎧の口元から大量の血が吐き出される
右腕に2本、脇腹に1本、右翼に1本、左翼に2本の剣が深々と刺さっていた
刺さった剣はズズっと動いてゆき、そのまま彼女を切断してゆく
『うああああああああああああああああああっ!!』
彼女の空っぽの右腕が切断され、脇腹は大きく開き
両翼はもがれる事となった
そして、ナビィは落下してゆく・・・・
水の剣の形状が変化し、切断された黄金の右腕を包み込む
それはマナの元へと戻ってゆき、彼女はその腕を掴み取る
「・・・なるほどね、あの半神になった魔獣の力か」
マナは腕を投げ捨て、水で包み込み、圧縮する
黄金の腕は一瞬で片手に収まる程度の小さな残骸となった
残骸を一瞥もせずに彼女は墜落して呻き声を上げているナビィの元へと向かう
「ねぇ、君、その力はどこで拾ったの?」
「うっ・・・だ、誰が・・・言うか」
「ふぅん」
マナは頭の後ろで腕を組み、ナビィを見下ろしていた
「それはね、元はヒッポグリフだったスパルナって魔獣でさ
アタシが4000年くらい前に殺した奴なのよ
なんで君がそれを持ってるの?どこで手に入れたの?」
4000年前に?何を言っている、この女は
だが、一族の伝承では4000年ほど前にいた神の血という話だ
何故それを知っている?本当にこの女は何者なのだ
「言いたくないならいいけどさ、君何したか分かってるのかな?」
「私は・・・侵略者を・・敵を倒しただけだ」
「あぁ、ヒッタイトの事?そんな事聞いてるんじゃないよ、バカなの?」
「・・・・」
「アタシが言ってんのは、何故神の使徒候補者を殺したって事だよ」
「神の使徒・・・候補?」
「そう、君が放ったあれで1人死んだんだよ
君のせいで人類は10万の兵よりも強い味方を失った事になる
来たる聖戦において、それは大きな痛手となる・・・わかる?」
「お前は・・・まさか・・・ごふっ」
ナビィが大量の血を吐き出し、鎧のあちこちから血が流れる
「そのままじゃスパルナに食われるよ」
マナは魔法を発動し、螺旋状の水を作り出す
「我慢しろ」
そう言うと、彼女はその水でナビィの黄金の鎧を攻撃し始めた
ギィィィィィィィッ!
1撃1撃が入る度に黄金の鎧は砕け、飛び散ってゆく
そして、ナビィが身に纏っていた黄金の鎧は全て破壊された
「くっ・・・ごほごほっ」
ナビィは血を吐き出し、意識が薄れてゆくのを感じていた
だが、マナがそれを許してはくれない
「勝手に死ぬな」
マナはナビィの腹部を押さえ、淡い桃色の光を放つ
その瞬間ナビィに激痛が走るが、それも次第に弱くなっていった
そして、不思議と意識はハッキリとしてくる
「血が・・・何故・・何故助ける」
出血は止まっており、傷口も塞がっていた
マナは立ち上がり、ナビィを見下ろして答える
「神の使徒候補を殺した責任は取れ」
「お前は・・・いや、貴女は神の使いなのか」
「アタシは神の子、世界を見守る者」
「そうか・・・そうか・・・・私は神に牙を剥いてしまったのだな」
「やっぱバカだね、アタシは神じゃないって言ってんじゃん」
「ふふ、そうだったな・・・すまない」
ナビィは不思議な気持ちに包まれていた
目の前のこの少女は私など手の届かない存在、そう思えたのだ
まるで神を崇めるように、彼女を見上げていた
「君はよく見ると使徒としての資質が少しだけある
だから君は殺さない、助ける、君が殺した彼の代わりになれ」
「でも私はもう・・・」
ナビィは自身の身体を見る
右腕は無く、両足は逆に曲がりくねり、二度と使い物にはならないだろう
「歩けなくても戦え、来るべき時が来たら、約束して」
「・・・・分かった・・・しかし、この地の水不足が解決せねば滅亡は必至
再びこの不毛な争いが始まるだろう
その時、我らメンフィスは再び力にすがってしまうかもしれん」
「・・・それは大丈夫、水の巫女であるアタシに任せて」
「水の巫女・・・そうか、貴女様はやはりそうなのか」
「様とかやめて、気持ち悪い」
「感謝する」
ふんっ、とマナは後ろを向いて歩き出す
その後姿を見ながらナビィは微笑み、気を失った
・・・・・
・・・
・
戦争は止まっていた
水の巫女と嵐神の戦いは人智を超えており
誰もがその戦いの行く末を見守っていた
両軍の中央、最前線の隅にマナは立つ
彼女は魔法でゆっくりと浮かび上がり
静まり返っていた戦場に大声で警告を放つ
『水が欲しいならくれてやる!もう争いはやめろ!!』
マナは気づいていた、今が神の言う選択の時だと
ここで選ばなくてはならない、自分の魂か、彼等の命か
答えは最初から決まっている
マナはハーフブリードの元へと飛んで行き
シャルルを1度抱き締める
「シャルル、後は頼んだよ」
「え?」
シャルルを解放し、マナは歯を見せ笑った
その笑顔は今まで見た彼女の笑顔の中で1番良く
シャルルも自然と笑顔になり、親指を立てて言う
「よくわかんないけど任された!」
「「にしし!」」
二人が笑い、マナは真顔に戻ってジーンへと近寄る
「アスタロト」
「なに?」
「裏切らないでね」
「そのつもりだけど」
「ならいい、頼むね」
ジーンは何の事だろう?といった表情をしており
その顔が何かおかしくてマナは笑う
彼女は悪魔王と完全共存している、人間らしい人間だ
彼女なら大丈夫、そう思えた
「あ、そうそう、この戦争の原因は北の国の商人だから
懲らしめたいなら好きにやって、多分君たちにはいい経験になる」
マナが去ろうとした時、彼女の足が止まる
「・・・・・・え?」
彼女がじーっと見つめていたのはシルトだった
「え、何?僕にも何か用?」
「・・・・・・ちょっといい?」
「どぞ」
マナがシルトへと歩み寄り、彼の顔を両手でガシッと掴む
「うおっ」
「君、水あたりもらってるね」
「よくわかんね、流石水の巫女」
「このままじゃ死ぬから治したげるよ」
彼女が少し魔力を込めるとシルトは吐き気を催す
ビシャビシャと少量の水を吐き出し、息を整えた
「これでもう大丈夫だよ」
「おぉ、助かった」
「それはいいとして、ちょっといい?」
「ん?」
再びシルトの顔を両手でガシッと掴み
目の下を親指で伸ばされ、じっと目を見つめられる
こんな至近距離で女性に見つめられた事の無いシルトはドキドキするが
彼女の両手が視線を外す事を許してくれなかった
「・・・・・君、生きてたんだね」
「は?」
「ねぇ、なんで君は生きてるの?」
「ちょ、生きてちゃいけないのかよ!」
「ううん、そうじゃなくて、どうやって生きてるの?」
「・・・・冒険者とかして?」
「そうじゃなくて、君もバカなのかぁ・・・」
「バカですみませんね」
「君、魔力無いよね?」
「らしいね」
「どうして生きてるの?生命の源たる魔力が無いんだよ?
魔力切れの魔法使いがどうなるか知ってるよね?普通死ぬんだよ?」
「そう言われてもな・・・」
「君、面白いね」
マナがニカっと笑顔になる
その笑顔が可愛くて、シルトの顔は赤くなる
「い、いい加減、離してくれないかな、それと、顔近い」
「あ、ごめんごめん」
マナが離れた事によりシルトが大きなため息をしていると
サラが彼の背中を撫でていた
「えっと・・・黒い人」
「シルトだよ」
「シルトくん、その鎧と盾には気をつけな」
「・・・どういう意味だ?」
「ただの勘、だよ」
そう言ってマナは空へと駆けて行った
彼女はそのままエイン達の元へと飛んで行く
その間、戦争は停止しており、にらみ合いが続いていた
「やぁ、勇者くん」
「巫女様、どうしたのですか」
「君に伝えたい事があってね・・・
この戦争の原因を作ったのは北の国の商人だよ」
「っ!?」
エインが目を丸くしていると、マナは彼の背にいるミラを覗き込む
「これは危ないね、ちょっと下ろして」
地面に寝かされたミラに治療を施し、マナは満足そうに微笑んだ
「これでもう大丈夫、それじゃ勇者くん、大事なことを伝えるよ」
「なんでしょうか」
「君は北東にある3つの高い山に向かって
そこに君の助けるになる聖剣があるから、貰ってきな」
「聖剣・・・ですか」
「うん、頑張れ」
「はい」
マナはぴょんっとジャンプして水の上に立ち、振り向く
「マルロちゃんに言っておいて、君は無理しすぎって
これから大変だろうけど、自由に生きていいんだよって」
それだけ言い残し、彼女は空へと駆けて行った
・・・・・
・・・
・
「それじゃ、最後のお仕事と行きますかっ!」
マナはにらみ合いの続く両軍の間に陣取り、大声を上げる
『死にたくない奴は今すぐ逃げろ!さもなくば絶対の死が待ってる!』
両軍に動揺が広がる
だが、指揮が上手く機能しておらず、両軍はあまり動いていなかった
「ま、仕方ないか・・・」
マナは首から下げている小さなネックレスを手に目を閉じる
彼女は祈るように、大切なものを抱えるようにネックレスを握り締め叫ぶ
『神器解放!キー・オブ・リィンカーネーション!』
勢いよくネックレスを上へと投げると
夕闇に染まっていた世界に眩い光が降り注ぎ
目にした者は目を細め、顔をしかめた
しばらくして光は収まり、2メートル以上ある黒く重い十字が中空に現れる
それは先程マナが投げた錨十字(アンク)が巨大化したものである
中空で停止していた"それ"は落下を始め
マナはキャッチするとくるりと一回転してアンクを大地へと突き刺す
『神気・・・解放っ!』
彼女が叫ぶと同時に膨大な魔力の波動が辺りに広がり
魔力感知など出来ない者ですらその力は認識出来た
肉眼でも確認出来るほどの魔力が彼女が溢れ出し
放電現象のようにバチバチと火花を散らす
その時、彼女の瞳に変化が起きる
黒目は十字に割れてゆき、その瞳は輝き始めた
「冗談でしょ・・・何よ、あの魔力・・・」
目の前の事実を否定したいような言葉を吐き出したのはジーンだった
今のマナの有する魔力は内に秘めるアスタロトを凌駕している
・・神の子め・・・忌々しい魔力だ
アスタロトの恐れる声がする
あの悪魔王が恐れている、その事実がジーンを震え上がらせた
《神の定めし理を冒す者、我の名はマナ・マクリール!
最も醜き肉体と最も気高き魂を捧げ、我、絶対たる破壊をもたらさん!》
彼女の声は神の声のように辺り一帯の者達の脳内に響く
アンクを引き抜き、重そうな巨大な錨十字を軽々と持ち上げると
肩に担ぐように構え、彼女の詠唱は続く
《我は望む、一面の青を、我は望む、万物の素たる水を
命の息吹を枯渇する大地へと与え、悠久の潤沢を・・・・》
彼女を中心に光の文字が無数に浮かび
ゆっくりと彼女の周りを周り始める
《理を歪め、この地を統べる龍を断たん
響け!我が願い、届け!我が想い、奏でるは命の唄!
幾万幾億の夜が明け、幾万幾億の朝が来る
限りなく悠久の刻の中でも揺るがぬ安寧を、唱え・・・唱え・・唱えっ!
過去と未来、生きとし生ける全ての者よ・・・聞けっ!我が魂を!!》
マナがアンクを構えると、十字の一番長い下部分が半分に割れ
ガチャガチャと激しい音を立てながら変形してゆく
それと同時に黒い表面には赤い紋様が浮かび
半分に割れた部分から光が伸び、それはまるで巨大な鍵のような形になった
《この罪を、この咎を、アタシは受け入れる!》
マナの瞳の輝きは増し、その全身も淡く輝き始める
様々な色の光が彼女に集まってゆき、彼女の神器に吸い込まれてゆく
鍵状の先端に3つの光の輪が出現し
辺りに浮いていた光の文字が集まり、回り始めた
《こじ開けろ!キー・オブ・リィカーネーションッ!》
神器を大地へと深く突き刺し、力強くひねる
ガチャンと低く重い音が響き、辺りの空気は一変した
誰もが感じたその変化に、その場にいた全ての者は本能から鳥肌が立つ
本能で解るのだ、ここは危険だ、と
《悠久の青(エテーナ・ヴェルダ)!!》
キィィィィィィンッ!!
誰もが耳を塞ぎたくなるような強烈な高音が鳴り響き
ずるっと何かがズレるような感覚が辺り一帯の者を襲う
大地は小さく揺れ始め、揺れは次第に大きくなってゆき
神器が突き刺さる大地から間欠泉のように膨大な量の水が吹き出した
水は留まる事を知らず、メンフィス、ヒッタイト両軍の一部を押し流す
高さ40メートルを優に超える大津波が砂漠の真ん中で発生したのだ
人間に抗う事など不可能だった
逃げ遅れた数千の人間を巻き込みながら大量の水は流れてゆく
扇状に広がってゆくそれは数十キロ先にある大地の裂け目にまで届き
裂け目を水で満たしていった・・・
水は沸き続けている
無限とも思える水が巨大な河を作り、何本も枝分かれしてゆき
幾つもの川を作り上げてゆき・・そして、いつしか海までたどり着く
この砂と岩しかない乾き切った大地に、無尽蔵の水源が生まれた瞬間だった
・・・・・
・・・
・
水の発生源である場所には大きな湖が出来上がり
その中央にはマナ・マクリールが満足気な顔で浮いていた
「しんど・・・これが禁呪かぁ・・・」
そこへリーガベントで飛んで来たシャルルが彼女の身体を抱き上げる
「マナ!マナ!何これ凄い!!」
「すごいっしょ・・・ふひひ」
今まで水を使っても一切濡れていなかった彼女の身体はびしょびしょに濡れていた
彼女を抱いたままシャルルは岸へと向かう
「シャルル・・・」
「なに?もうちょっとで岸に着くから待ってね」
「うん・・・・てきてくれて・・・・がと」
「ん?」
リーガベントの風の音で上手く聞き取る事が出来なかった
「・・・産まれて来てくれて・・ありがとう
アタシは・・・シャルルに出会えて良かったよ」
「何恥ずかしいこと言ってるの?喋ってると舌噛むよ!」
「はは・・・そだね」
ハーフブリードの皆がいる岸まで彼女を運び、ゆっくりと下ろす
だが、マナの瞳は閉じられており
先程まであった膨大な魔力は感じる事が出来ない
「マナ?大丈夫!?」
「・・・・・」
『マナ!?』
「・・・・・」
シャルルの呼びかけに一切反応は無く、彼女は眠っているようだった
「ジーン、マナは大丈夫なの??」
「・・・・魔力が完全に消えてる、もう・・・」
「は?何言ってんの?さっきまで喋ってたじゃん!」
「魂と呼べるものが砕けてるのよ・・・」
『ふっざけんなっ!!何とかしろっ!!』
シャルルが大粒の涙を流しながら自身の膝を叩く
彼女の涙はマナの顔を濡らすが、そんなマナの顔は安らかな顔だった
「やだよ・・・やだよぉ・・・・マナぁ」
シャルルが彼女の胸に顔をうずめ、泣きじゃくる
その涙にサラもラピもジーンすらも泣いていた
だが、一人泣いていないシルトがシャルルの横に座る
「なぁシャルル、この子はすっごい人数を救ったんだよ」
シャルルの頭を撫でながらシルトは続ける
「それを否定しないでやろうぜ」
「・・・ずずっ・・・・うん」
鼻をすすりながらシャルルは顔を上げた
その顔は鼻水や涙でぐちゃぐちゃだ
「さっきこの子が言ったろ、頼むってさ」
「・・・うん」
「なら任されようよ、僕らに出来る事でさ」
「うん・・・・・うん・・・私、もう大丈夫だよ、もう泣かないよ」
目をぐしぐしと擦り、シャルルは涙を我慢する
「何言ってんだよ、さっさと泣け、我慢すんな」
「うぅ・・・・うわぁぁぁ!マナぁ、マナぁ!」
夕闇の中、しばらく彼女の泣き声が響いていた
・・・・・
・・・
・
日も落ちた頃、両軍は停戦協定を結んだ
もう争う理由が無かった事と、両軍共に被害が甚大だったからだ
悲しく不毛な戦争は終わった
そして、突如夜の闇を照らすような青白い光が差す
誰もがその光を見上げ、まだ何か起こるのかと恐怖した
それと同時に、マナの遺体から青白い光が離れてゆく・・・
「何これ・・・」
「巫女の力だよ、巫女が死んだ時に力は神に返り、次の巫女が選ばれるの」
「へぇ・・・綺麗だね」
ラピが光に手を伸ばすようにしていると
その光はゆっくり上ってゆく
「あれは・・・水の神だ」
「え?お魚さん?」
上空から青白い光の柱を作り出していたのは水の神だった
水の神はゆっくりと空を漂っており、光はマナへと向けられた
その光の道を巫女の力たる光が上ってゆく
誰もがその光は神の元まで行くものと思っていた
だが、そうはならなかった
光は途中で停止し、方向を変える
「あれ?戻ってくるよ?」
「おかしいな、神の元に戻るはずなんだけど・・・」
巫女の力はゆっくりと降下を続ける
それはマナの元へと戻るのかと思われたが、僅かに軌道が違っていた
「え?」
光はシャルルの元へと降り、彼女の胸元で輝く
「え?どういう事?シャルルが水の巫女って事!?」
「え!?ホントに!?」
サラが驚き、その尻尾はピーンと伸びる
「た、多分そう・・・だと思うけど」
ジーンも断言は出来ず、ただその光景を見守っていた
そこに神の声が響く
《・・・巫女よ、私の新たな巫女よ》
「あわわわ、本当にシャルルが巫女なんだー!」
ラピが興奮のあまり転んでいる
当の本人であるシャルルはずっと黙ったまま空を見上げていた
《・・・・貴女を新たな巫女とします・・・》
『待って!!』
ずっと黙っていたシャルルが突然大声を上げる
しかも神に待ったを言い放った
「ちょ、何言い出してんの!?」
「うっさい、シルさんは黙ってて」
《・・・何でしょうか・・・》
『巫女になるのはいいけど、生の魔法は使えるの?』
《・・・・いえ、それは叶いません、貴女は水の巫女なのですから・・・》
『じゃあ嫌だ!!』
彼女は即答だった、辺りは静まり返り、しばし沈黙が訪れる
「ちょ!!おまっ!!」
「シャ、シャルルッ!?」
「いやいやいやいやいや、それはまずいんじゃ」
「ふふ、シャルルらしい」
ジーンだけ笑っているがハーフブリード達は慌てふためく
『私は生の魔法でみんなを助けたい!そのためにずっと頑張ってきた!
だからそれが使えなくなるなら巫女になんてなりたくない!』
《・・・・・・・・・・》
「おいおい、神さま困ってんじゃん!受けとけって!」
「そうだよー、こんなチャンス二度とないよー!」
「うんうん、私もそう思うよ、シャルル」
「マナにも頼まれたのにね?」
ジーンの一言がシャルルの胸に刺さる
「う・・・・それはそれ!これはこれ!!」
それから10数分、神からの返事は無かった
「ほら、神さま怒ってんじゃないの?マジで受けときなって!」
「やだよ、生の魔法が使えないとかありえない」
「そうは言ってもさ、巫女だよ?巫女」
「だから嫌だって言ってるじゃん!」
シャルルの意志は固く、一切揺るがないものだった
そんな彼女にシルトは大きなため息を洩らし、やれやれと首を振った
その時、神の声が響く
《・・・・わかりました、貴女の望みに応えましょう・・・》
「「「「え?」」」」
《・・・生の魔法は使えるようにしましょう
・・しかし、巫女としては半人前になります、それでも構いませんね・・》
『うんっ!!』
「いいのかよっ!!」
思わずツッコんでしまったが、相手は神だったのを思い出し、シルトは縮こまる
《・・・・新たな巫女よ、世界のため尽くしなさい・・・》
『わかった!任せて!』
シャルルの胸元で光っていた巫女の力は彼女の胸の中へと消えてゆき
彼女の中に何かが流れ込んでくる
「あ・・・あぁ・・・・・マナ・・・」
シャルルの瞳から再び涙が溢れ、その場でうずくまる
マナの記憶の一部が映像としてシャルルの頭を駆け抜け
彼女の感情が、想いが、願いがシャルルに伝わってくる
「・・・・アタシに任せて、マナ」
立ち上がったシャルルは歯を見せ"にしし!"と笑うのだった
《・・・・先代の巫女・・・彼女の罪を、咎を許しましょう・・・》
「え?」
神が突然意味の分からない事を言い出し、皆は不思議がっていた
《・・・貴女は使命から解放され、記憶を失い
輪廻から外れ、もう1度だけ生まれ変わります・・・》
神の声はどこか悲しそうな、寂しそうに思えた
《・・・私達神々からのせめてもの償いです・・・》
マナの遺体が浮き上がり、光の中を通り、水の神の元へと向かってゆく
《・・・おつかれさまでした・・・》
ゆっくりと時間をかけて神の元に辿り着いたマナは光に包まれる
そして、水の神と共に消え、辺りは夜の闇に支配された
「マナは、生まれ変わるんだね・・・良かった」
「うんうん、神さまの保証付きってすごいね?」
「多分幸せな人生が待ってるんだろうなー、羨ましいー」
その後、両軍は自国へと戻り、停戦を祝う細やかな宴が開かれた
後日、マナが作り出した大河は"マクリール大運河"と命名され
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水の女神マナ・マクリールを祀る神殿だ
ヒッタイトは停戦日に元老院が暗殺された事により混乱するが
それも次第に収まり、ヒッタイトとメンフィスは終戦を宣言
和平を結び、この地に豊かさと平和が訪れた
後に、この地は水と緑溢れる美しい大地となる事は今は誰も知らない
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誤字脱字が多いです。誤字脱字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめて行います。
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ゾンビナイト
moon
大衆娯楽
念願叶ってテーマパークのダンサーになった僕。しかしそこは、有名になりたいだけの動画クリエイターからテーマパークに悪態をつくことで収益を得る映画オタク、はたまたダンサーにガチ恋するカメラ女子、それらを目の敵にするスタッフなどとんでもない人間たちの巣窟だった。 ハロウィンに行われる『ゾンビナイト』というイベントを取り巻く人達を描くどこにでもある普通のテーマパークのお話。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
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