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4章:闇の始動編
第5話 外套
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【外套】
「貴方様をずっとお待ちしておりました・・・・我が王よ」
顔を目以外隠している女性はそう言った
とても印象的な目力の強い女性だが、それよりも目立つ物がある
それはその背に羽織る漆黒のマント
王族が身に着けるには程遠いその色合いは、まるで光すら飲み込みそうだった
静まり返った王宮の静寂をシルトの一言が破る
「は?」
呆気に取られていたシルトのやっと出た言葉がそれだった
だが、そんな態度は予想していた彼女は至って冷静に言葉を紡ぐ
「私の名はバステト、この国の女王を任されております」
"任されている"という言い方に違和感を覚えるだろう
それはこの国の根幹に関わる重大な理由があるのだ・・・・
彼女は一旦頭を上げてから再び深いお辞儀をする
「常闇を身に纏いし者、それこそメンフィスの王たる証
貴方様こそがこの国の絶対の王なのです
私達はこの時を6000年待ちました・・・我が王よ」
淡々と説明をする彼女が何を言っているのかは理解できる
だが、招かれて早々にお前が王だと言われて受け入れられる者がいるだろうか
答えは否だ
「ちょ、ちょっと待ってくださいって、意味が解らない
なんでこれ着てるだけで王様なんっすか、アンタの言ってる事は無茶苦茶だ」
彼の言う事はもっともだ、いきなり王だと言われても困惑するだろう
それも予想していたバステトは1つ提案をする
「まだ少しばかり時間はありますので宴の準備をさせます
詳しくはお酒でも飲みながらいかがでしょう?」
そう言って侍女たちに宴の準備を始めさせる
呆気に取られていたハーフブリードはのろのろと立ち上がり
宴の準備の邪魔にならぬよう王宮の隅に集まる
「ぷぷっ、シルさんが王様だって」
「笑っちゃ悪いよ」
そう言いながらジーンも笑いを堪えるのが辛そうだ
「王さまなるの?」
ラピがシルトを見上げながら聞くと彼は即答する
「いやいや、なるわけ無いでしょ、こんな知らん国でいきなり」
「そう?どんな国でも王だよ?それなりの価値はあると思うよ」
ジーンは冗談なのか本気なのか判らないからかうような微笑で言う
「だからこそだよ、僕は柄じゃない」
「ならないの?」
サラが少し不安げに再度聞いてくる
「だからならないって、そもそも常闇が王の証ってなんなんだよ」
シルトはこの訳が解らない状況に苛立つ
だが、サラは少しばかりホッとしているようだった
「その紋章がこの国と一致するし、多分王族の証なんだろうね」
ジーンがここまでに拾った情報を掻い摘み、冷静な分析を口にする
「で、それを2つも持ってるシルさんは王様って事なんじゃない?」
「2つって・・・鎧と盾って事?」
「うん、それはセットの物だと思うよ・・・それと、あの女王がつけてたマントもね」
ジーンがチラッとバステトに視線を向ける
魔力のみが見える彼女の眼にはバステトの身につけるマントはこう見えていた
暗闇の中でも尚黒く輝く漆黒、それはまるで常闇のようだと
「あのマントがねぇ・・・」
シルトもバステトを見てみるが、彼にはただの黒いマントにしか見えなかった
「あのマント、シルさんの鎧や盾より凄い物かもよ
あれから出てる魔力量がシルさんの鎧や盾とは比較にならないから」
「マジか」
「でも、もしかすると違うかもだけどね・・・」
ジーンが言葉を濁す
「どういう意味?」
一瞬迷ったジーンは目を閉じて考えてから口を開く
「装備者次第かもしれないってこと
シルさん魔力空っぽだから性能を引き出せてないだけかもって話よ」
「なるほど・・・」
そう言われてシルトは悔しさで拳を握り締める
なぜ自分には普通程度も魔力が無いんだ、と
もし自分にそれがあればもっと強くなれるのかもしれない
そうすれば仲間を守る力になる、なぜ自分にはそれがないんだ、と
震えるほど握り締めていた拳にそっとジーンの手が重ねられる
「気持ちは解るよ、私もそうだった」
先ほどジーンが言葉を濁した理由はそれだろう
その辛さを理解しているからこそ彼女は言いにくかったのだ
それを理解したシルトは拳を緩めて普段の笑顔に戻る
「・・・・ありがと
さて、王の件は置いといて、宴を楽しもう」
ちょうど宴の準備が終え、彼等の持っていた武器や荷物は侍女に預ける
そして各々が案内された席へと着いた
肉や果物、それとこんな砂漠の真ん中でどう手に入れたのか判らないが魚料理まである
様々な酒が並び、まさに宴というのが相応しい豪華な食事が並んでいる
「すっごいな」
「ちょっと臭いかも・・・」
シルトの隣に座ったサラがしかめっ面をしている
その隣にいるシャルルも同様だった
彼女達は普通の人間より嗅覚も優れている
そのため、香辛料が強めのこの国の料理は少し刺激が強すぎたようだ
「うっ・・・で、でも美味しそう・・・」
シャルルが臭いにやられながらも美味しそうな見た目に心が揺らいでいる
「食べていいのー?」
ラピが遠慮なしにそんな事を聞くと「もちろんです」とバステトは答える
それからしらばくは楽しい食事の時間が過ぎる
サラとシャルルも臭いを我慢して口に入れた料理が予想以上に美味しかったらしく
今では普通にパクパクと食べている・・・鼻が慣れただけかもしれないが
皆がある程度食事を終え、一休みしている頃
バステトがナビィに耳打ちをする
頷いたナビィは早足にその場を去り、少しして戻ってくる
「ハーフブリードの方々
この度は国宝である死者の書を取り戻して頂き、真に感謝致します」
バステトは深いお辞儀をして、ナビィに目で合図をする
ナビィは大きな包みを持っており、それを大切そうに両手で掲げ、彼等の前に跪く
「メンフィスからの礼に御座います、どうか御納めください」
シルトが受け取り、かかっていた白い布をどかす
すると、そこには1本の剣があった
「不思議な形の剣だな」
剣と聞いてサラが覗き込む、彼女も剣士だ、剣には興味があるのだ
「何か仕掛けがありそうだね?」
サラの予想は的中していた
ナビィがこの剣について説明を始める
「そちらは遠い異国で手に入れた魔法剣なるもので御座います」
「魔法剣?」
「はい、こちらの筒を柄の部分に装填しますと魔法が発動致します」
そう言って6つの筒を両手で掲げる
それを受け取ったサラが不思議そうに明かりに透かしたりして見ていた
「で、魔法発動するってのはどんな感じに?」
「それは是非お試しください」
「ふむふむ、魔法っていうとサラの方がいいかな?サラやってみなよ」
「え?私?いいの?」
シルトから剣を受け取り、6つの筒の中から赤いものを選び装填する
キュポンッ
「これでいいの?」
「はい、最後にこちらを力強く叩いてください」
「ここ?」
ガチャンッ!・・・・・・・・シュゥゥゥゥッ
剣から煙が少し上がり、そして一気に発火する
「わっ」
驚いたサラは少し距離を取ろうとするが、自分の手にあるものからは逃げられない
落ち着きを取り戻したサラは燃え盛る剣を3回ほど振ってみる
ブオンッ ブオンッ ブオンッ
「あ、これいいかも」
剣の軌跡に炎ついてくるようだった
「見た目より軽いし、私でも片手でいけそう」
気に入ったようで、何度か素振りをしている
「ちなみにこれ何製なの?スチール・・・じゃないよね?」
「はい、そちらはミスリルとウーツ鋼と言われる金属で出来ております」
「ウーツ?」
シルトその疑問にはジーンが答えた
「別名ダマスカス鋼、独特な帯状模様が特徴の硬い金属だよ」
「ミスリルとどっちが上なん?」
「どっちとは言いにくいけど、手入れ不要で錆びないよ、それ」
「なかなかいいね」
そうこうしていると、サラの素振りに客が集まっていた
彼女の鋭い剣技に魅せられ、侍女や兵が魅入っていたのだ
「気に入った?」
「うん、これもらっていいの?」
「もち」
シルトが笑顔を向けるとサラは照れくさそうに頬を赤らめる
「筒の方の予備を御納めください」
ナビィが18本の筒をサラに手渡し、それ用のホルダーも同時に貰う
それを右脚の太ももに巻きつけ、ズレないか確かめている
「いいなー、私にも何かないかなー」
シャルルがサラを羨ましそうに見ていると、ナビィが次の包みを持ってくる
「こちらも御納めください」
そう言って持ってきた物は小さな木の板だった
表面には文字が彫られており、何やら魔法が掛かっているようだ
「水の護符に御座います、そちらがあれば暑さなど無いに等しくなります」
『欲しいーーーーーーーっ!私が欲しいっ!!』
シャルルが真っ先に飛びつき、3つある護符の1つを捥ぎ取る
「サラはこれも貰っておきな」
シルトが1つをサラに手渡す
「私ばかりいいの?」
「暑いのダメっしょ」
「・・・うん」
「なら、遠慮しない」
「うんっ!」
最後の1つはラピが貰い、ウェールズの首から下げる事にした
どうやらくっついていれば加護はあるようで、それでも問題無かった
「それでは、最後にもう1つ・・・」
バステトが立ち上がり、彼等の元へと歩いてくる
ゆっくりと羽織っている物を外し、両膝を折り、シルトの前に跪く
「常闇の外套(がいとう)です、御納めください、我が王よ」
「またそれか・・・」
シルトが困っていると、ジーンが耳打ちしてくる
「受け取っちゃいなよ、"それ"は凄い物だよ」
「いやいや、受け取ったら王確定じゃん、それはまずいって」
「逃げちゃえばいいじゃない、ふふ」
ジーンが小声で笑い、面白がってるな?と思ったシルトは話をやめる
「とにかく立ってください、王のするべき事じゃないですよ」
そう言ってシルトはバステトを立たせ、マントは彼女に押し返す
「これを受け取れば僕は王にならなきゃいけない、だから受け取れない」
「そう・・・・ですか・・・・」
宴の席は一気に静まり、辺りには微妙な空気が流れる
しばし静寂が辺りを支配し、誰かが食器をカチャリと鳴らした事により破られる
『この者達を捕らえよっ!』
バステトの声が響き、即座に近衛兵が動く・・・その中にはナビィの姿もあった
ナビィは腰から円月輪(チャクラム)を取り出し構えている
チャクラムとは円形の刃で出来た輪である
遠方の地で生まれたこの武器はこの辺りで使っている者はいない
「おいおい、冗談だろ」
シルトが皆を庇うように前に立つ
ハーフブリードは宴の前に武器や荷物を預けている
丸腰の彼等には抵抗など出来様はずがない
少なくともメンフィスの人間はそう思っていた
・・女・・・殺るか?
そんな声が響いていた、それはジーンの頭の中だけで、だ
声の主はアスタロト、三大悪魔王の1柱である
ジーンと融合したアスタロトは時折こうやって声をかけてくる
6000年も閉じ込められていたせいか、たまに煩いくらいだが
この存在の力を誰よりも知っているのはジーン本人である
膨大な知識、魔力、絶対的な力を有している事は間違いない
・・アナタの力を使えば私が死ぬじゃない
・・すぐに元に戻してやるぞ?
・・それを繰り返せば私の肉体が持たないの
・・人間とは何故そうも弱いのだ、面倒な
しかし、このままではお前達は全滅だろう?代われ、我が殺ってやろう
・・お断り、そうやって私を乗っ取るつもりでしょ?
・・お前程度の身体を奪えないとでも思っているのか?
声だけだがその威圧感に身震いする
アスタロトの言う事は事実だろう
この存在がやろうと思えば出来ない事など無いのだから
・・他に策はないの?
・・今のお前では魔力を使えば肉体は弾け飛ぶ
それが嫌だと言うのならば"それ"で殴ればよいではないか
・・障壁で?
・・あぁ、使い方は教えてやる
・・それでこの人数いけるの?
・・問題ない、この程度の羽虫は数に入らん
・・分かった、教えて
睨み合いが続いていた
数分のことだったがそれはひどく長く感じた
シルトは預けた剣と盾の位置を確かめながら必死に頭を使って策を練っている
だが、この状況を打破できる案が浮かんでこない
仮にだが、誰かが傷つく事を許容すれば突破は可能だ
そんなものを策と呼んでいいのかは解らないが、やれない事はない
しかし、シルトがそんな策を実行するはずが無かった
彼にとって仲間が1番大事なのだから・・・
彼が悩んでいると後ろにいたジーンがシルトの横を通り抜け前へと出る
「ジーンさん、危ないって」
「大丈夫、任せて」
僅かに微笑みながらジーンは更に1歩前へと出る
『ジーン!"あれ"使ったら許さないからっ!』
シャルルが言う"あれ"とは悪魔のことだ
アムリタで悪魔召喚を行ったジーンの肉体は内側から破裂していた
あの時ジーンは確実に死んでいた、それは間違いない
なぜか巻き戻るように再生していったが、あんなものを許せるはずがなかった
「わかってるよ、安心して」
そう言う彼女はとても冷静で穏やかだった
シャルルはその表情で納得し、歯を見せニカッと笑う
「おしっ!やっちゃえジーン!」
シャルルの声が響くと、バステトの近衛兵達が一斉に構える
この兵達は全員女性で構成されている
それぞれが独特な武器を持っている、中には鞭や鎌などもいた
彼女達はある1つの民族の者達だ、ナビィは彼女達の隊長を務めている
それはナビィがラルアースの外の世界では異常なほど魔力が高いためである
高いと言ってもラルアースでは高位魔法使いくらいなのだが・・・
「シルさん下がって、危ないよ」
「おっけ」
ジーンの言う通りシルトが1歩下がると、彼女は両手を大きく広げる
その両手を胸の前でパンッと合わせる・・・
すると激しい衝撃波が全方位に向けて放たれた
「ぶあっ」
予想していなかった衝撃にシルトの身体が後ろへと吹き飛ばされる
背後にいたサラ・シャルル・ラピを巻き込み、彼女達を下敷きにして倒れ込む
「シルさん重い!痛い!」
「痛い痛い痛い」
「ううっ」
「ご、ごめんごめん」
シルトが慌てて立ち上がり、彼女達を起こす
そして、ジーンの方へと目を向ける
「なる、そういう事ね」
シャルルが呟くように言うと、隣のサラとラピも頷いていた
彼女達が何を言ってるのか普段のシルトなら判らないだろうが
これは流石に解る・・・"あの時"と全く同じなのだから
「バ・・・バケモノっ!」
近衛兵の1人から洩れた言葉はジーンに向けてのものだった
そう、彼女は正真正銘の化物(アスタロト)である
ただ障壁で封じていた魔力を解放した、それだけなのだ
「今頃気づいたの?」
ジーンは悪戯っぽい笑顔で答える
ハーフブリードと旅をしてきたナビィはこんな化物と一緒にいたのかと恐怖していた
冗談じゃない、ただの化物なんてレベルじゃない
ただそこに存在するだけで殺されそうなほどの圧力だ
アムリタで感じた尋常ならざる魔力
その正体が彼女だったなんて微塵も気づかなかった
ナビィは震える膝を力一杯叩き、何とか自我を維持する
近衛兵達は魔法適性が高い者が多い
だからこそ解るのだ、ジーンの尋常ならざる魔力の波が
肉眼でも確認できるほど濃密で膨大だ
そのため、彼女達は立っている事で精一杯の状態だった
『う、うわああああっ!!』
動けない近衛兵に痺れを切らし
錯乱した兵の1人がジーンに向けて槍を構えて突進をする
それに続くように雄叫びを上げながら4名の兵が続いた
ジーンは至って冷静に右腕を振るう、その瞬間である
ゴッ!
5人の兵達は見えない何かにぶつかり、一瞬で壁へと激突する
しかし、それだけでは終わらなかった
壁は巨大な手がぶつかったように手の形に吹き飛び、大穴があく
見えない手と壁に挟まれた兵達は嫌な音を上げて潰れていた
「見るなっ!」
シルトがマントでサラ、シャルル、ラピの視界を遮る
ジーンが何をしたのかは判らない、だがこの光景は見せたくない、そう思ったのだ
「あ・・・あぁ・・・・」
近衛兵の1人から恐怖による言葉にならない声が洩れる
一瞬だった、たった一瞬で5人の兵が原型すら解らぬほど破壊された
その光景を見た誰もが恐怖していた、もちろんバステトもその1人である
「何と・・・恐ろしき力・・・」
ジーンは肩の調子を確かめるように肩を回し、首をコキッコキッと音を鳴らす
その瞬間、内から激しい痛みが押し寄せてきた
「げほっ!・・・・痛っ」
・・魔力は使ってないはずなのになんで?
・・愚か者が、障壁を操作する時に力んで魔力を放出しておったわ
・・難しいんだけど、どうにかならないの?
・・慣れろ
・・はぁ、それしかないか
口元の血を袖で拭い、ジーンは構える
その動きに合わせてメンフィスの誰もが1歩後ずさる
再び静寂が支配し、睨み合いになると思った時
「待って、待って、ジーンさん」
背後のシルトが彼女に声をかける
「もう充分だよ、これ以上争う意味がない」
ジーンが構えを解いてシルトを見ると、メンフィス側から安堵の声が洩れる
シルトが前へと出て、皆に聞こえるように声を大きくしていった
「もう解ったっしょ、これ以上はお互い無益だ」
『そうはいくかっ!!!』
叫んだのはバステトだった
感情を露わにし、涙ぐむ瞳を真っ直ぐ向けて彼女は続ける
『この国には必要なのだ!その鎧が!盾が!
どれだけ犠牲が出ようとも、取り戻さなくてはならぬのだっ!!』
「なんでそこまで固執するんですか」
シルトの問いにバステトは我慢していた涙が溢れる
「私はこの国を任されている、王だ
諦める訳にはいかないのよ、それは判るでしょ?
常闇が・・・王の力があればオアシスは守れる、民は救われるのよ」
涙を流す女王にかける言葉を失い、彼女の泣き声だけが悲しく響いていた
「話を聞く必要がありそうだね」
ジーンがシルトにそう言うと、彼は黙って頷いた
少ししてメンフィス側も武装を解除し、話し合いの場が設けられた
「で、オアシスがどうのって何の話ですか」
大きなテーブルを挟み対面したハーフブリードとメンフィス勢
まだ緊張感は続いているが、話し合いが出来る相手という事に互いに安堵していた
「今、この国は存亡の危機に瀕しております」
俯いたまま、バステトは続ける
先ほどまで泣いていた彼女の目は赤くなっていた
「我らメンフィスは3つのオアシスを有していました
その1つは枯れ、1つは枯れかけております」
枯れかけている湖なら来る時に目にしている
このメンフィスに隣接している湖がそれだ
「最後のオアシスがあれば私達は生きる事が出来ます
しかし、それを奪おうとする者達がいるのです」
「誰ですか?」
「ヒッタイト、隣国である傭兵国家とも呼ばれている国です」
「戦争・・・って事ですか」
「はい、まだ開戦はしておりませんが、それも時間の問題
大地が裂けたあの日より、我らメンフィスもヒッタイトも水不足なのです」
重い空気が流れる
ナビィ達の表情を見ればどれだけ切羽詰った状況なのか手に取るように判った
「大地が裂け、1つのオアシスは裂け目に巻き込まれて消えました
それから私達は2つのオアシスで国を支えてきました
ですが、近頃このメンフィスに隣接するオアシスに変化が起きました
水位が急速に減っていったのです」
「穴が開いたのね」
ジーンはここへ来る時に湖を見て気づいていた
「はい、ですがまだ最後のオアシスがあります
あれさえあれば、苦しいですが国は何とかなります」
「それが奪われそう、と」
「はい・・・」
バステトの瞳には再び涙が溜まってゆく
「で、なぜ常闇がいるんですか」
「それは所有しているシルト様が1番解るのではないですか?」
そう言われてシルトは考えるが、それほどの力があるとは思えなかった
確かに常闇の鎧や盾は桁違いの性能は持っている
だが、所詮は個人だ、戦争となると大した力ではない気がしてしまう
その素直な感想をシルトは口にした
「個人がどれだけ強くても、戦争じゃ大差はないですよ」
「本当にそう思いますか?」
バステトの質問の意図が解らない、何を言わせたいんだ?
「質問を変えます・・・ジーン・ヴァルターさんでしたか
彼女1人で戦局は大きく変わると思いませんか?」
「確かに」
これにはシルトも納得だった
ジーンさんがいれば大概の事は何とかなってしまう気がする
しかし、そこで1つの疑問が生まれた
「常闇にジーンさんほどの力は無いですよ?」
シルトの知る限り、この鎧と盾にそこまでの力は無い
反射能力は使い方によっては大きな力にはなるだろうが
それでも戦局をひっくり返すほどとは到底思えなかった
「シルト様は常闇の本当の力を知らないのですね・・・・」
「本当の力?どういう事ですか」
さっきジーンに言われた言葉が脳裏をよぎる
自分は常闇の性能を引き出せていないだけかもしれないという事を・・
「伝説にはこうあります」
常闇の王、闇を支配する者
一騎当千の力を有し、彼の王は1人で数多の国を飲み込んだ
闇は王に味方し、闇は王の手足だった
その剣を振るえば大地は裂け、その盾は全てを払い除け
その鎧は何人も貫けず、その衣は闇と共にあった
常闇の王、それ即ち絶対王、神をも殺す力を持つ者なり
「神を殺すって・・・大げさな」
シルトの感想はそれだった
幾らなんでも言いすぎだ、そんな力がある訳が無い
「嘘ではありません!現にメンフィスは常闇の王が1人で作った国なのです」
「いや、伝説でしょ?流石にそれは・・・」
真に受ける方が馬鹿だ、シルトはそう思っていた
だが、バステトの目は真剣そのものだった
「では、伝説が真だと1つ御見せします」
そう言い、立ち上がったバステトはマントを大きく広げる
刹那、彼女の羽織っていたマントは完全な闇に変わる
布のようだったものが死の神のような闇へと変貌したのだ
「先に言っておきます、これからする事は敵対行為ではありません」
彼女はそう言って闇で自身を包むようにする
すると、彼女の姿は一瞬で消え、闇もまた消えた
「うおっ!?」
「わー、消えたー!」
「すごーーい!」
「ほへー」
ハーフブリード達は驚き、歓声を上げている
だが、ジーンだけは魔力の瞳で探っていた
瞬間的にバステトを包む常闇のマントから高魔力が放たれ、忽然と消えた
手品の類ではない事は確かだが、どういう能力なのだろう
まさか瞬間移動?・・・無いか、ありえない
そんな魔法があるなら本当に国すら滅ぼせる
「これで少しは解っていただけました?」
ジーンの真後ろ、すぐ近くで声がする
ゾクッとなったジーンは瞬時に振り向く・・・そこにはバステトが微笑んでいた
「嘘・・・」
思わずジーンの口からそんな言葉が洩れた
瞬間移動、そうとしか思えない現象が目の前で起きたのだ
魔力の流れは見ていた、彼女は完全に消えていた
人や物が移動すればそこには僅かでも魔力の乱れが起きる
それが一切無かったのだ
「御覧の通り、この外套は闇と共になれます
闇から闇へ、影から影へと移動できるのです」
「無茶苦茶だな・・・」
シルトがゴクリと唾を飲み込み、常闇の力の片鱗を感じていた
もしかすると自分の鎧や盾にもこんなとてつもない能力があるのでは・・・
そう思うと震えずにはいられなかった
「私は日に1度しか使えないのですけどね」
と、バステトは青白くなった顔ではにかむ
どうやら消費魔力は凄まじいらしい
ナビィの肩を借り、バステトが席に戻ると話は続けられた
「常闇の力があれば、この戦争を終わらせられます
それは判っていただけたでしょうか?」
「まぁ・・・少しは」
「ならば、その鎧と盾を返還してくださいませんか?」
「それは・・・」
シルトがその後を言う前に叫んだ人物達がいた
『『それは絶対ダメ!』』
二人の声がハモり、二人は顔を合わせて微笑み合う
それはサラとシャルルだった
「シルトさんにとって大切な物なんです」
「うん、シルさんの思い出の品なの、だからダメなんだ、ごめん」
彼の思っていた事を二人が代弁してくれた
それにはちょっと涙腺が緩みかけるが、この場では我慢する
「二人とも・・・ありがと
聞いた通りです、これは譲れません」
「そう・・・ですか・・・」
話は平行線のようだった
結局お互い譲れないものなのだ
だが、そんな状況に1つの案が降りてくる
「なら、私達がその戦争を終わらせるってのはどうかしら?」
「ちょっ!」
シルトが立ち上がり、発案者であるジーンに食って掛かろうとするが
ジーンはそれを手で制す
「と、言いますと?」
「私達が参戦して戦争を終わらせる
それで常闇は私達の物、それでどう?」
バステトは考える、先ほどのジーンの力を知らなければ何を馬鹿な事を一蹴りできた
だが、あれを見た後では彼女なら本当に出来る気がしてくる
確かに常闇は大事だ、しかし、今はそれよりも国の存亡が大事である
彼女は深い深呼吸をしてから真っ直ぐシルトを見て言う
「わかりました、その条件を飲みましょう」
「ちょ、ちょ、待って待って、僕は認めないぞ!」
「シルさんは黙ってて」
ジーンがまとまり掛けているのを壊す気かとシルトを睨む
「は?ふざけんなよ!戦争なんて行かせるかよ!」
だが、シルトはそんな眼など気にせず怒りを露わにした
『みんなに何かあったらどうすんだよ!ふざけんなっ!』
シルトが力一杯テーブルを叩き、激しい音が響く
その音にサラ、シャルル、ラピがビクッとなった
こんなに怒るシルトを見た事がなかった
だが、彼女達も黙っていられなかった
「今回はシルさんが黙った方がいいよ」
そう言ったのはシャルルだった
「うん、私もジーンさんに賛成・・・かな」
サラもそれに続いた
「それで丸く収まるみたいだし、私も賛成かなー」
ラピまでもそれに続く
「・・・・・」
「じゃ、話を進めるよ?」
ジーンが確認を取るように言うと
「・・・・待てって」
シルトは静かに、だが怒りが滲み出るような低い声で言う
「納得できるわけないだろ、皆が危険に晒されるのなんて」
「なら、白黒ハッキリさせようか、シルさん」
ジーンが顎をクイっと動かし、先ほど出来た大穴の方を示す
「わかった」
そして、二人は大穴から外へと出てゆき、皆がそれを追う
シルトもジーンも普段見せない顔をしていた
その両者の表情に、サラやシャルルやラピは少し涙目だった
シルトは剣と盾を侍女から捥ぎ取り、抜刀する
ジーンは指をポキポキと鳴らし、手足を振り準備をする
譲れないものがある二人の喧嘩が始まろうとしていた
「貴方様をずっとお待ちしておりました・・・・我が王よ」
顔を目以外隠している女性はそう言った
とても印象的な目力の強い女性だが、それよりも目立つ物がある
それはその背に羽織る漆黒のマント
王族が身に着けるには程遠いその色合いは、まるで光すら飲み込みそうだった
静まり返った王宮の静寂をシルトの一言が破る
「は?」
呆気に取られていたシルトのやっと出た言葉がそれだった
だが、そんな態度は予想していた彼女は至って冷静に言葉を紡ぐ
「私の名はバステト、この国の女王を任されております」
"任されている"という言い方に違和感を覚えるだろう
それはこの国の根幹に関わる重大な理由があるのだ・・・・
彼女は一旦頭を上げてから再び深いお辞儀をする
「常闇を身に纏いし者、それこそメンフィスの王たる証
貴方様こそがこの国の絶対の王なのです
私達はこの時を6000年待ちました・・・我が王よ」
淡々と説明をする彼女が何を言っているのかは理解できる
だが、招かれて早々にお前が王だと言われて受け入れられる者がいるだろうか
答えは否だ
「ちょ、ちょっと待ってくださいって、意味が解らない
なんでこれ着てるだけで王様なんっすか、アンタの言ってる事は無茶苦茶だ」
彼の言う事はもっともだ、いきなり王だと言われても困惑するだろう
それも予想していたバステトは1つ提案をする
「まだ少しばかり時間はありますので宴の準備をさせます
詳しくはお酒でも飲みながらいかがでしょう?」
そう言って侍女たちに宴の準備を始めさせる
呆気に取られていたハーフブリードはのろのろと立ち上がり
宴の準備の邪魔にならぬよう王宮の隅に集まる
「ぷぷっ、シルさんが王様だって」
「笑っちゃ悪いよ」
そう言いながらジーンも笑いを堪えるのが辛そうだ
「王さまなるの?」
ラピがシルトを見上げながら聞くと彼は即答する
「いやいや、なるわけ無いでしょ、こんな知らん国でいきなり」
「そう?どんな国でも王だよ?それなりの価値はあると思うよ」
ジーンは冗談なのか本気なのか判らないからかうような微笑で言う
「だからこそだよ、僕は柄じゃない」
「ならないの?」
サラが少し不安げに再度聞いてくる
「だからならないって、そもそも常闇が王の証ってなんなんだよ」
シルトはこの訳が解らない状況に苛立つ
だが、サラは少しばかりホッとしているようだった
「その紋章がこの国と一致するし、多分王族の証なんだろうね」
ジーンがここまでに拾った情報を掻い摘み、冷静な分析を口にする
「で、それを2つも持ってるシルさんは王様って事なんじゃない?」
「2つって・・・鎧と盾って事?」
「うん、それはセットの物だと思うよ・・・それと、あの女王がつけてたマントもね」
ジーンがチラッとバステトに視線を向ける
魔力のみが見える彼女の眼にはバステトの身につけるマントはこう見えていた
暗闇の中でも尚黒く輝く漆黒、それはまるで常闇のようだと
「あのマントがねぇ・・・」
シルトもバステトを見てみるが、彼にはただの黒いマントにしか見えなかった
「あのマント、シルさんの鎧や盾より凄い物かもよ
あれから出てる魔力量がシルさんの鎧や盾とは比較にならないから」
「マジか」
「でも、もしかすると違うかもだけどね・・・」
ジーンが言葉を濁す
「どういう意味?」
一瞬迷ったジーンは目を閉じて考えてから口を開く
「装備者次第かもしれないってこと
シルさん魔力空っぽだから性能を引き出せてないだけかもって話よ」
「なるほど・・・」
そう言われてシルトは悔しさで拳を握り締める
なぜ自分には普通程度も魔力が無いんだ、と
もし自分にそれがあればもっと強くなれるのかもしれない
そうすれば仲間を守る力になる、なぜ自分にはそれがないんだ、と
震えるほど握り締めていた拳にそっとジーンの手が重ねられる
「気持ちは解るよ、私もそうだった」
先ほどジーンが言葉を濁した理由はそれだろう
その辛さを理解しているからこそ彼女は言いにくかったのだ
それを理解したシルトは拳を緩めて普段の笑顔に戻る
「・・・・ありがと
さて、王の件は置いといて、宴を楽しもう」
ちょうど宴の準備が終え、彼等の持っていた武器や荷物は侍女に預ける
そして各々が案内された席へと着いた
肉や果物、それとこんな砂漠の真ん中でどう手に入れたのか判らないが魚料理まである
様々な酒が並び、まさに宴というのが相応しい豪華な食事が並んでいる
「すっごいな」
「ちょっと臭いかも・・・」
シルトの隣に座ったサラがしかめっ面をしている
その隣にいるシャルルも同様だった
彼女達は普通の人間より嗅覚も優れている
そのため、香辛料が強めのこの国の料理は少し刺激が強すぎたようだ
「うっ・・・で、でも美味しそう・・・」
シャルルが臭いにやられながらも美味しそうな見た目に心が揺らいでいる
「食べていいのー?」
ラピが遠慮なしにそんな事を聞くと「もちろんです」とバステトは答える
それからしらばくは楽しい食事の時間が過ぎる
サラとシャルルも臭いを我慢して口に入れた料理が予想以上に美味しかったらしく
今では普通にパクパクと食べている・・・鼻が慣れただけかもしれないが
皆がある程度食事を終え、一休みしている頃
バステトがナビィに耳打ちをする
頷いたナビィは早足にその場を去り、少しして戻ってくる
「ハーフブリードの方々
この度は国宝である死者の書を取り戻して頂き、真に感謝致します」
バステトは深いお辞儀をして、ナビィに目で合図をする
ナビィは大きな包みを持っており、それを大切そうに両手で掲げ、彼等の前に跪く
「メンフィスからの礼に御座います、どうか御納めください」
シルトが受け取り、かかっていた白い布をどかす
すると、そこには1本の剣があった
「不思議な形の剣だな」
剣と聞いてサラが覗き込む、彼女も剣士だ、剣には興味があるのだ
「何か仕掛けがありそうだね?」
サラの予想は的中していた
ナビィがこの剣について説明を始める
「そちらは遠い異国で手に入れた魔法剣なるもので御座います」
「魔法剣?」
「はい、こちらの筒を柄の部分に装填しますと魔法が発動致します」
そう言って6つの筒を両手で掲げる
それを受け取ったサラが不思議そうに明かりに透かしたりして見ていた
「で、魔法発動するってのはどんな感じに?」
「それは是非お試しください」
「ふむふむ、魔法っていうとサラの方がいいかな?サラやってみなよ」
「え?私?いいの?」
シルトから剣を受け取り、6つの筒の中から赤いものを選び装填する
キュポンッ
「これでいいの?」
「はい、最後にこちらを力強く叩いてください」
「ここ?」
ガチャンッ!・・・・・・・・シュゥゥゥゥッ
剣から煙が少し上がり、そして一気に発火する
「わっ」
驚いたサラは少し距離を取ろうとするが、自分の手にあるものからは逃げられない
落ち着きを取り戻したサラは燃え盛る剣を3回ほど振ってみる
ブオンッ ブオンッ ブオンッ
「あ、これいいかも」
剣の軌跡に炎ついてくるようだった
「見た目より軽いし、私でも片手でいけそう」
気に入ったようで、何度か素振りをしている
「ちなみにこれ何製なの?スチール・・・じゃないよね?」
「はい、そちらはミスリルとウーツ鋼と言われる金属で出来ております」
「ウーツ?」
シルトその疑問にはジーンが答えた
「別名ダマスカス鋼、独特な帯状模様が特徴の硬い金属だよ」
「ミスリルとどっちが上なん?」
「どっちとは言いにくいけど、手入れ不要で錆びないよ、それ」
「なかなかいいね」
そうこうしていると、サラの素振りに客が集まっていた
彼女の鋭い剣技に魅せられ、侍女や兵が魅入っていたのだ
「気に入った?」
「うん、これもらっていいの?」
「もち」
シルトが笑顔を向けるとサラは照れくさそうに頬を赤らめる
「筒の方の予備を御納めください」
ナビィが18本の筒をサラに手渡し、それ用のホルダーも同時に貰う
それを右脚の太ももに巻きつけ、ズレないか確かめている
「いいなー、私にも何かないかなー」
シャルルがサラを羨ましそうに見ていると、ナビィが次の包みを持ってくる
「こちらも御納めください」
そう言って持ってきた物は小さな木の板だった
表面には文字が彫られており、何やら魔法が掛かっているようだ
「水の護符に御座います、そちらがあれば暑さなど無いに等しくなります」
『欲しいーーーーーーーっ!私が欲しいっ!!』
シャルルが真っ先に飛びつき、3つある護符の1つを捥ぎ取る
「サラはこれも貰っておきな」
シルトが1つをサラに手渡す
「私ばかりいいの?」
「暑いのダメっしょ」
「・・・うん」
「なら、遠慮しない」
「うんっ!」
最後の1つはラピが貰い、ウェールズの首から下げる事にした
どうやらくっついていれば加護はあるようで、それでも問題無かった
「それでは、最後にもう1つ・・・」
バステトが立ち上がり、彼等の元へと歩いてくる
ゆっくりと羽織っている物を外し、両膝を折り、シルトの前に跪く
「常闇の外套(がいとう)です、御納めください、我が王よ」
「またそれか・・・」
シルトが困っていると、ジーンが耳打ちしてくる
「受け取っちゃいなよ、"それ"は凄い物だよ」
「いやいや、受け取ったら王確定じゃん、それはまずいって」
「逃げちゃえばいいじゃない、ふふ」
ジーンが小声で笑い、面白がってるな?と思ったシルトは話をやめる
「とにかく立ってください、王のするべき事じゃないですよ」
そう言ってシルトはバステトを立たせ、マントは彼女に押し返す
「これを受け取れば僕は王にならなきゃいけない、だから受け取れない」
「そう・・・・ですか・・・・」
宴の席は一気に静まり、辺りには微妙な空気が流れる
しばし静寂が辺りを支配し、誰かが食器をカチャリと鳴らした事により破られる
『この者達を捕らえよっ!』
バステトの声が響き、即座に近衛兵が動く・・・その中にはナビィの姿もあった
ナビィは腰から円月輪(チャクラム)を取り出し構えている
チャクラムとは円形の刃で出来た輪である
遠方の地で生まれたこの武器はこの辺りで使っている者はいない
「おいおい、冗談だろ」
シルトが皆を庇うように前に立つ
ハーフブリードは宴の前に武器や荷物を預けている
丸腰の彼等には抵抗など出来様はずがない
少なくともメンフィスの人間はそう思っていた
・・女・・・殺るか?
そんな声が響いていた、それはジーンの頭の中だけで、だ
声の主はアスタロト、三大悪魔王の1柱である
ジーンと融合したアスタロトは時折こうやって声をかけてくる
6000年も閉じ込められていたせいか、たまに煩いくらいだが
この存在の力を誰よりも知っているのはジーン本人である
膨大な知識、魔力、絶対的な力を有している事は間違いない
・・アナタの力を使えば私が死ぬじゃない
・・すぐに元に戻してやるぞ?
・・それを繰り返せば私の肉体が持たないの
・・人間とは何故そうも弱いのだ、面倒な
しかし、このままではお前達は全滅だろう?代われ、我が殺ってやろう
・・お断り、そうやって私を乗っ取るつもりでしょ?
・・お前程度の身体を奪えないとでも思っているのか?
声だけだがその威圧感に身震いする
アスタロトの言う事は事実だろう
この存在がやろうと思えば出来ない事など無いのだから
・・他に策はないの?
・・今のお前では魔力を使えば肉体は弾け飛ぶ
それが嫌だと言うのならば"それ"で殴ればよいではないか
・・障壁で?
・・あぁ、使い方は教えてやる
・・それでこの人数いけるの?
・・問題ない、この程度の羽虫は数に入らん
・・分かった、教えて
睨み合いが続いていた
数分のことだったがそれはひどく長く感じた
シルトは預けた剣と盾の位置を確かめながら必死に頭を使って策を練っている
だが、この状況を打破できる案が浮かんでこない
仮にだが、誰かが傷つく事を許容すれば突破は可能だ
そんなものを策と呼んでいいのかは解らないが、やれない事はない
しかし、シルトがそんな策を実行するはずが無かった
彼にとって仲間が1番大事なのだから・・・
彼が悩んでいると後ろにいたジーンがシルトの横を通り抜け前へと出る
「ジーンさん、危ないって」
「大丈夫、任せて」
僅かに微笑みながらジーンは更に1歩前へと出る
『ジーン!"あれ"使ったら許さないからっ!』
シャルルが言う"あれ"とは悪魔のことだ
アムリタで悪魔召喚を行ったジーンの肉体は内側から破裂していた
あの時ジーンは確実に死んでいた、それは間違いない
なぜか巻き戻るように再生していったが、あんなものを許せるはずがなかった
「わかってるよ、安心して」
そう言う彼女はとても冷静で穏やかだった
シャルルはその表情で納得し、歯を見せニカッと笑う
「おしっ!やっちゃえジーン!」
シャルルの声が響くと、バステトの近衛兵達が一斉に構える
この兵達は全員女性で構成されている
それぞれが独特な武器を持っている、中には鞭や鎌などもいた
彼女達はある1つの民族の者達だ、ナビィは彼女達の隊長を務めている
それはナビィがラルアースの外の世界では異常なほど魔力が高いためである
高いと言ってもラルアースでは高位魔法使いくらいなのだが・・・
「シルさん下がって、危ないよ」
「おっけ」
ジーンの言う通りシルトが1歩下がると、彼女は両手を大きく広げる
その両手を胸の前でパンッと合わせる・・・
すると激しい衝撃波が全方位に向けて放たれた
「ぶあっ」
予想していなかった衝撃にシルトの身体が後ろへと吹き飛ばされる
背後にいたサラ・シャルル・ラピを巻き込み、彼女達を下敷きにして倒れ込む
「シルさん重い!痛い!」
「痛い痛い痛い」
「ううっ」
「ご、ごめんごめん」
シルトが慌てて立ち上がり、彼女達を起こす
そして、ジーンの方へと目を向ける
「なる、そういう事ね」
シャルルが呟くように言うと、隣のサラとラピも頷いていた
彼女達が何を言ってるのか普段のシルトなら判らないだろうが
これは流石に解る・・・"あの時"と全く同じなのだから
「バ・・・バケモノっ!」
近衛兵の1人から洩れた言葉はジーンに向けてのものだった
そう、彼女は正真正銘の化物(アスタロト)である
ただ障壁で封じていた魔力を解放した、それだけなのだ
「今頃気づいたの?」
ジーンは悪戯っぽい笑顔で答える
ハーフブリードと旅をしてきたナビィはこんな化物と一緒にいたのかと恐怖していた
冗談じゃない、ただの化物なんてレベルじゃない
ただそこに存在するだけで殺されそうなほどの圧力だ
アムリタで感じた尋常ならざる魔力
その正体が彼女だったなんて微塵も気づかなかった
ナビィは震える膝を力一杯叩き、何とか自我を維持する
近衛兵達は魔法適性が高い者が多い
だからこそ解るのだ、ジーンの尋常ならざる魔力の波が
肉眼でも確認できるほど濃密で膨大だ
そのため、彼女達は立っている事で精一杯の状態だった
『う、うわああああっ!!』
動けない近衛兵に痺れを切らし
錯乱した兵の1人がジーンに向けて槍を構えて突進をする
それに続くように雄叫びを上げながら4名の兵が続いた
ジーンは至って冷静に右腕を振るう、その瞬間である
ゴッ!
5人の兵達は見えない何かにぶつかり、一瞬で壁へと激突する
しかし、それだけでは終わらなかった
壁は巨大な手がぶつかったように手の形に吹き飛び、大穴があく
見えない手と壁に挟まれた兵達は嫌な音を上げて潰れていた
「見るなっ!」
シルトがマントでサラ、シャルル、ラピの視界を遮る
ジーンが何をしたのかは判らない、だがこの光景は見せたくない、そう思ったのだ
「あ・・・あぁ・・・・」
近衛兵の1人から恐怖による言葉にならない声が洩れる
一瞬だった、たった一瞬で5人の兵が原型すら解らぬほど破壊された
その光景を見た誰もが恐怖していた、もちろんバステトもその1人である
「何と・・・恐ろしき力・・・」
ジーンは肩の調子を確かめるように肩を回し、首をコキッコキッと音を鳴らす
その瞬間、内から激しい痛みが押し寄せてきた
「げほっ!・・・・痛っ」
・・魔力は使ってないはずなのになんで?
・・愚か者が、障壁を操作する時に力んで魔力を放出しておったわ
・・難しいんだけど、どうにかならないの?
・・慣れろ
・・はぁ、それしかないか
口元の血を袖で拭い、ジーンは構える
その動きに合わせてメンフィスの誰もが1歩後ずさる
再び静寂が支配し、睨み合いになると思った時
「待って、待って、ジーンさん」
背後のシルトが彼女に声をかける
「もう充分だよ、これ以上争う意味がない」
ジーンが構えを解いてシルトを見ると、メンフィス側から安堵の声が洩れる
シルトが前へと出て、皆に聞こえるように声を大きくしていった
「もう解ったっしょ、これ以上はお互い無益だ」
『そうはいくかっ!!!』
叫んだのはバステトだった
感情を露わにし、涙ぐむ瞳を真っ直ぐ向けて彼女は続ける
『この国には必要なのだ!その鎧が!盾が!
どれだけ犠牲が出ようとも、取り戻さなくてはならぬのだっ!!』
「なんでそこまで固執するんですか」
シルトの問いにバステトは我慢していた涙が溢れる
「私はこの国を任されている、王だ
諦める訳にはいかないのよ、それは判るでしょ?
常闇が・・・王の力があればオアシスは守れる、民は救われるのよ」
涙を流す女王にかける言葉を失い、彼女の泣き声だけが悲しく響いていた
「話を聞く必要がありそうだね」
ジーンがシルトにそう言うと、彼は黙って頷いた
少ししてメンフィス側も武装を解除し、話し合いの場が設けられた
「で、オアシスがどうのって何の話ですか」
大きなテーブルを挟み対面したハーフブリードとメンフィス勢
まだ緊張感は続いているが、話し合いが出来る相手という事に互いに安堵していた
「今、この国は存亡の危機に瀕しております」
俯いたまま、バステトは続ける
先ほどまで泣いていた彼女の目は赤くなっていた
「我らメンフィスは3つのオアシスを有していました
その1つは枯れ、1つは枯れかけております」
枯れかけている湖なら来る時に目にしている
このメンフィスに隣接している湖がそれだ
「最後のオアシスがあれば私達は生きる事が出来ます
しかし、それを奪おうとする者達がいるのです」
「誰ですか?」
「ヒッタイト、隣国である傭兵国家とも呼ばれている国です」
「戦争・・・って事ですか」
「はい、まだ開戦はしておりませんが、それも時間の問題
大地が裂けたあの日より、我らメンフィスもヒッタイトも水不足なのです」
重い空気が流れる
ナビィ達の表情を見ればどれだけ切羽詰った状況なのか手に取るように判った
「大地が裂け、1つのオアシスは裂け目に巻き込まれて消えました
それから私達は2つのオアシスで国を支えてきました
ですが、近頃このメンフィスに隣接するオアシスに変化が起きました
水位が急速に減っていったのです」
「穴が開いたのね」
ジーンはここへ来る時に湖を見て気づいていた
「はい、ですがまだ最後のオアシスがあります
あれさえあれば、苦しいですが国は何とかなります」
「それが奪われそう、と」
「はい・・・」
バステトの瞳には再び涙が溜まってゆく
「で、なぜ常闇がいるんですか」
「それは所有しているシルト様が1番解るのではないですか?」
そう言われてシルトは考えるが、それほどの力があるとは思えなかった
確かに常闇の鎧や盾は桁違いの性能は持っている
だが、所詮は個人だ、戦争となると大した力ではない気がしてしまう
その素直な感想をシルトは口にした
「個人がどれだけ強くても、戦争じゃ大差はないですよ」
「本当にそう思いますか?」
バステトの質問の意図が解らない、何を言わせたいんだ?
「質問を変えます・・・ジーン・ヴァルターさんでしたか
彼女1人で戦局は大きく変わると思いませんか?」
「確かに」
これにはシルトも納得だった
ジーンさんがいれば大概の事は何とかなってしまう気がする
しかし、そこで1つの疑問が生まれた
「常闇にジーンさんほどの力は無いですよ?」
シルトの知る限り、この鎧と盾にそこまでの力は無い
反射能力は使い方によっては大きな力にはなるだろうが
それでも戦局をひっくり返すほどとは到底思えなかった
「シルト様は常闇の本当の力を知らないのですね・・・・」
「本当の力?どういう事ですか」
さっきジーンに言われた言葉が脳裏をよぎる
自分は常闇の性能を引き出せていないだけかもしれないという事を・・
「伝説にはこうあります」
常闇の王、闇を支配する者
一騎当千の力を有し、彼の王は1人で数多の国を飲み込んだ
闇は王に味方し、闇は王の手足だった
その剣を振るえば大地は裂け、その盾は全てを払い除け
その鎧は何人も貫けず、その衣は闇と共にあった
常闇の王、それ即ち絶対王、神をも殺す力を持つ者なり
「神を殺すって・・・大げさな」
シルトの感想はそれだった
幾らなんでも言いすぎだ、そんな力がある訳が無い
「嘘ではありません!現にメンフィスは常闇の王が1人で作った国なのです」
「いや、伝説でしょ?流石にそれは・・・」
真に受ける方が馬鹿だ、シルトはそう思っていた
だが、バステトの目は真剣そのものだった
「では、伝説が真だと1つ御見せします」
そう言い、立ち上がったバステトはマントを大きく広げる
刹那、彼女の羽織っていたマントは完全な闇に変わる
布のようだったものが死の神のような闇へと変貌したのだ
「先に言っておきます、これからする事は敵対行為ではありません」
彼女はそう言って闇で自身を包むようにする
すると、彼女の姿は一瞬で消え、闇もまた消えた
「うおっ!?」
「わー、消えたー!」
「すごーーい!」
「ほへー」
ハーフブリード達は驚き、歓声を上げている
だが、ジーンだけは魔力の瞳で探っていた
瞬間的にバステトを包む常闇のマントから高魔力が放たれ、忽然と消えた
手品の類ではない事は確かだが、どういう能力なのだろう
まさか瞬間移動?・・・無いか、ありえない
そんな魔法があるなら本当に国すら滅ぼせる
「これで少しは解っていただけました?」
ジーンの真後ろ、すぐ近くで声がする
ゾクッとなったジーンは瞬時に振り向く・・・そこにはバステトが微笑んでいた
「嘘・・・」
思わずジーンの口からそんな言葉が洩れた
瞬間移動、そうとしか思えない現象が目の前で起きたのだ
魔力の流れは見ていた、彼女は完全に消えていた
人や物が移動すればそこには僅かでも魔力の乱れが起きる
それが一切無かったのだ
「御覧の通り、この外套は闇と共になれます
闇から闇へ、影から影へと移動できるのです」
「無茶苦茶だな・・・」
シルトがゴクリと唾を飲み込み、常闇の力の片鱗を感じていた
もしかすると自分の鎧や盾にもこんなとてつもない能力があるのでは・・・
そう思うと震えずにはいられなかった
「私は日に1度しか使えないのですけどね」
と、バステトは青白くなった顔ではにかむ
どうやら消費魔力は凄まじいらしい
ナビィの肩を借り、バステトが席に戻ると話は続けられた
「常闇の力があれば、この戦争を終わらせられます
それは判っていただけたでしょうか?」
「まぁ・・・少しは」
「ならば、その鎧と盾を返還してくださいませんか?」
「それは・・・」
シルトがその後を言う前に叫んだ人物達がいた
『『それは絶対ダメ!』』
二人の声がハモり、二人は顔を合わせて微笑み合う
それはサラとシャルルだった
「シルトさんにとって大切な物なんです」
「うん、シルさんの思い出の品なの、だからダメなんだ、ごめん」
彼の思っていた事を二人が代弁してくれた
それにはちょっと涙腺が緩みかけるが、この場では我慢する
「二人とも・・・ありがと
聞いた通りです、これは譲れません」
「そう・・・ですか・・・」
話は平行線のようだった
結局お互い譲れないものなのだ
だが、そんな状況に1つの案が降りてくる
「なら、私達がその戦争を終わらせるってのはどうかしら?」
「ちょっ!」
シルトが立ち上がり、発案者であるジーンに食って掛かろうとするが
ジーンはそれを手で制す
「と、言いますと?」
「私達が参戦して戦争を終わらせる
それで常闇は私達の物、それでどう?」
バステトは考える、先ほどのジーンの力を知らなければ何を馬鹿な事を一蹴りできた
だが、あれを見た後では彼女なら本当に出来る気がしてくる
確かに常闇は大事だ、しかし、今はそれよりも国の存亡が大事である
彼女は深い深呼吸をしてから真っ直ぐシルトを見て言う
「わかりました、その条件を飲みましょう」
「ちょ、ちょ、待って待って、僕は認めないぞ!」
「シルさんは黙ってて」
ジーンがまとまり掛けているのを壊す気かとシルトを睨む
「は?ふざけんなよ!戦争なんて行かせるかよ!」
だが、シルトはそんな眼など気にせず怒りを露わにした
『みんなに何かあったらどうすんだよ!ふざけんなっ!』
シルトが力一杯テーブルを叩き、激しい音が響く
その音にサラ、シャルル、ラピがビクッとなった
こんなに怒るシルトを見た事がなかった
だが、彼女達も黙っていられなかった
「今回はシルさんが黙った方がいいよ」
そう言ったのはシャルルだった
「うん、私もジーンさんに賛成・・・かな」
サラもそれに続いた
「それで丸く収まるみたいだし、私も賛成かなー」
ラピまでもそれに続く
「・・・・・」
「じゃ、話を進めるよ?」
ジーンが確認を取るように言うと
「・・・・待てって」
シルトは静かに、だが怒りが滲み出るような低い声で言う
「納得できるわけないだろ、皆が危険に晒されるのなんて」
「なら、白黒ハッキリさせようか、シルさん」
ジーンが顎をクイっと動かし、先ほど出来た大穴の方を示す
「わかった」
そして、二人は大穴から外へと出てゆき、皆がそれを追う
シルトもジーンも普段見せない顔をしていた
その両者の表情に、サラやシャルルやラピは少し涙目だった
シルトは剣と盾を侍女から捥ぎ取り、抜刀する
ジーンは指をポキポキと鳴らし、手足を振り準備をする
譲れないものがある二人の喧嘩が始まろうとしていた
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