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第1章 護符工房アルテスタの一員として
第8話 試験業務
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「牟礼さん、標さん、おかえりなさい……あら? 交野さん。いらっしゃいませ、一緒だったんですか?」
練馬駅から徒歩で数分、ただただ会話もないままに歩き、護符工房アルテスタの地下1階に戻ってきた牟礼さんと標さん、そして俺を出迎えたのは、デスクに座っている間渕さんだった。
アルテスタの工房は練馬区桜台に位置するものの、桜台駅よりも練馬駅から歩いた方が実は近い。駅と駅の間もそれほど離れていないため、一駅分多く乗るくらいは訳がないとのことだ。
牟礼さんが不機嫌な表情を隠さないまま、俺を親指で指し示す。
「池袋で出たアイアンゴーレムを片付けていたら、こいつがいた。うちの内定者だっていうから一緒に連れてきただけだ」
「学校帰りだったみたいでねー、ちょうどよかったよ」
アイアンゴーレムから回収した素材の袋を床の上に下ろしながら、標さんがにこりと笑う。
所在なさげに鞄と剣袋を持ったままの俺を見つつ目を見開いた間渕さんだが、ふぅ、と小さくため息をつきながら椅子から立ち上がった。
「分かりました。彼の面倒は私が見るように秋津さんから言われていますので、お二人はお二人の仕事をしてください」
「……あぁ」
「よろしくね、間渕さん」
間渕さんの言葉に頷きを返して、ロッカー横の棚にそれぞれの武器をしまった牟礼さんと標さんが、デスクに座る――かと思いきや。
牟礼さんは踵を返して試験課のフロアから出て、螺旋階段を登っていく。仕事をする、とは一体。
口をぽかんと開いたままの俺が、デスクに座ろうと椅子を引く標さんに視線を向けると、パソコンの電源ボタンを押し込んだ標さんが肩をすくめた。
「大丈夫、牟礼さんのあれはちゃんとした仕事だから。
勿論ちゃんとした報告書は文書ソフトで作って開発課に提出する。だけどざっくりした使用感や使った際の感触を、直接開発した人にフィードバックするのも、試験課の大事な仕事なんだ」
「ってことは、牟礼さんは開発課に報告に行ったってことっすか……?」
目を見開いた俺の言葉に、頷きつつにっこり微笑む標さん。間渕さんも腕を組みつつ首肯している。
「歯に衣着せぬ率直な意見を、現場も求めていますからね。そういう仕事について、牟礼さんは適任ですから」
「まぁ……あの人なら容赦なく意見を言いそうっすけど……」
あんまりにも率直すぎて乱暴な意見を言って、開発課の人を怒らせたりしないのだろうかと、不安になる俺であった。
ともあれ、折角こうしてお邪魔したのだからやるべきことをやらないとならない。俺は剣袋を下ろして居室の隅に置くと、鞄からノートとボールペンを取り出した。
「と、ともかくとして、間渕さん、指導のほど、よろしくお願いしまっす!」
「分かりました、まずは試験課の仕事について大まかに説明します。こちらに来てください」
フロアにあるプリンターに印刷されていた数枚の印刷物を手に取った間渕さんが、入り口で俺を手招きする。
その手招きに従ってノートとボールペンを手にそちらに行くと、どうやら間渕さんは下に降りていくらしい。
螺旋階段を下りていき、トイレの前を通ってドアを開けたそこは、シミュレータールームだ。
中に入った俺がドアを閉めたことを確認すると、間渕さんは手に持っていた印刷物を、俺に手渡してくる。
「それでは、試験課の仕事がどういうものか、簡単に解説します。渡したスライドの一枚目の図を見てください」
その言葉を受けて、俺は用紙の一枚目に視線を落とす。そこにはベン図のように、三つの円が色分けされて描かれていた。
それぞれの円に記された文字は、「試験」「記録」「報告」。
間渕さんがゆっくりと、言葉を選びながら話し始める。
「試験課の仕事は、何も試作品のテストを行うばかりではありません。
試験を実施したその結果を詳細、かつ正確に『記録』すること。その結果を開発課、ならびに経営陣に誤りの無いように『報告』すること。
この三つの業務が噛み合うことで、試験課の仕事は成り立っています」
「試験、記録、報告……」
反芻するように呟く俺に、間渕さんはこくりと頷くとシミュレーターの電源を入れた。鈍いノイズと共に、大きな画面内に柱を模したトークンが表示される。
シミュレーターに繋がるキーボードを操作していくたびに、シミュレーター内のトークンが大きくなったり、遠くに移動したり、さらには画面内に護符の名称が表示されたりしている。
一通りの設定を済ませたところで、シミュレーターの画面から視線を外した間渕さんが、再び口を開いた。
「護符の試作品の試験には二種類あります。
一つが、こうしてシミュレーターを用いて術式を段階的にテストしていく『内部試験』。シミュレーターテストとも言います。
もう一つが、護符の形になった試作品を実戦の中で魔物相手に使用してテストする『実装試験』。モンスターテストとも言います。
シミュレーターテストに関しては開発課でもシミュレートツールを用いて行っていますが、試験課でもテストを行って複合的な視点から確認することで、より確実に護符の術式を仕様に近づけることが出来るわけです」
「そうっすね……実戦で使う前の段階で、思ってたのと違う動きをしてたら、まずいっすもんね」
しみじみと呟く俺の言葉に、間渕さんは大きく頷いた。
開発課でノーチェックな護符が試験課に回ってくることなど、本来はあり得ない。開発課の側でも術式が想定通りの動きをしているか、テストをするのは当然だ。
しかし作成した側がテストをすると、どうしても先入観とか思い込みとかで見落としが起こり得る。なので試験課がテスターとなって、仕様通りの動作をしているか、段階を踏んでテストをするというわけだ。
護符の効果を発動させる術式は、いわばコンピューターのプログラムのようなものだ。いろいろな機能を実現させる術式が複雑に関わりあって、一つの効果を作り上げている。
一見単純なように見えるシンプルな効果の護符にも、何重にも編み込まれた術式があるのだ。
その点を説明し終わったところで、間渕さんが再びシミュレーターの画面に顔を向けた。右手の指先がエンターキーへと伸びる。
「交野さん、今から一つ、護符の内部試験を走らせます。よく見ていてください」
「う、うっす……!」
返事を返した俺は、凝視するようにシミュレーター画面に目線を向けた。効果の一挙手一投足を見逃すまいと、心の中でそっと呟く。
そして。
「始めます」
間渕さんの短い声とともに、エンターキーが叩かれる乾いた音がシミュレータールームに響いた。
刹那、柱型のトークンを中心に爆発が発生する。爆風の衝撃こそ届くことは無いが、凄まじい爆音がスピーカーから響き渡った。
思わず耳を塞ぐ俺だが、視線を画面から外すことなく正面を見据え続ける。やがて画面に、後方に倒れたトークンの画面が映し出された。
「試験終了です。
交野さん、今の試験結果を見て、何か気付いたことはありましたか?」
「え?えーっと……」
こちらに椅子を回して淡々と話す間渕さんの言葉に、数瞬言葉に詰まる俺だ。
ざっと視線をシミュレーターの画面に走らせ、情報を収集する。
トークンとの距離、五十メートル三十センチ。発動効果、爆発。効果発動回数、一回。効果発動点、五十メートル。
効果半径、四メートル。発生音量、百二十デシベル。衝撃波風速、百七十キロメートル毎時。
得られた情報をざっくりと頭の中で整理して、俺は口を開いた。
「この試験、トークンの目の前で爆発を起こしたわけっすよね。
顔のすぐ近くで爆発を起こして、その高熱とか衝撃波とかでダメージを与えるのと同時に、トークンを吹き飛ばすことでダメージを与えることを目的とした感じで。
あとはあれっすか、音もすごく出ているし、顔の目の前で爆発を起こしてるっすから、それを顔の真正面で発生させられてるんで、目と耳へのダメージも凄いんじゃないかと……」
「ふむ、初めてにしてはなかなかうまくまとめられていますね」
俺の言葉に、間渕さんは顎の下に手をやりながら声を発した。
その発言に俺がほっと胸を撫でおろしていると、間渕さんが俺にぴしっと指を突き付けてくる。
「しかし交野さん、試験の結果を表現するにあたり、最も重要なことを言い忘れています。
『試験開始直後、爆発が一度発生した』ということです」
「え……」
間渕さんの言葉に、俺は目を丸くした。
試験開始直後、爆発が一度発生した。その通り、あまりにも当然すぎる話だ。これを欠いたところで意図が伝わらないとも思えない。
しかし間渕さんは、俺に突き付けた指を持ち上げながらきっぱりと言ってのける。
「護符の内部試験で最も重要なことは、『護符が想定通りの効果を発揮するかを確認すること』です。
今回シミュレートした爆発の護符は、『狙った箇所を起点に爆発を発生させる効果』を持つ護符です。もっとも重要なことは、この『爆発を発生させる』という効果そのもの。
爆発でトークンにどうダメージが及んだか、どういう効能を発揮するかはまず置いておいて、爆発がきちんと、設定したタイミングで発生したかどうか。
これが内部試験において、一番最初に確認するべきことです」
「な……なるほど」
間渕さんの解説に、俺は唸るしかなかった。
効果がきちんと、想定通りに発生するかどうか。確かにそこが抜けていたら、護符を作る意味はない。もっと言うなら実戦でテストする意味はない。
「渡したスライドの二枚目に、試験の因子表を載せています。この因子表に、発動条件、代入数値、発動効果、判定結果を記載して試験を行います。
今の試験でいえば、発動条件が即時、代入数値が五十メートル、発動効果が爆発、判定結果がOK、OK、OK、となるわけです。
入社した後にもこの因子表は使いますので、使い方をよく覚えていてください」
「うっす、ありがとうございます!」
間渕さんの説明を受けて、こくりと頷く俺。
その後もシミュレーターを用いた内部試験の概要を説明されながら、俺は試験課の仕事の奥深さを噛み締めるのだった。
練馬駅から徒歩で数分、ただただ会話もないままに歩き、護符工房アルテスタの地下1階に戻ってきた牟礼さんと標さん、そして俺を出迎えたのは、デスクに座っている間渕さんだった。
アルテスタの工房は練馬区桜台に位置するものの、桜台駅よりも練馬駅から歩いた方が実は近い。駅と駅の間もそれほど離れていないため、一駅分多く乗るくらいは訳がないとのことだ。
牟礼さんが不機嫌な表情を隠さないまま、俺を親指で指し示す。
「池袋で出たアイアンゴーレムを片付けていたら、こいつがいた。うちの内定者だっていうから一緒に連れてきただけだ」
「学校帰りだったみたいでねー、ちょうどよかったよ」
アイアンゴーレムから回収した素材の袋を床の上に下ろしながら、標さんがにこりと笑う。
所在なさげに鞄と剣袋を持ったままの俺を見つつ目を見開いた間渕さんだが、ふぅ、と小さくため息をつきながら椅子から立ち上がった。
「分かりました。彼の面倒は私が見るように秋津さんから言われていますので、お二人はお二人の仕事をしてください」
「……あぁ」
「よろしくね、間渕さん」
間渕さんの言葉に頷きを返して、ロッカー横の棚にそれぞれの武器をしまった牟礼さんと標さんが、デスクに座る――かと思いきや。
牟礼さんは踵を返して試験課のフロアから出て、螺旋階段を登っていく。仕事をする、とは一体。
口をぽかんと開いたままの俺が、デスクに座ろうと椅子を引く標さんに視線を向けると、パソコンの電源ボタンを押し込んだ標さんが肩をすくめた。
「大丈夫、牟礼さんのあれはちゃんとした仕事だから。
勿論ちゃんとした報告書は文書ソフトで作って開発課に提出する。だけどざっくりした使用感や使った際の感触を、直接開発した人にフィードバックするのも、試験課の大事な仕事なんだ」
「ってことは、牟礼さんは開発課に報告に行ったってことっすか……?」
目を見開いた俺の言葉に、頷きつつにっこり微笑む標さん。間渕さんも腕を組みつつ首肯している。
「歯に衣着せぬ率直な意見を、現場も求めていますからね。そういう仕事について、牟礼さんは適任ですから」
「まぁ……あの人なら容赦なく意見を言いそうっすけど……」
あんまりにも率直すぎて乱暴な意見を言って、開発課の人を怒らせたりしないのだろうかと、不安になる俺であった。
ともあれ、折角こうしてお邪魔したのだからやるべきことをやらないとならない。俺は剣袋を下ろして居室の隅に置くと、鞄からノートとボールペンを取り出した。
「と、ともかくとして、間渕さん、指導のほど、よろしくお願いしまっす!」
「分かりました、まずは試験課の仕事について大まかに説明します。こちらに来てください」
フロアにあるプリンターに印刷されていた数枚の印刷物を手に取った間渕さんが、入り口で俺を手招きする。
その手招きに従ってノートとボールペンを手にそちらに行くと、どうやら間渕さんは下に降りていくらしい。
螺旋階段を下りていき、トイレの前を通ってドアを開けたそこは、シミュレータールームだ。
中に入った俺がドアを閉めたことを確認すると、間渕さんは手に持っていた印刷物を、俺に手渡してくる。
「それでは、試験課の仕事がどういうものか、簡単に解説します。渡したスライドの一枚目の図を見てください」
その言葉を受けて、俺は用紙の一枚目に視線を落とす。そこにはベン図のように、三つの円が色分けされて描かれていた。
それぞれの円に記された文字は、「試験」「記録」「報告」。
間渕さんがゆっくりと、言葉を選びながら話し始める。
「試験課の仕事は、何も試作品のテストを行うばかりではありません。
試験を実施したその結果を詳細、かつ正確に『記録』すること。その結果を開発課、ならびに経営陣に誤りの無いように『報告』すること。
この三つの業務が噛み合うことで、試験課の仕事は成り立っています」
「試験、記録、報告……」
反芻するように呟く俺に、間渕さんはこくりと頷くとシミュレーターの電源を入れた。鈍いノイズと共に、大きな画面内に柱を模したトークンが表示される。
シミュレーターに繋がるキーボードを操作していくたびに、シミュレーター内のトークンが大きくなったり、遠くに移動したり、さらには画面内に護符の名称が表示されたりしている。
一通りの設定を済ませたところで、シミュレーターの画面から視線を外した間渕さんが、再び口を開いた。
「護符の試作品の試験には二種類あります。
一つが、こうしてシミュレーターを用いて術式を段階的にテストしていく『内部試験』。シミュレーターテストとも言います。
もう一つが、護符の形になった試作品を実戦の中で魔物相手に使用してテストする『実装試験』。モンスターテストとも言います。
シミュレーターテストに関しては開発課でもシミュレートツールを用いて行っていますが、試験課でもテストを行って複合的な視点から確認することで、より確実に護符の術式を仕様に近づけることが出来るわけです」
「そうっすね……実戦で使う前の段階で、思ってたのと違う動きをしてたら、まずいっすもんね」
しみじみと呟く俺の言葉に、間渕さんは大きく頷いた。
開発課でノーチェックな護符が試験課に回ってくることなど、本来はあり得ない。開発課の側でも術式が想定通りの動きをしているか、テストをするのは当然だ。
しかし作成した側がテストをすると、どうしても先入観とか思い込みとかで見落としが起こり得る。なので試験課がテスターとなって、仕様通りの動作をしているか、段階を踏んでテストをするというわけだ。
護符の効果を発動させる術式は、いわばコンピューターのプログラムのようなものだ。いろいろな機能を実現させる術式が複雑に関わりあって、一つの効果を作り上げている。
一見単純なように見えるシンプルな効果の護符にも、何重にも編み込まれた術式があるのだ。
その点を説明し終わったところで、間渕さんが再びシミュレーターの画面に顔を向けた。右手の指先がエンターキーへと伸びる。
「交野さん、今から一つ、護符の内部試験を走らせます。よく見ていてください」
「う、うっす……!」
返事を返した俺は、凝視するようにシミュレーター画面に目線を向けた。効果の一挙手一投足を見逃すまいと、心の中でそっと呟く。
そして。
「始めます」
間渕さんの短い声とともに、エンターキーが叩かれる乾いた音がシミュレータールームに響いた。
刹那、柱型のトークンを中心に爆発が発生する。爆風の衝撃こそ届くことは無いが、凄まじい爆音がスピーカーから響き渡った。
思わず耳を塞ぐ俺だが、視線を画面から外すことなく正面を見据え続ける。やがて画面に、後方に倒れたトークンの画面が映し出された。
「試験終了です。
交野さん、今の試験結果を見て、何か気付いたことはありましたか?」
「え?えーっと……」
こちらに椅子を回して淡々と話す間渕さんの言葉に、数瞬言葉に詰まる俺だ。
ざっと視線をシミュレーターの画面に走らせ、情報を収集する。
トークンとの距離、五十メートル三十センチ。発動効果、爆発。効果発動回数、一回。効果発動点、五十メートル。
効果半径、四メートル。発生音量、百二十デシベル。衝撃波風速、百七十キロメートル毎時。
得られた情報をざっくりと頭の中で整理して、俺は口を開いた。
「この試験、トークンの目の前で爆発を起こしたわけっすよね。
顔のすぐ近くで爆発を起こして、その高熱とか衝撃波とかでダメージを与えるのと同時に、トークンを吹き飛ばすことでダメージを与えることを目的とした感じで。
あとはあれっすか、音もすごく出ているし、顔の目の前で爆発を起こしてるっすから、それを顔の真正面で発生させられてるんで、目と耳へのダメージも凄いんじゃないかと……」
「ふむ、初めてにしてはなかなかうまくまとめられていますね」
俺の言葉に、間渕さんは顎の下に手をやりながら声を発した。
その発言に俺がほっと胸を撫でおろしていると、間渕さんが俺にぴしっと指を突き付けてくる。
「しかし交野さん、試験の結果を表現するにあたり、最も重要なことを言い忘れています。
『試験開始直後、爆発が一度発生した』ということです」
「え……」
間渕さんの言葉に、俺は目を丸くした。
試験開始直後、爆発が一度発生した。その通り、あまりにも当然すぎる話だ。これを欠いたところで意図が伝わらないとも思えない。
しかし間渕さんは、俺に突き付けた指を持ち上げながらきっぱりと言ってのける。
「護符の内部試験で最も重要なことは、『護符が想定通りの効果を発揮するかを確認すること』です。
今回シミュレートした爆発の護符は、『狙った箇所を起点に爆発を発生させる効果』を持つ護符です。もっとも重要なことは、この『爆発を発生させる』という効果そのもの。
爆発でトークンにどうダメージが及んだか、どういう効能を発揮するかはまず置いておいて、爆発がきちんと、設定したタイミングで発生したかどうか。
これが内部試験において、一番最初に確認するべきことです」
「な……なるほど」
間渕さんの解説に、俺は唸るしかなかった。
効果がきちんと、想定通りに発生するかどうか。確かにそこが抜けていたら、護符を作る意味はない。もっと言うなら実戦でテストする意味はない。
「渡したスライドの二枚目に、試験の因子表を載せています。この因子表に、発動条件、代入数値、発動効果、判定結果を記載して試験を行います。
今の試験でいえば、発動条件が即時、代入数値が五十メートル、発動効果が爆発、判定結果がOK、OK、OK、となるわけです。
入社した後にもこの因子表は使いますので、使い方をよく覚えていてください」
「うっす、ありがとうございます!」
間渕さんの説明を受けて、こくりと頷く俺。
その後もシミュレーターを用いた内部試験の概要を説明されながら、俺は試験課の仕事の奥深さを噛み締めるのだった。
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