ヤノフスキーの夜鷹は町を飛ぶ

八百十三

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第11話

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「ルスラーンさん、いいですか」
「うん?」

 一番街ナロリン通りの小さな酒場『プリズラック』で、一人飲む俺の背中に声がかかる。
 振り返れば、年若い獅子獣人の男性が立っている。その顔には見覚えがあった。三級エージェントのエゴール・シュクロフスキーだ。

「シュクロフスキーか。仕事の話か?」
「それもあるんですが……その、祖母の件で」

 そう話すエゴールの表情は、薄暗い店舗の中で見てもひと目で分かるくらいに暗い。
 当然といえば当然だ。なにしろ、ヤノフスキー市全体を騒がせた「光の家教会」並びに「クヴィテラシヴィリ伯爵家」の案件の、渦中にいた人物だ。そして彼の言う「祖母」とは即ち、先般せんぱん銃殺刑に処された、リリア・クヴィテラシヴィリのことである。
 それはもう、その言葉だけで色々と察するというものだ。

「あぁ、なるほど。まぁ、とりあえずは座れ。酒はどうする?」
「失礼します。それじゃ、『マゴロフ』を水割りで」

 すぐに俺が右隣の席を勧めると、彼は静かにそこに腰を下ろした。安いスプリングが軋みを立てて、彼の体重を受け止める。
 そうしてちらと俺の手元に目をやれば、この国で至極一般的に飲まれているウォッカのいち銘柄を指定する。「マゴロフ」は味わいがスッキリして、同時に刺すようなアルコールの刺激が心地の良い酒だ。水割りにすればアルコールの刺激が軽くなる分、シャープな味わいが際立つ。
 すぐに目の前に供された、水とウォッカが1対1になったトワイスアップ。氷のように無色透明なタンブラーを持ち上げて軽く口をつけると、すぐにエゴールはコースターの上にそれを置いた。俺に向かって、カウンターの板面に薄桃色をした鼻先が付くぐらいに頭を下げる。

「この度は……本当に、祖母の件で、ご迷惑をおかけしました」
「何を言う、俺に謝ることはないさ。むしろシュクロフスキーが迷惑をこうむっているだろう、いろいろと」

 しかし俺は、その心からの謝罪を受け取らない。受け取る理由がない。
 彼には申し訳ない話だが、彼の祖母以下一族郎党のやらかしを元手に、俺は多額の現金を手に入れた。彼に謝るのはむしろ、俺の方だと思う。
 それでも、エゴールは申し訳無さそうな表情を崩すことなく、再び水割りのタンブラーに手を付ける。

「はい、まぁ、そうなんですけれど……やっぱり、祖母を含め、母方の実家がこのヤノフスキー市に良くない影響を及ぼしていたのは、事実ですし。ルスラーンさんにも、扱いが難しい情報を、いろいろとご提供していたはずです」

 彼の言葉に、俺はいざ手をつけようとしていた、三杯目の「ジュラフスカヤ」のショットグラスに伸ばした手をピタリと止めた。
 そう言われると、俺も返す言葉がない。
 「光の家教会」の違法な寄進の蓄積もそうだし、その寄進の出処の情報もそうだ。クヴィテラシヴィリ家の使用人が市内各所の酒場や集会所に出入りしていた記録もそうだ。
 クヴィテラシヴィリ伯爵家は、リリアの監督の下、使用人に麻薬を持たせ、それを市内のあちこちの酒場や集会所に持って行かせて受け渡しをさせていた。ここまで彼女らが隠し通せたのも、一度に持ち出す量が少数で、場所もひとところに定めなかったからだ。
 俺自身、酒場には頻繁に出入りしているから、「市内の酒場で麻薬の裏取引が行われている」なんて噂は、前々から耳に入れていたのだ。実際にブツを手渡している現場も、見なかったわけではない。しかし、まさかこんな形で情報と情報が結びつくとは、思ってもいなかった。
 その麻薬の出処については、既にあたりが付いている。今頃、アリョーナやエメリヤンが探りを入れていることだろう。その根城の情報も、先日俺から彼女らに売り渡した。
 どれもこれも、扱いに細心の注意が必要な情報だ。それを適切に管理し、提供できなくては、俺の情報屋としての権威が失墜する。メモ書きを手渡すまで、気が気ではなかったものだ。

「まぁ、な。確かにクヴィテラシヴィリ伯爵家の絡む情報は、いろいろ売り先が悩ましいものも多かった。俺一人で抱え込んでいるには、随分とでかすぎる情報も、何個かあったさ」

 そう言いながら、俺は改めて「ジュラフスカヤ」のショットグラスを手に取る。そいつの中身を一息でぐいっと呷ると、ゆっくり息を吐き出しながら俺はエゴールへと視線を投げた。

「だが、その情報こそが俺の生活を支えているし、巨額の富を生んでいる。むしろでかいメシの種を多数提供してもらって、有り難いと思うくらいだ。今回の案件で俺がいくら稼いだか、知りたいか?」
「い、いや……大丈夫、です」

 俺の問いかけに、少し気圧されながらエゴールは首を振る。
 何しろ、あの二つの案件で俺は過去最大級に稼がせてもらった・・・・・・・・のだ。この先一年くらいは、ライターの仕事を休んでも十分に暮らしていけるほどの額が、俺の口座には入金されている。
 今回の二つの案件について、協力した情報屋にはルージア連邦エージェント協会、並びにアニシン領エージェント協会から、謝礼金が支払われている。それぞれの案件に関する成功報酬として1,000万セレー、そこに加えて提出した情報の重要度、確度によって追加報酬が上乗せされる。
 俺に関して言えば、物事の発端になった「光の家協会」への市内の貴族からの賄賂を暴いた件と、クヴィテラシヴィリ伯爵家の関与の情報、そして伯爵家の人間が麻薬の密売に関わっている情報を提供した件で、しめて総額1億セレーが口座に振り込まれているのだ。今から税金が怖い。
 口元をぺろりと舐めながら、俺はエゴールへとショットグラスを持ったままの右手の指を向けた。

「シュクロフスキーは、どうなんだ? お前の祖母が極刑に処された件について」

 俺の発言に、シュクロフスキーの目が大きく見開かれた。
 俺としても、少々意地の悪い問いかけをしているものだと思うが、やはり、当人の口から聞きたいものでもあった。
 リリアの処刑について。自分の祖母が、伯父が、実家の人間が犯罪者になった件について。
 その言葉に、彼は半分ほどに量の減った「マゴロフ」の水割りに視線を落とす。

「……やっぱり、まだ受け入れられていない部分はあります。祖母は僕やいとこたちに、とても優しくしてくれました。ハモン通りの屋敷にも何度も行きました。
 まさか、足元にあんなものを、大量に隠し持っていたなんて……想像もつかなかった」

 寂しげに、悲しげに言葉をこぼすエゴール。その、若者としては至極当たり前の反応に、俺はすっと目を細めた。
 受け入れがたいと思うのも当然だろう。自分を可愛がってくれた身内が、自分の馴染みのある場所の足元に、大量の麻薬を隠し持って、それを市内で売りさばいていたなどと。
 意気消沈するエゴールに、『プリズラック』店主である猫獣人のプローホル・スモーリンが、柔らかい口調で声をかけてくる。

「そうだろうねぇ、分かるよ、エゴール君」
「プローホルさん?」

 すべてを見透かしたかのように笑顔を向けてくるプローホルに、エゴールがきょとんとして首を傾げた。
 彼の言葉に、俺もハッとする。そう言えばこの店も当事者・・・だった。

「あぁ、そういえばこの店も『使われた・・・・』んだったか、スモーリン」
「そうそう。クヴィテラシヴィリの使用人の連中と他の連中が、酒を飲みつつブツと金をカウンターの下で、ね。私は全く気付かなかったよ。そんなことしてるなんて思い付きもしなかったさ」

 そう、市内各所で「麻薬の取引場所」に使われた酒場は数多い。この『プリズラック』もその一つだ。表通りから一本外れた場所にある小さな店。都合が良かったのだろう。
 実際、取引の現場に使われたことは市内のエージェントの知るところとなっていて、最近はプローホルに話を聞きに来るエージェントも多くいた。何なら俺だって、この店で飲んでいる時にエージェントが隣りに座ってきて、『プリズラック』に出入りした人間の情報を要求されたこともある。
 その情報を聞きながら、エゴールは眉間を指先で掻きながら、小さくため息を付いた。

「そうですか……本当に、色んな所で悪事をなしていたんですね、祖母や家の人々は」
「こればかりは、誰がどう言おうと事実だからな。やったことを覆すわけにはいかない……さて。スモーリン、『ジュラフスカヤ』をおかわり、ストレートで頼む」
「はーい」

 落胆する彼に言葉をかけながら、俺は四杯目のウォッカを注文しにかかる。この「ジュラフスカヤ」で四杯目、そろそろ飽きが来た気もする。
 注文を受けてプローホルが間延びした声を返し、尻尾を揺らしながらウォッカの瓶を取るのを横目に見ながら、俺はカウンターに片肘をついた。

「だが、そうだな。シュクロフスキー」
「はい?」

 俺に声をかけられて、水割りの残りをごくりと飲み干したエゴールが目を見開く。
 彼がタンブラーをコースターに戻すのを確認して、俺はそっと彼の頭に手を伸ばした。まだ柔らかさの残る彼のたてがみを、くしゃりと撫でてやる。

「そんなにこの店や、なんならここ以外の店に、申し訳なく思う必要はないと思うぞ。クヴィテラシヴィリの家の者は、一部の例外を除いてすべからく罰せられた。罪はその身で償われている。お前やお前の母親は、罪から逃れたことを有り難く思うことはあろうとも、申し訳なく思う必要はないさ」

 ニッコリと微笑みながら慰めの言葉をかける俺に、エゴールはなんとも言えない表情をしていた。
 気安いと思うかもしれないが、かねてよりの友人の甥だ。何だかんだ言って、彼がたてがみも生えない頃から顔を知っている。グリゴリーもよく可愛がっていたし、俺にとっても身内みたいなものだ。
 頭を撫でる俺の手を止めることもなく、しかし嬉しそうに微笑むでもなく、彼はぽつりと口を開く。

「……そう、でしょうか」
「そうだよ。大丈夫、エゴール君。君もマリアさんも、君の叔父さんのグリゴリーさんも、家を離れているから悪事に関与することはなかったんだ。関与してないんだから、気にする必要はないんだよ」

 俺の言葉に同調するように、プローホルもにっこり笑った。30ミリリットル注ぎ終えた「ジュラフスカヤ」の四杯目を、静かに俺の前に置いてくる。
 彼の言葉を受けて、エゴールはようやく、ほんの小さくだが頷いた。

「……はい」
「スモーリンの言うとおりだ。お前は何も気に病む必要はない。気に病むことがあるとしたら、お前たちを追いかけ回す新聞記者への対応についてくらいだ」

 彼が頭を動かしたのを受けて、俺は彼の鬣からそっと手を離した。そのまま注がれたばかりのショットグラスを掴み、一息に飲み干す。やはり、苦い。苦いが深みのある味わいだから、ウォッカの中でも「ジュラフスカヤ」は好きだ。
 そして俺の「新聞記者」という言葉に、ようやくエゴールもそのことを思い出したらしい。自身を取り巻く、日々襲いかかってくる面倒事に。
 グリゴリー同様、彼も彼で「クヴィテラシヴィリ伯爵家の案件」の関係者として、連邦最大級の「オチェット」社を始めとして、色んな会社の記者に追われているのだ。実際に現場に突入したし、記者慣れもしているグリゴリーのところに行くだけでは飽き足らず、全く事件に関与していないエゴールにも身内・・ということで突撃しているのである。
 面倒だ。祖母がやらかしてどうこうというのより、何倍も面倒だ。

「あっ……ふふっ、確かにそっちの方が、悩ましかったですね」
「あぁ、新聞屋に追いかけ回されているのかぁ。それは大変だ。めんどくさいだろう?」

 思わずというところか、ようやく苦笑をこぼしたエゴール。彼の言葉にプローホルも肩を竦める。
 俺は苦笑いをプローホルへと向けた。彼も彼で、新聞記者の対応には苦労している身なのだ。

「この店にも来たんだろう? 『オチェット』の記者が」
「来たとも。何も知らないと何度言っても聞いてくれなくてねぇ、面倒ったらなかったよ、ほんとに」

 そうぼやきながら、彼はエゴールの前に置かれたタンブラーを手に取り、シンクの中に持っていく。俺の目の前のショットグラスはそのままにしているあたり、彼も俺のことをよくよく分かっている。
 俺と彼のやり取りを呆気にとられた表情で見ていたエゴールが、小さくため息を吐き出した。

「やっぱり、そう言うものなんですね、新聞記者って……」
「だな。俺の表の仕事の方が、まだ取材のしかたが健全だぞ」

 彼のなんとも言い難い声色に、俺は鬣をざかざかと掻く。正直、同じ記者としては新聞記者のやり方はどうにも腹立たしい。もっとこう、書く対象に敬意を持って話を聞きに行ってほしいものだ。
 と、そこでプローホルがウォッカの棚の中から、一本の瓶を取り出して持ってきた。淡いブルーのスラリとしたシルエットが目を引く、美しいボトルだ。

「あ、そうそうルスラーンさん、この間ウォッカ特集で紹介していた『バブーリン』、仕入れてみたけど好調だよ」
「ほう、入れたのか」
「えっ、『バブーリン』あるんですか!?」

 彼の言葉と持ってこられた瓶に、エゴールがにわかに身を起こした。
 アファナシエフ領の小さな村で作られるクラフトウォッカ「バブーリン」は、透き通った味わいと切れ味が素晴らしく、酒飲みの間で非常に評価が高まっている銘柄だ。
 少し前までは知る人ぞ知る隠れた銘酒という感じだったのが、最近になって若者の間で大いにブームが起こっている。その火付け役は、ヤノフスキー市内については俺かもしれない。少し前にウォッカ特集で半ページを割いて紹介したので。
 目を輝かせるエゴールに、プローホルがにっこり笑いながらクリスタルブルーのボトルを持ち上げる。

「あるとも。飲むかい、エゴール君も?」
「飲みます飲みます! あ、でもストレートだと飲めないので、水割りで……」
「心配するな、『バブーリン』は割っても美味いぞ。水でも炭酸水でもいい味だ」

 先程までの意気消沈した様子はどこへやら、若者らしい朗らかさで注文を入れてくるエゴールを、俺は微笑ましげに見つめた。自然と目も細められ、頬も緩んでいく。
 彼が、タンブラーに「バブーリン」が注がれていくのを嬉しそうに見つめるのを見ながら、俺はそっと、彼の左肩に手を置いた。そろそろ、次の話をしなければならない。

「さて、それじゃそろそろ仕事の話に移ろう、シュクロフスキー。お前も立派に三級エージェントなんだ、しっかりとした働きを出来ることを、俺に見せてくれ」
「は、はい! よろしくお願いします! えーと……」

 俺の言葉に、ハッと表情をカタムするエゴールだ。あまりアルコールに強くない彼にアルコールを選ばせて俺に奢らせるというのも意地が悪いが、これが俺のやり方だからしょうがない。
 それに、今回は大ヒント・・・・を提示している。それを見つけられるか否か、俺の目は楽しみに一層細まって。
 やがて、エゴールの指が、彼の前に置かれた水割りのタンブラーと、その向こうに置かれたクリスタルブルーの瓶に向けられる。

「ルスラーンさん、その、捻りがなくてあれですけれど……『バブーリン』、一杯奢らせてもらっても、いいですか?」

 その回答に、俺は大いに頷いた。
 よかった、無事にヒントは拾ってもらえたようだ。

「やるようになったじゃないか、お前も」

 にこやかに笑いながら、俺はプローホルに視線を投げる。
 彼もまた、嬉しそうにニッコリと笑いながら、新しいショットグラスを透明な液体で満たした。
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