文系ドラゴン、旅に出る~老竜と行く諸国漫遊詩歌の旅~

八百十三

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第一章 出立

第五話 山間の町

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 太陽が傾き、空が茜色から藍色に染まりゆく中。
 オーケビョルンはマルクスを背に乗せて、スヴェドボリ山の北方、ステーン山脈を越えるべく翼を羽搏かせていた。
 バーリ公国の中央地域は山脈地帯になっており、スヴェドボリ山を中心に山と高地が広がっている。先刻立ち寄ったルーテンバリの町も、海面からの標高で言えば高いところにあるのだ。
 故に、スヴェドボリ山を取り囲むように広がっている山脈を超えてようやく、バーリ公国に住む人々の主な生活圏に差し掛かる。何とか、今日中にそこにはたどり着いておきたい。
 ぐんと翼で空気を押して飛行するオーケビョルンの首元を、マルクスの手がとんと叩いた。

「オーケビョルン! そろそろ陽が沈む。今日はここまでにしよう」
「んむ?」

 首元を叩きながら呼びかけてくるマルクスの声に、瞳をぐるりと動かすと。オーケビョルンの視界に飛び込んできたのは上空を指さすマルクスの顔と、とっくに山の向こうに太陽が沈んだ頭上の藍色をした空だった。
 いつの間にか、随分日が暮れてしまっていたらしい。

「ありゃ、いかん。もうこんなに日が傾いておったか」
「そうだろう。夜闇の中で山間を飛ぶのは危険だ」

 戸惑いがちに翼を動かすオーケビョルンの背中で、マルクスが目の上にひさしを作る。
 ドラゴンは洞窟の中で暮らすことが多い生き物だから、何も夜目が効かないわけではない。問題は気温の方だ。
 夜は気温が下がる。気温が下がると、ドラゴンは例外なく動きが鈍くなる。そういう生き物だ。だから世の中の悪のドラゴンは、大抵夜中に討伐が行われるのだ。
 空を飛んでいる最中に夜になれば、当然地上よりも気温が低くなる。ドラゴンにとっては一大事だ。

「確かになあ。この辺りで、町はあったかの?」
「レーンバリの町があといくらか飛んだ先にあるはずだ。そこで宿を取ろう」

 前方を伺っていたマルクスが、前方にちらりと見えた人家の灯りを指さした。
 ステーン山脈を形作る山々の合間には、旅の休憩所から発達していった町がいくつかある。レーンバリの町はその一つだ。
 目標を見つけたオーケビョルンの翼も一層強く羽搏く。そして程なくすれば、山肌にへばりつくように広がる灯りと、風除けの為に設置された防風壁、そして山と山の間にかかる吊り橋がいくつも見えた。

「おぉ、あったあった。それじゃ、降りるぞい」
「橋を落とさないよう、気を付けて降りてくれよ」

 山の暗闇の中にぽっかりと浮かぶように存在するレーンバリの町を見下ろしたオーケビョルンが、町の入り口付近にある広場をめがけて徐々に高度を下げていく。彼の背の上で、マルクスがランタンを振って地上の人間たちに合図を送っていた。
 しかして、広場の真ん中、人の輪が出来たそこに、オーケビョルンの巨体がズン、と音を立てて着地した。
 突然のドラゴンの来訪にざわつく人の輪の中から、一人の男性がオーケビョルンとマルクスの前に進み出た。虎の獣人族らしく、顔や腕には縞模様が見える。

「はわ……い、いらっしゃいませ! レーンバリにようこそ」
「出迎えありがとう。この町の宿屋に二名分、空きはあるかな?」

 存外に慌てた様子で話しかけてくる男性に、マルクスがにっこり笑いながら一礼する。
 二名分、という言葉に、男性は一瞬だけきょとんとした。どうやらオーケビョルンを、宿に泊まる人員としてカウントしなかったらしい。おずおずとマルクスへと話しかけてきた。

「は、はい……その、お泊りの二名様というのは」
「わしの分も含めて二名、じゃな。変化魔法も会得しておるゆえ、人間用の寝床で構わんぞ」
「しょ、承知しました! 確認してまいりますので、しばしお待ちください……!」

 オーケビョルンが自ら話しかけるのに、一瞬飛び上がる虎獣人の男性。まさかドラゴンがアッシュナー共通語を話すとは思わなかったのだろう。
 慌てて踵を返し、宿屋のあるであろう方向へと駆けていく。その背中を、呆れた表情で二人は見つめていた。

「慌てとるのう」
「なかなか来ないんだろう、ドラゴンの来訪者は。こんな山間の町だからね」

 ため息を零すオーケビョルンの横で、彼の背中から荷物を下ろすマルクスが苦笑を零した。
 実際、今も二人の周囲には、二人を、というよりもオーケビョルンを見つめてひそひそと話す住人の姿がある。ルーテンバリの町で受けた反応とは大きく異なる。
 ドラゴンがこうしてやってくること自体、あまり無いのだろう。なにせ空を飛べる種族だから、旅の際にこうした山間の町に降りる必要が無い。街の道路も、吊り橋も、ドラゴンが渡ることを想定していない作りだ。

「じゃなぁ。わしらじゃ町中を移動するのも一苦労というもんじゃ……んん?」
「オーケビョルン?」

 ぐるり、と首を回して町の中を見回したオーケビョルンが、ある一点、街中にかかる橋の辺りで視線を止めた。
 何事かと声をかけてくるマルクスへと視線を移すと、彼は右の前脚を顔の前に持ってきて爪を上向きに立てた。謝る時の仕草だ。

「マルクス、すまん。彼の御仁が戻ってきたら、宿泊の手続きだけ先にしておいてくれんか。わし、一作書いてから向かうから」
「お、何か思いついたんだね?」

 どうやら創作意欲が湧き上がってきたらしい友人の姿に、マルクスが嬉しそうな顔を見せた。その言葉に、オーケビョルンが無言でこくりと頷く。
 自分から書く意欲が湧き上がってきたのなら、マルクスにとってこれほど嬉しいことは無い。それを湧き上がらせるのが、今回の旅の目的だからだ。
 荷物を入れたトランクを手に持ちながら、彼はオーケビョルンが目を留めていたあたりに視線を凝らす。

「分かった、どこに書くんだい? 場所を教えてくれればそこに迎えに行くよ」
「かたじけない。で、その……あそこなんじゃ」

 オーケビョルンがそっと前脚で指し示したのは、先程見つめていた橋、の奥にある山肌だった。崖なのだろう、地面が露出するところどころに大きな岩が顔を出している。
 マルクスはなるほどと手を打った。あそこに、友人は詩歌を刻もうとしているのだ。

「はー……なるほど。出来上がったら見栄えがしそうだなぁ……」
「じゃろ? どうしてもあそこに、何かしら書きたくてのう」

 頷いたオーケビョルンは、今にも翼をはためかせて飛び出しそうだった。今すぐ書きたくて仕方ない、とうずうずしている様子である。
 そんな友人を宥めるようにポンポンと胴体を叩きながら、マルクスは笑った。

「分かった、落ちないよう気を付けてくれよ」
「うむ……したらば、あれじゃな」

 友人に笑みを返すと、オーケビョルンはそっと目配せした。何かを察したらしいマルクスが、笑いながら両耳を手でふさぐ。
 周囲の住民がきょとんとした表情で見ていると、オーケビョルンが大きく息を吸う。
 次の瞬間。

「グォォッ!!」

 短く、しかし鋭い咆哮が、山間に響き渡った。住民たちが慌てて耳を塞ぐも、強烈な大声にやられてふらつく者もいた。
 なんとか気を取り直して再び前を向くと、先程まで巨体を晒していたオーケビョルンの姿がどこにもない。
 否、ないのではない。ドラゴンの形を・・・・・・・取らなくなっただけ・・・・・・・・・なのだ。
 オーケビョルンが先程まで立っていたそこには、被膜の破れかけた大きな草色の翼と、同じ色をした太い尻尾、額から生える立派な角を持った、右手の手首から先だけ鱗に覆われ鉤爪を備えた、胡桃色の目をした老年の男性が立っている。
 まごうこと無き、オーケビョルン・ド・スヴェドボリである。
 竜語魔法の一つ、変化の魔法。ドラゴンでありながら人の社会で行動するために、人に寄せた肉体に自身を変化させる、ドラゴンの基礎技能の一つだ。
 変化の度合いは細かく調整が出来る。竜の頭部を備えて全身を鱗で覆った竜人族相当の姿になることもあれば、鱗も角も、翼も尻尾も全て隠して人間同様になることも可能。オーケビョルンがそうしているように、ドラゴンの肉体の一部だけを残すこともできるのだ。
 かくして、翼と鉤爪を備えた姿のまま、オーケビョルンが宙へと浮かぶ。ドラゴンの時ほど高く飛ぶ必要はない、空中で静止していられればいいのだ。

「よし。では行ってくるの」

 そう、軽い口調で言った途端。
 オーケビョルンは矢のように飛び出した。目的地の崖まで一直線。

「相変わらず器用なことだ。さて、と……」

 背中に皮膜が破れかけた竜の翼を携えて、人間の身体で空を駆けるオーケビョルン。彼の姿を見送ったマルクスは、その場の岩にどっかと腰を下ろした。



 マルクスの元を離れてしばし。オーケビョルンは目的の場所である、岩肌が剥き出しになった崖の前にやって来た。
 この場所まで来ることについては、ドラゴンの姿のままでも支障はない。しかし、この崖の傍には吊り橋が渡されている。ドラゴンの巨体では、橋に身体が干渉してしまうのだ。
 その為、変化魔法を使って人間の姿になり、翼と右手の爪だけドラゴンのそれにした状態でここまで来たわけである。

「よし、場所は問題なしじゃな。さて……そうじゃな」

 岩の前で翼をゆっくり動かしながら静止して、一際大きく露出した岩の表面を撫でるオーケビョルン。手触りはいい、表面の滑らかさも悪くない。あとは、書き記す詩をどうするかだ。

「んー、やっぱりこの山間の風景じゃな。『そそり立つ山、その山肌に張り付くように広がる町』……」

 いつものようにぶつぶつと呟いて、橋を渡る住民に奇異の目で見られながら、オーケビョルンは思案を重ねた。
 折角、普段なら絶対に接することの無い環境、降りることの無い場所だ。何か、この場所でしか得られないものを形にしたい。

「じゃが、もっとこう……んー、違うのう……」

 顎の下にその右手の鉤爪を持ってきながら、オーケビョルンは数度唸る。
 なにか、普段と違うことをしたい。普段と違うものを作りたい。そんな思いが頭をよぎる。
 そして、数分ほど思案した後に。彼はぽんと手を打った。

「んむ、よし。今回はちと変えてみるか」

 今まで書き記したものを切断の魔法でまるごと削り取り、表面をもう一度滑らかにしてから、彼は岩の表面に爪を差し込んだ。
 そうしてガリガリと岩を削り、気持ち大きめに文字を書いていく。変化をして人間と同じサイズになると、書ける文字の大きさも普段とは変わる。少し大きめに書かないと、小さくなって見えないのだ。
 程なくして、詩を構成する最後の一語を岩に刻んだオーケビョルンが、ふわりと身体を浮かせて橋の上に降り立った。

「よし」
「オーケビョルン、宿の手配が――あれ、もう出来たのかい?」

 と、橋から自分の書いた作品を見て、問題なく読めることを確認して頷いたオーケビョルンの左方向から、マルクスが駆け寄ってきては首を傾げた。
 普段の彼ならもっと作品を書くのに時間をかけるのに、随分と早いと思っているのだろう。実際、今回は一時間もかかっていないわけだ。
 満足そうに人の顔に笑みを浮かべながら、オーケビョルンがマルクスに視線を向けつつ頷いた。

「うむ、今回はちと手法を変えてみたでな。詠みあげるぞ」

 そう短く言って、彼は前方の岩、自分が詩を刻んだ岩へと目を向けた。そうして夜の闇に溶け込ませるように、朗読する。

――風が渡る。
  山間を風が渡る。
  そそり立つ山、その山肌に張り付くように広がる町を、風が渡る。
  そして砂を、葉を、煙を巻き上げて、去り行く風が山脈を抜けていく。――

 詠みあげて、その声が山の合間に静かに響いて。
 しばしの静寂の後に、オーケビョルンは傍らの友へと目を向けた。

「こんな具合じゃ」
「へぇ、なるほどね……オースブリンク式散文詩みたいな形式かい?」

 腕を組みながらマルクスは目を見張った。
 オースブリンク式散文詩は、バーリ公国の古典の一つである、その自由な文節と同じフレーズを何度も重ねる形式が特徴的な詩のスタイルだ。
 数世紀前の高名な女性文筆家、エリ・オースブリンクが考案したとされるその自由な詩は今でもファンが多く、このスタイルの詩だけを集めた詩集が、何冊も刊行されているのだ。

「そうそう。いつじゃったか、オースブリンク式の詩ばかりを集めた書籍を読んだ記憶があるのう。あの時のをイメージして書いてみたんじゃ」
「いいじゃないか。この場所の雰囲気にも合っている」

 満足そうに笑うオーケビョルンに頷きを返しながら、マルクスも嬉しそうに笑った。
 確かに、この山間に佇む町に、この開放的で自由なオースブリンク式散文詩は雰囲気が合っている。きっと、町の人々にも喜ばれることだろう。
 と、マルクスの後方から、先程の虎獣人の男性がそうっと、近づいてきた。

「お客様? えーと、お連れ様のご用事のほどは……」
「ああ、すまない。今済んだ。オーケビョルン、大丈夫かい?」
「む、ちょっと待っておくれ、名を刻むから」

 マルクスが男性に答えると、名前を刻んでいないことに気付いたオーケビョルンが橋から飛び出した。
 岩の隅の方に爪文字で名前を刻んでいくと、橋の上では男性が感動を露わにして、瞳を輝かせている。

「おぉぉ……竜語ドラゴニーズの詩が、こんなにもたちどころに……!」
「レーンバリの、いい観光名所になるんじゃないかな。何しろ、賢竜オーケビョルン・ド・スヴェドボリの詩碑だ」
「いっ……!?」

 腰に手をやりながら笑うマルクスの言葉に、虎獣人の男性が目を見開いた。
 この反応、よもやオーケビョルンの著作のファンだったか。
 名前を刻み終わって端の方に戻って来たオーケビョルンが、渋い顔をして手をひらひらと動かした。

「よさんか、持ち上げたって詩しか出て来んぞ」
「ははは」
「えー……で、では、お宿の方にご案内いたします。どうぞ、こちらへ……」

 軽い様子で笑うマルクスと、そのマルクスに批判的な目を向けているオーケビョルン。
 その二人のやり取りに圧倒されながらも、男性は歩き出して。
 ようやく屋根の下で休めることに安堵しながら、二人は今夜の宿に向かって歩いていくのだった。
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