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第8話 「何時に帰るの?ご飯どうする?」
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7月27日
寝れない……眠れなかった。
陽葵《ひまり》と布団を並べて寝ているのだが、隣の陽葵が気になって一睡もすることができなかった。
昨日まで全然そんなことなかったのに!
そんな陽葵の朝は早く、起きたと思ったらすぐにキッチンに向かってしまった。
このまま寝ることもできなかったので陽葵の手伝いでもするかと陽葵のあとを追った。
「おはよー陽葵」
「あっ! おはよー春斗くん! 今日は早いね!」
今日も元気いっぱい満面の笑みで俺に答える陽葵。
「大家さんもう出ちゃったよ、また近いうちに来るからだって」
「そっかぁ」
少しだけ紬ちゃんと話したかった気がするがもう出立後なら仕方がない。
「何か手伝うか?」
「あっ、もう終わるから大丈夫だよ! 省吾さんと雅文さん起こしてきてー」
「分かった」
……2階の省吾くんと雅文さんの部屋の前にきていた。
コンコン
「省吾くーん、朝ごはんできましたよー!」
返事がない。
コンコン
「雅文さーん、朝ですよー起きてくださーい!」
返事がない。ただのトビラのようだ。
ま、まずい!
このままでは陽葵が「せっかく作ったのに!」と機嫌が悪くなるのは明らかだ! 昨日の二の舞になる!!
俺は今日の平穏を手に入れるため、何としてでもこの二人を起こさなければならない!
ドンドンドン!
「省吾くーーん! 早く起きてください! 緊急事態ですよ!!!」
ドンドンドン!
「雅文さーーん! 俺を助けると思って起きてくださーーい!!
早く起きてくれ!!味噌汁が冷める前に!!
「助けて下さぁああい!」
田舎の中心で助けを叫んだ。
「うっせぇなぁ、朝からなんの騒ぎだよ」
「……迷惑」
祈りが通じたのか二人がほぼ同時に起きてきた。
「良かった! さぁ早く朝ごはん食べましょう!!」
「はぁ?」
二人の顔が訝し気に歪んだ気がした。
※※※
カチャカチャ
食器と箸の音がよく聞こえる。
「春斗くんどう?おいしい?しょっぱくない?」
「丁度良くておいしいよ」
ずずずーと味噌汁をすする。
「えへへへ良かったぁ、あっ春斗くんご飯粒ついてるよ」
ひょいっと俺のほっぺからご飯粒をとって自分の口に入れる陽葵。
「は、春斗てめぇ! これを見せたくて俺たちを起こしたのか!!」
「……遺憾!」
省吾くんと雅文さんが怒りでわなわなと震えている!
「ち、違いますよ! せっかく陽葵がおいしいご飯作ってくれたのに冷めるともったいないって思って!」
「えへへへ、おいしいってもったいないって」
トロンと陽葵の顔がとろける。
待て、今はその反応じゃないんだ。空気読め。
「今日ほどお前を憎いと思った日はねぇ……!!」
「や、やだなぁ。まだ俺と省吾くん出会ってから二日くらいですよ」
はぁと思いっきり省吾くんにため息をつく。
「お前ら今日は釣りにいこうぜ、どうせ暇だろ」
「釣り? そんな道具ないですよ」
「ばーか、ここがどこだと思ってるんだよ。そんなのここの倉庫にあるよ」
「なるほど……!」
ちらっと陽葵を見る。
「陽葵はどうする?」
「んー、私は今日は少し勉強しないといけないかな」
「そっか、じゃあちょっと行ってくるな」
「うん分かった、お部屋使わせてもらうね」
いや、もう好き勝手使ってるだろというツッコミはしないでおく。
「何時に帰るの? ご飯どうする?」
思いっきりオカンに言われるようなことを聞かれてしまった。
※※※
三人で近くの川辺で糸を垂らしていた。
釣れるかどうか分からないがこういうまったりした時間もいいなぁと感じる。
「ところで春斗、昨日どうだったんだよ」
全然まったりしない質問がとんできた。
「……昨日ってなんのことですか」
「とぼけんなよ、陽葵ちゃんとどうなったんだよ」
「別に何もないですって、機嫌はいいみたいですけど普通にしてますし」
本当にその通りだった。
機嫌はいいが、告白された後に何かが変わったというわけではなかった。
「……けど告白されたならちゃんと答えないといけないのでは?」
雅文さんがぼそぼそっと正論を言ってくる。
「そうなんですけど……陽葵に対する気持ちがよく分からなくて」
「ばーか、昨日も言っただろ。ヤレるかヤレないかだって、難しく考えるなよ」
「そんなもんなんですかねぇ……」
川辺に垂らした糸が風に揺れている。
「陽葵ちゃん、雅文の言った通りお前の答え待ってるんじゃね? それはお前がちゃんと真面目に答えてあげなきゃいけないんじゃないかなぁ」
急に真面目な顔で省吾くんがつぶやくものだからびっくりする。
この人こんな顔もできたんだと感心する。
「ちゃんとヤッたら報告しろよ。あっ! ただ部屋隣だから声とか聞こえてきたら殺すからな」
前言撤回。
省吾くんは省吾くんでしかなかった。
「ところでお二人は恋人とかいるんですか?」
「死ね」
「今すぐ帰れ」
「聞いただけなのにひどい!!」
雅文さんまでもがいつものぼそぼそ声でなくはっきりと言ってきた。
二人の口調はきつかったが、何故か男三人でこんなバカな話をしているこの空間が少しだけ心地良かった。
なお、その後三人の釣り竿が引っ張られることは永遠になかった。
寝れない……眠れなかった。
陽葵《ひまり》と布団を並べて寝ているのだが、隣の陽葵が気になって一睡もすることができなかった。
昨日まで全然そんなことなかったのに!
そんな陽葵の朝は早く、起きたと思ったらすぐにキッチンに向かってしまった。
このまま寝ることもできなかったので陽葵の手伝いでもするかと陽葵のあとを追った。
「おはよー陽葵」
「あっ! おはよー春斗くん! 今日は早いね!」
今日も元気いっぱい満面の笑みで俺に答える陽葵。
「大家さんもう出ちゃったよ、また近いうちに来るからだって」
「そっかぁ」
少しだけ紬ちゃんと話したかった気がするがもう出立後なら仕方がない。
「何か手伝うか?」
「あっ、もう終わるから大丈夫だよ! 省吾さんと雅文さん起こしてきてー」
「分かった」
……2階の省吾くんと雅文さんの部屋の前にきていた。
コンコン
「省吾くーん、朝ごはんできましたよー!」
返事がない。
コンコン
「雅文さーん、朝ですよー起きてくださーい!」
返事がない。ただのトビラのようだ。
ま、まずい!
このままでは陽葵が「せっかく作ったのに!」と機嫌が悪くなるのは明らかだ! 昨日の二の舞になる!!
俺は今日の平穏を手に入れるため、何としてでもこの二人を起こさなければならない!
ドンドンドン!
「省吾くーーん! 早く起きてください! 緊急事態ですよ!!!」
ドンドンドン!
「雅文さーーん! 俺を助けると思って起きてくださーーい!!
早く起きてくれ!!味噌汁が冷める前に!!
「助けて下さぁああい!」
田舎の中心で助けを叫んだ。
「うっせぇなぁ、朝からなんの騒ぎだよ」
「……迷惑」
祈りが通じたのか二人がほぼ同時に起きてきた。
「良かった! さぁ早く朝ごはん食べましょう!!」
「はぁ?」
二人の顔が訝し気に歪んだ気がした。
※※※
カチャカチャ
食器と箸の音がよく聞こえる。
「春斗くんどう?おいしい?しょっぱくない?」
「丁度良くておいしいよ」
ずずずーと味噌汁をすする。
「えへへへ良かったぁ、あっ春斗くんご飯粒ついてるよ」
ひょいっと俺のほっぺからご飯粒をとって自分の口に入れる陽葵。
「は、春斗てめぇ! これを見せたくて俺たちを起こしたのか!!」
「……遺憾!」
省吾くんと雅文さんが怒りでわなわなと震えている!
「ち、違いますよ! せっかく陽葵がおいしいご飯作ってくれたのに冷めるともったいないって思って!」
「えへへへ、おいしいってもったいないって」
トロンと陽葵の顔がとろける。
待て、今はその反応じゃないんだ。空気読め。
「今日ほどお前を憎いと思った日はねぇ……!!」
「や、やだなぁ。まだ俺と省吾くん出会ってから二日くらいですよ」
はぁと思いっきり省吾くんにため息をつく。
「お前ら今日は釣りにいこうぜ、どうせ暇だろ」
「釣り? そんな道具ないですよ」
「ばーか、ここがどこだと思ってるんだよ。そんなのここの倉庫にあるよ」
「なるほど……!」
ちらっと陽葵を見る。
「陽葵はどうする?」
「んー、私は今日は少し勉強しないといけないかな」
「そっか、じゃあちょっと行ってくるな」
「うん分かった、お部屋使わせてもらうね」
いや、もう好き勝手使ってるだろというツッコミはしないでおく。
「何時に帰るの? ご飯どうする?」
思いっきりオカンに言われるようなことを聞かれてしまった。
※※※
三人で近くの川辺で糸を垂らしていた。
釣れるかどうか分からないがこういうまったりした時間もいいなぁと感じる。
「ところで春斗、昨日どうだったんだよ」
全然まったりしない質問がとんできた。
「……昨日ってなんのことですか」
「とぼけんなよ、陽葵ちゃんとどうなったんだよ」
「別に何もないですって、機嫌はいいみたいですけど普通にしてますし」
本当にその通りだった。
機嫌はいいが、告白された後に何かが変わったというわけではなかった。
「……けど告白されたならちゃんと答えないといけないのでは?」
雅文さんがぼそぼそっと正論を言ってくる。
「そうなんですけど……陽葵に対する気持ちがよく分からなくて」
「ばーか、昨日も言っただろ。ヤレるかヤレないかだって、難しく考えるなよ」
「そんなもんなんですかねぇ……」
川辺に垂らした糸が風に揺れている。
「陽葵ちゃん、雅文の言った通りお前の答え待ってるんじゃね? それはお前がちゃんと真面目に答えてあげなきゃいけないんじゃないかなぁ」
急に真面目な顔で省吾くんがつぶやくものだからびっくりする。
この人こんな顔もできたんだと感心する。
「ちゃんとヤッたら報告しろよ。あっ! ただ部屋隣だから声とか聞こえてきたら殺すからな」
前言撤回。
省吾くんは省吾くんでしかなかった。
「ところでお二人は恋人とかいるんですか?」
「死ね」
「今すぐ帰れ」
「聞いただけなのにひどい!!」
雅文さんまでもがいつものぼそぼそ声でなくはっきりと言ってきた。
二人の口調はきつかったが、何故か男三人でこんなバカな話をしているこの空間が少しだけ心地良かった。
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