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番外編

訪問販売柚琉くん

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直人視点

ピンポーン。
「はーい」
「うぇ…ぐしゅ…うぅ…」
え。
何この子。
なんか…カバン抱えて泣いてるんだけど。
迷子?
「おひゅ…おひゅとんいりましぇんか…」
「うん?」
「おひゅとん…」
「…あ、布団か」
泣きすぎて上手く聞き取れないんだけど…。
「…えっと…とりあえず中入ってくれるかな」
「あぃ…」
丁寧に靴を揃えたその子はソファーにちょこんと座った。
「君何歳?歳によっては…今の時間完全に深夜徘徊なんだけど…」
「18しゃい…らって…おひゅとんじぇんぶ売るまで帰ってきちゃダメって…うぅ…」
「あーはいはい。泣かないの。ホットミルクでいい?」
「…ぅん」
カチャカチャとカップの用意をしながら考える。
今の言い方…多分親から言われたな。
虐待をするような家なのか…それとも…裏の世界の人の方なのか。
裏の世界…はないか。
あんな泣きながら明らかにぼったくりな訪問販売なんてやるはずないし。
「はい。好きなだけはちみつ入れていいからね」
「ありがとうごじゃいましゅ…」
一口飲んでほんの少しだけ顔色が良くなったのを確認してから話しかけた。
「名前教えてくれる?」
「柚琉…でしゅ」
「…苗字は?」
「わかんにゃ…うぅ…」
…監禁、育児放棄。
その言葉が頭に浮かんだ。
「…ここには何をしに来たのかな?」
「あにょ…おじしゃんが…おひゅとん…ぐじゅっ…」
「何となく分かったからその手に持ってるの見せてくれる?」
「あぃ」
鞄の中からはチラシが何十枚と出てきた。
「…高級羽毛布団が10万…ねぇ」
…うん、これ偽物だね。
「100%天然って…水鳥そんなたくさんいるわけじゃないんだから10万じゃ手に入らないって」
「うぇ…?」
「これは偽物。まぁ要するに…嘘のものを売ろうとしてたって事だね」
「ぼ…ぼく…」
「ん、君は悪くないよ。大丈夫」
…とりあえずこの子保護でいいのかな。
抱きしめてぽんぽんと背中を叩いているとすぐに寝息が聞こえてきた。




寝室のベッドに寝かせたあと、父さんに電話をかけた。
『直人。こんな時間にどうしたの?』
「ん、18歳の男の子保護したいんだけど…僕でも扶養者ってなれる?」
『どうだろう…まぁ厳しいようならうちの養子に入れるよ。で、その子は?』
「虐待受けてたんだと思う。親はいないかも。おじさんっていう存在がこの子に訪問販売を強要してた」
『了解。あとはこっちで探してみるから。手続きも勝手に進めておくね。その子の名前教えてもらってもいい?』
「柚琉だって」
『分かった。じゃあ今夜はその子と一緒に寝るんだよ?』
「そのつもり」
『そっか。直人ならそうするか』
…もうなんの心配してるんだか。
通話を切り、寝巻きに着替えたあと、柚琉と同じベッドに入った。
「ん…にゅぅ…」
「もう大丈夫だからね…僕が守ってあげるから」
「にゅぁ…」
きゅっと背中に手を回された。
…可愛い。










そして数日後、柚琉は僕の弟となり、僕のマンションに居候するようになった。
「おにーさん。いってらっしゃい」
「ん、いってきます。お外は危ないから出ちゃダメだからね?」
まだ柚琉を狙うやつがいないとは限らないし…。
「わかった」
「おやつはいつもの棚に入れてあるからそれ食べてね。それから…」
「分かってるから早く行って!!」
「ふふ。ゆーず。何か忘れてない?」
「うぅ…!!」
ちゅっと軽いキスを柚琉からされた。
「ん、いってきます」
毎日のお約束。
柚琉は僕の部屋としているこのフロアから出ないこと。
インターホンや電話が鳴っても基本無視。
僕と父さん、母さん、兄さんと夏の番号が入った携帯を渡し、名前が表示されるもの以外は出ないようにも言い聞かせた。
毎朝、いってらっしゃいのキスと帰ったあとのおかえりのキスも。
愛情をあまり受けてこなかった柚琉に…これから溺れてしまいそうなほどの愛を注いであげようか。
拒否しても……いや、拒否されるなんてありえない。
されたとしたら…本格的にしつけないとダメかもしれないね。
「へくちっ」
「風邪ひいちゃうといけないからリビングにいてね。暖房は切らなくていいから」
「はぁい…」
僕の柚琉を…離してやるものか。
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