33 / 839
番外編
体調の悪い時は
しおりを挟む
翔視点
ある時期、柚は嘔吐を繰り返すことがあった。
どれだけ食事を変えても、環境を変えても、全て吐き出してしまう。
「柚…辛いならもう食べなくていいぞ?」
「…ごめんなさい…おなか…すいたのにたべれない…」
「柚のせいじゃないから」
病院に行っても心因性のものと言われるだけ。
「…翔、直人。2人は柚と夏を連れて避暑地にある別荘に行ってきて。しばらくそこで療養してて」
「父さん…」
「柚。父さん達がきっとなんとかしてあげるから。…お腹いっぱい食べられるようになろうね」
「うん…」
ここ最近で柚の体重はかなり減ってしまった。
眠っていることも多くなってきた。
「…柚の食べられるもの…」
「最初は何も入っていないスープだよね。水なら少しは取れるようだし」
「そこから重湯とかに変えてくか…」
栄養面は…まぁ料理人たちが何とかしてくれるさ。
「なつたちここですごすの?」
「気に入った?」
「うん!!すずしいしひろいしあそべるとこたくさんある!!」
「夏、俺達が呼ぶまで遊んでいていいぞ」
「ほんと!?」
夏はすぐに庭に置かれた遊具に駆けて行った。
さて…問題は柚だな。
「柚はしばらくは室内かな…」
「日当たりのいいところにベッドを置いてやろうか」
「寝る時は寝室の方へ移動させないとね」
「すぅ…すぅ…」
…車で移動してたから疲れて眠ったか。
「僕、上からベッド下ろしてくるね」
「あぁ。確か子供用の小さいのがあったはずだ」
「分かった」
それまではとりあえずソファーだな。
背もたれを倒し、少し範囲を広げてから柚を寝かした。
ここには使用人もいない。
何が原因か分からないからしばらくは俺達兄弟だけだ。
「…スープ、作り置きしておくか」
夏の食事も作らないと。
夏はたくさん食べるし好き嫌いもないけど柚は嫌いなものの方が多いからな…。
料理人に渡されたレシピを広げ、冷蔵庫から食材を取り出して料理を始める。
コーンポタージュ。
コンソメスープ。
野菜スープ。
かぼちゃスープ。
…なんでフカヒレスープまで入ってんだ。
「…ん…」
「柚、起きた?」
ちょうどベッドの設置を終えた直人は柚を抱き上げた。
「いいにおい…」
「翔兄さんが柚のために色々作ってくれてるからね」
「少しだけ味見するか?」
最初に作ったからいくらか冷めたコーンポタージュをスプーンにすくい、柚の口へ入れてみた。
「どうだ?」
「…おいしい」
「吐き気はない?大丈夫?」
「だいじょうぶ…」
それを聞いて俺達は嬉しくなった。
使用人がいなかったから。
料理人ではなく俺の手で、目の前で作ったから。
家と違うことはいくらでもあった。
それでも…柚がやっと食事を取れるようになったんだ。
嬉しくならないはずがない。
「これからちょっとずつ慣らしていこうね」
「ん…」
ある時期、柚は嘔吐を繰り返すことがあった。
どれだけ食事を変えても、環境を変えても、全て吐き出してしまう。
「柚…辛いならもう食べなくていいぞ?」
「…ごめんなさい…おなか…すいたのにたべれない…」
「柚のせいじゃないから」
病院に行っても心因性のものと言われるだけ。
「…翔、直人。2人は柚と夏を連れて避暑地にある別荘に行ってきて。しばらくそこで療養してて」
「父さん…」
「柚。父さん達がきっとなんとかしてあげるから。…お腹いっぱい食べられるようになろうね」
「うん…」
ここ最近で柚の体重はかなり減ってしまった。
眠っていることも多くなってきた。
「…柚の食べられるもの…」
「最初は何も入っていないスープだよね。水なら少しは取れるようだし」
「そこから重湯とかに変えてくか…」
栄養面は…まぁ料理人たちが何とかしてくれるさ。
「なつたちここですごすの?」
「気に入った?」
「うん!!すずしいしひろいしあそべるとこたくさんある!!」
「夏、俺達が呼ぶまで遊んでいていいぞ」
「ほんと!?」
夏はすぐに庭に置かれた遊具に駆けて行った。
さて…問題は柚だな。
「柚はしばらくは室内かな…」
「日当たりのいいところにベッドを置いてやろうか」
「寝る時は寝室の方へ移動させないとね」
「すぅ…すぅ…」
…車で移動してたから疲れて眠ったか。
「僕、上からベッド下ろしてくるね」
「あぁ。確か子供用の小さいのがあったはずだ」
「分かった」
それまではとりあえずソファーだな。
背もたれを倒し、少し範囲を広げてから柚を寝かした。
ここには使用人もいない。
何が原因か分からないからしばらくは俺達兄弟だけだ。
「…スープ、作り置きしておくか」
夏の食事も作らないと。
夏はたくさん食べるし好き嫌いもないけど柚は嫌いなものの方が多いからな…。
料理人に渡されたレシピを広げ、冷蔵庫から食材を取り出して料理を始める。
コーンポタージュ。
コンソメスープ。
野菜スープ。
かぼちゃスープ。
…なんでフカヒレスープまで入ってんだ。
「…ん…」
「柚、起きた?」
ちょうどベッドの設置を終えた直人は柚を抱き上げた。
「いいにおい…」
「翔兄さんが柚のために色々作ってくれてるからね」
「少しだけ味見するか?」
最初に作ったからいくらか冷めたコーンポタージュをスプーンにすくい、柚の口へ入れてみた。
「どうだ?」
「…おいしい」
「吐き気はない?大丈夫?」
「だいじょうぶ…」
それを聞いて俺達は嬉しくなった。
使用人がいなかったから。
料理人ではなく俺の手で、目の前で作ったから。
家と違うことはいくらでもあった。
それでも…柚がやっと食事を取れるようになったんだ。
嬉しくならないはずがない。
「これからちょっとずつ慣らしていこうね」
「ん…」
2
お気に入りに追加
2,132
あなたにおすすめの小説

異世界転生したのに弱いってどういうことだよ
めがてん
BL
俺――須藤美陽はその日、大きな悲しみの中に居た。
ある日突然、一番大切な親友兼恋人であった男を事故で亡くしたからだ。
恋人の葬式に参列した後、誰も居ない公園で悲しみに暮れていたその時――俺は突然眩い光に包まれた。
あまりに眩しいその光に思わず目を瞑り――次に目を開けたら。
「あうううーーー!!?(俺、赤ちゃんになってるーーー!!?)」
――何故か赤ちゃんになっていた。
突然赤ちゃんになってしまった俺は、どうやら魔法とかあるファンタジー世界に転生したらしいが……
この新しい体、滅茶苦茶病弱だし正直ファンタジー世界を楽しむどころじゃなかった。
突然異世界に転生してしまった俺(病弱)、これから一体どうなっちゃうんだよーーー!
***
作者の性癖を詰め込んだ作品です
病気表現とかあるので注意してください
BL要素は薄めです
書き溜めが尽きたので更新休止中です。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます
餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。
まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。
モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。
「アルウィン、君が好きだ」
「え、お断りします」
「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」
目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。
ざまぁ要素あるかも………しれませんね

人生イージーモードになるはずだった俺!!
抹茶ごはん
BL
平凡な容姿にろくでもない人生を歩み事故死した俺。
前世の記憶を持ったまま転生し、なんと金持ちイケメンのお坊ちゃまになった!!
これはもう人生イージーモード一直線、前世のような思いはするまいと日々邁進するのだが…。
何故か男にばかりモテまくり、厄介な事件には巻き込まれ!?
本作は現実のあらゆる人物、団体、思想及び事件等に関係ございません。あくまでファンタジーとしてお楽しみください。

眺めるほうが好きなんだ
チョコキラー
BL
何事も見るからこそおもしろい。がモットーの主人公は、常におもしろいことの傍観者でありたいと願う。でも、彼からは周りを虜にする謎の色気がムンムンです!w
顔はクマがあり、前髪が長くて顔は見えにくいが、中々美形…!
そんな彼は王道をみて楽しむ側だったのに、気づけば自分が中心に!?
てな感じの巻き込まれくんでーす♪

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
斜陽の家から和平の関係でアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々
慎
BL
SECRET OF THE WORLD シリーズ《僕の名前はクリフェイド・シュバルク。僕は今、憂鬱すぎて溜め息ついている。なぜ、こうなったのか…。
※シリーズごとに章で分けています。
※タイトル変えました。
トラブル体質の主人公が巻き込み巻き込まれ…の問題ばかりを起こし、周囲を振り回す物語です。シリアスとコメディと半々くらいです。
ファンタジー含みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる