普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ

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選択編

樹の里編part2

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引き続き樹視点


「…はぁ…」
「疲れましたか?」
「…まだ…大丈夫」
一旦荷物をおろし、柚琉様をおぶってから持ち直した。
「いいよ。僕重たいし」
「重くなどありませんよ」
「でも…」
…ここからは日陰が少ないな。
「柚琉様、では少しだけお願いをしてもよろしいでしょうか?」
「うん!!」
「日傘を持っていてほしいのです。腕を伸ばす必要はありませんよ。落ちないように持っているだけでいいのです」
「こう?」
持ち手を僕の方にたらし、自分は上の方を少しだけ掴んだようだ。
「はい」
…これで日に当たることはなくなる。
「柚琉様。里では常に誰かがいますから」
「ねぇ樹くん」
「はい?」
「どうして樹くん達は『里』って言うの?さっき見た電信柱に住所書いてあったけど町名だったよ?」
ここの地域限定の矛盾か。
「ここは昔私達の一族しかいなかったのですよ。周りを険しい山々に囲まれ他の人との関係をほとんど断ち切っていたのです。その頃は里と呼んでいましたから私達のような直系のものは今でもその名残で里と呼んでしまうのですよ」
「へぇ~」
…まぁ直系と言っても幅広いけれども。
外から入ってきた人でなければほとんどは直系と呼ばれるだろう。
長の一族……えっと今だと長、そして長の妻、母、父、そして僕と睦樹は他の人と区別される。
世襲制ではないが僕達の一族だけ10代連続で長を務めているからだろう。
「樹くんはここに帰らないの?」
「私には目の離せない主がいますから」
「ちょっとどういう意味?僕もう小学生なったの!!」
「周りより少しばかり小さくて病弱な小学生ですね」
「むぅ!!」
そういえば柚琉様にこれを言うのを忘れていた。
「いいですか?長に何を言われても従ってはいけませんよ?」
「長って誰?」
「この里の一番偉い人です。…僕の祖父です」
「おじいちゃんが『おさ』なの?」
「はい」
…あのじい様なら柚琉様を引き止めるために里の誰かと結婚などと言い出しかねない。
柚琉様が藤沢の血を受け継ぐものだから多少は遠慮してくれるだろうけど…。
ピンポーン。
『はぁーい。樹でしょー?入って入って』
「…母様…」
…そんな脳天気な。
また父様に捕まりますよ。
「今の誰?」
「母様…私の母です。紹介は後でもよろしいでしょうか…三日後辺りでも」
「うん。いいよ~」
なるほど。
柚琉様と初めて会った時にどこかで見覚えがあると思ったのは母様がいたからなのか。
二人とも危機感がなくておっとりしてるから。
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