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番外編

猫柚

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直人視点

「ユズ~?あれ?どこかいっちゃった?」
「みぃ~!!」
「あ、ごめんごめん。見えなかったんだ」
ソファーの下から這い出てきたユズはふるふると体を振るうと僕にも近づいてきた。
「おやつ持ってきたよ」
「みにゃぁぁ!!」
餌皿を置くとすぐに顔を突っ込んで周りや自分の体を汚しながら食べ始めた。
数ヶ月前にうちに迷い込んできた黒い子猫。
怪我をしてとてもやせ細っていたからしばらくうちに置いたあと誰かに受け渡そうと考えてたら夏が気に入っちゃうんだもんね。
それからユズはうちの猫。
病気は多いしどこで付けてくるのか体はいつも葉っぱや花びらまみれ。
手のかかる子だけど僕達の大事な家族の一員だ。
「にゃっ!!」
「ん?どうしたの?」
「みー!!」
後ろ足とお尻で座り、前足を合わせてこてんと首を傾げた。
これもどこで覚えてきたのかすごく可愛いおねだりを覚えた。
「ユズはちょっとは我慢を覚えないとね。今日はおやつおしまい」
「みぃー!!」
「おねだりしてもダメ。太っちゃうよ?」
「みぎゃっ!!」
言葉を理解しているのか名残惜しそうに皿を眺めたあとこちらへ押し出した。
「ただいまー!!ユズは!?」
「ここにいるよ」
「ユズー!!」
「にゃぁっ!!」
ユズは夏に飛びつこうとして、足に頭をぶつけた。
「みにゃぁぁぁ!!」
「あーあ…痛かったね。夏、飛び込んできたらユズがまた怪我しちゃうでしょ」
「ごめんなさぁい。だって早くユズに会いたかったんだもん」
「だって。ユズ、もう出てきたら?」
ソファーの下に潜り込んでしまったユズを呼んでみると尻尾が出てきた。
まだ嫌なのね。
「ユズ。ごめんね?夏もごめんなさいする…」
「あ」
ソファーの下を覗き込もうとした夏の頭にユズがぴょんと飛び乗った。
「ゆ、ユズ!?夏怖くて立てないよぉ…おりてぇ」
「夏。ユズはここがいいみたいだよ」
「えぇ!?だってユズ前に乗った時落ちたじゃん!!」
「なんか満足気な顔してるよ」
えへんと胸を張っているようにも見えるけど。



ユズ視点

僕はユズっ!!
転生したんだけど…猫だったんだよね。
猫の生活なんてよくわかんないし犬に吠えられるし怖かったけどここのおうち来てからは安全っ!!
おっきいけど犬もいないしみんな優しいしたまに蹴られちゃうけどすぐごめんって言ってくれるもん。
僕が怪我したらすぐに病院連れていくところは嫌だけど…。
「ユズ。お風呂入ろうか」
「にゃぁっ!?」
お風呂嫌いっ!!
「こーら。暴れないの」
「にゃにゃにゃぁ!!」
嫌なの!!
お水嫌っ!!
しかしどれだけじたばたしても離してくれなかった。
「夏。お風呂用のおもちゃ持ってきてあげて」
「わかった!!」
「にゃぁぁ!?」
もう逃げられないっ!!
僕はお風呂場につくとすぐに奥の方に逃げ込んだ。
にゃっ!?
湯船にお水がある…。
入れない…どうしよう。
これ以上奥に行けなくなっちゃった。
「ユズ。ユズのお風呂はこっちでしょ」
「み…にゃぁ…」
直人兄さんは僕を捕まえて洗面器に入れるとシャワーで少しずつお湯をかけた。
うぅ…濡れるぅ…。
ぷるぷるしちゃえ!!
ぷるるっと体を震わすとちょっとだけ水が飛んだ。
「…全く…ユズ。今は水遊びじゃないの。僕にまでかかったよ?」
えへん。
それが目的だもーん。
「…このいたずらっ子めっ!!」
「にゃぁぁぁぁ!!」
中断していたシャワーを急にかけられた。
もういいっ!!
精一杯のぷるぷるしてやるっ!!
「ユズ~おもちゃ持ってきたよ~」
はっ!?
夏は僕の前にネズミのぬいぐるみを置いた。
ねずみー!!
僕はそれに近づくとガジガジ噛んだ。
「もうそのネズミもボロボロだね。何代目だっけ」
「確か4代目。お風呂まで持ってくるからすぐダメになっちゃうんだって」
「ユズこれがないと大人しくならないもんね」
にゃ?
このねずみさんは僕のものだぞっ!!
たとえ僕より体が大きくていつも負けちゃってもこれだけはあげないんだから!!
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