普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ

文字の大きさ
上 下
310 / 839
幼児編

200

しおりを挟む
翔視点

柚が眠り続けて6日目。
父さんは仕事が手につかなくなり、会社にも行けなくなった。
「…そりゃこんな状況で普通に仕事する方が異常か」
「…柚、絵本読んであげたらちょっとだけ指握ってくれた…一応聞いてはいるんだね」
「今日も行ってみるか。今日こそ起きるかもしれないし」
「…うん」
直人も少しは元気になってきたが…すぐ元に戻るだろうな。




放課後、柚の入院する病院へやってきた。
「樹。入るぞ」
ドアを開け、入ってみるとちょうど柚のオムツ交換をしているところだった。
「すみません。今、手が離せなくて」
「いい。俺が代わる」
これでも夏と柚が小さい時は俺がオムツ替えもやってたんだぞ。
これぐらいは慣れてるさ。
テキパキとオムツを替えていると柚の手がぷるぷる震えていた。
「樹、これ痙攣ってわけじゃないだろ?」
「はい。また目覚められるのでしょうか」
瞼も震え、目が開いた。
「柚?」
口を開けて何か言いたそうだったが、声が聞こえない。
水分をとっていないから喉が乾いて声が出せないのか?
「柚琉様、お水飲みましょうか」
樹は柚の体を支えコップを傾けて少量の水を口に入れた。
喉が動いているからちゃんと飲み込めてるんだな。
「…珍しいですね。ここまで起きていられるなんて」
「は?今までも起きてたんだろ?」
「いえ…目を開け、数秒もすればまた閉じてしまい、会話も何かを口にすることもありませんでした」
「ちょっとは回復してるってことか?」
「そのようですね。お医者様を呼びましょうか」
樹はナースコールを押した。
…そういやオムツ替え途中だったな。
悪かったな、柚。
寒いだろ。
オムツをテープで止め、ズボンを履かせた。
「どうされましたか!?」
「柚琉様がお目覚めになられたので」
「柚琉くんが?柚琉くん。分かる?いつも君を診察してた椎名しいなだよ」
柚は一点を見つめ、答えようとしない。
「…応答不可…か。何か食べ物をあげたりは?」
「まだ水しか」
「…何か口にした方がいいでしょうね。栄養剤を投与しているとはいえ、お腹は空くでしょうから」
あ、それならこれ飲ませれば。
俺は鞄の中からポットを取り出した。
「料理人に持たされた柚のお気に入りのコンソメスープ」
「翔様。ありがとうございます」
コンソメスープと口にした瞬間柚の目がキラリと光った気がした。
「柚、お腹すいたよな。もうちょっとしたら家にも帰れるからな」
これはもう退院の手続きをし始めてもいいかもな。
柚はコンソメスープをコップの3分の1ほど飲むとまた眠ってしまった。
「おやすみ柚。今度起きる時は家にいるといいな」
早めに帰らせてやろう。
俺達の声で起きるのならいくらでも声をかけ続けてやる。
柚のためならなんだってするさ。
しおりを挟む
感想 530

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

異世界転生したのに弱いってどういうことだよ

めがてん
BL
俺――須藤美陽はその日、大きな悲しみの中に居た。 ある日突然、一番大切な親友兼恋人であった男を事故で亡くしたからだ。 恋人の葬式に参列した後、誰も居ない公園で悲しみに暮れていたその時――俺は突然眩い光に包まれた。 あまりに眩しいその光に思わず目を瞑り――次に目を開けたら。 「あうううーーー!!?(俺、赤ちゃんになってるーーー!!?)」 ――何故か赤ちゃんになっていた。 突然赤ちゃんになってしまった俺は、どうやら魔法とかあるファンタジー世界に転生したらしいが…… この新しい体、滅茶苦茶病弱だし正直ファンタジー世界を楽しむどころじゃなかった。 突然異世界に転生してしまった俺(病弱)、これから一体どうなっちゃうんだよーーー! *** 作者の性癖を詰め込んだ作品です 病気表現とかあるので注意してください BL要素は薄めです 書き溜めが尽きたので更新休止中です。

ザ・兄貴っ!

BL
俺の兄貴は自分のことを平凡だと思ってやがる。…が、俺は言い切れる!兄貴は… 平凡という皮を被った非凡であることを!! 実際、ぎゃぎゃあ五月蝿く喚く転校生に付き纏われてる兄貴は端から見れば、脇役になるのだろう…… が、実は違う。 顔も性格も容姿も運動能力も平凡並だと思い込んでいる兄貴… けど、その正体は――‥。

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

親衛隊総隊長殿は今日も大忙しっ!

BL
人は山の奥深くに存在する閉鎖的な彼の学園を――‥ 『‡Arcanalia‡-ア ル カ ナ リ ア-』と呼ぶ。 人里からも離れ、街からも遠く離れた閉鎖的全寮制の男子校。その一部のノーマルを除いたほとんどの者が教師も生徒も関係なく、同性愛者。バイなどが多い。 そんな学園だが、幼等部から大学部まであるこの学園を卒業すれば安定した未来が約束されている――。そう、この学園は大企業の御曹司や金持ちの坊ちゃんを教育する学園である。しかし、それが仇となり‥ 権力を振りかざす者もまた多い。生徒や教師から崇拝されている美形集団、生徒会。しかし、今回の主人公は――‥ 彼らの親衛隊である親衛隊総隊長、小柳 千春(コヤナギ チハル)。彼の話である。 ――…さてさて、本題はここからである。‡Arcanalia‡学園には他校にはない珍しい校則がいくつかある。その中でも重要な三大原則の一つが、 『耳鳴りすれば来た道引き返せ』

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️ 第12回BL小説大賞に参加中! よろしくお願いします🙇‍♀️

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

処理中です...