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幼児編
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翔視点
柚が眠り続けて6日目。
父さんは仕事が手につかなくなり、会社にも行けなくなった。
「…そりゃこんな状況で普通に仕事する方が異常か」
「…柚、絵本読んであげたらちょっとだけ指握ってくれた…一応聞いてはいるんだね」
「今日も行ってみるか。今日こそ起きるかもしれないし」
「…うん」
直人も少しは元気になってきたが…すぐ元に戻るだろうな。
放課後、柚の入院する病院へやってきた。
「樹。入るぞ」
ドアを開け、入ってみるとちょうど柚のオムツ交換をしているところだった。
「すみません。今、手が離せなくて」
「いい。俺が代わる」
これでも夏と柚が小さい時は俺がオムツ替えもやってたんだぞ。
これぐらいは慣れてるさ。
テキパキとオムツを替えていると柚の手がぷるぷる震えていた。
「樹、これ痙攣ってわけじゃないだろ?」
「はい。また目覚められるのでしょうか」
瞼も震え、目が開いた。
「柚?」
口を開けて何か言いたそうだったが、声が聞こえない。
水分をとっていないから喉が乾いて声が出せないのか?
「柚琉様、お水飲みましょうか」
樹は柚の体を支えコップを傾けて少量の水を口に入れた。
喉が動いているからちゃんと飲み込めてるんだな。
「…珍しいですね。ここまで起きていられるなんて」
「は?今までも起きてたんだろ?」
「いえ…目を開け、数秒もすればまた閉じてしまい、会話も何かを口にすることもありませんでした」
「ちょっとは回復してるってことか?」
「そのようですね。お医者様を呼びましょうか」
樹はナースコールを押した。
…そういやオムツ替え途中だったな。
悪かったな、柚。
寒いだろ。
オムツをテープで止め、ズボンを履かせた。
「どうされましたか!?」
「柚琉様がお目覚めになられたので」
「柚琉くんが?柚琉くん。分かる?いつも君を診察してた椎名だよ」
柚は一点を見つめ、答えようとしない。
「…応答不可…か。何か食べ物をあげたりは?」
「まだ水しか」
「…何か口にした方がいいでしょうね。栄養剤を投与しているとはいえ、お腹は空くでしょうから」
あ、それならこれ飲ませれば。
俺は鞄の中からポットを取り出した。
「料理人に持たされた柚のお気に入りのコンソメスープ」
「翔様。ありがとうございます」
コンソメスープと口にした瞬間柚の目がキラリと光った気がした。
「柚、お腹すいたよな。もうちょっとしたら家にも帰れるからな」
これはもう退院の手続きをし始めてもいいかもな。
柚はコンソメスープをコップの3分の1ほど飲むとまた眠ってしまった。
「おやすみ柚。今度起きる時は家にいるといいな」
早めに帰らせてやろう。
俺達の声で起きるのならいくらでも声をかけ続けてやる。
柚のためならなんだってするさ。
柚が眠り続けて6日目。
父さんは仕事が手につかなくなり、会社にも行けなくなった。
「…そりゃこんな状況で普通に仕事する方が異常か」
「…柚、絵本読んであげたらちょっとだけ指握ってくれた…一応聞いてはいるんだね」
「今日も行ってみるか。今日こそ起きるかもしれないし」
「…うん」
直人も少しは元気になってきたが…すぐ元に戻るだろうな。
放課後、柚の入院する病院へやってきた。
「樹。入るぞ」
ドアを開け、入ってみるとちょうど柚のオムツ交換をしているところだった。
「すみません。今、手が離せなくて」
「いい。俺が代わる」
これでも夏と柚が小さい時は俺がオムツ替えもやってたんだぞ。
これぐらいは慣れてるさ。
テキパキとオムツを替えていると柚の手がぷるぷる震えていた。
「樹、これ痙攣ってわけじゃないだろ?」
「はい。また目覚められるのでしょうか」
瞼も震え、目が開いた。
「柚?」
口を開けて何か言いたそうだったが、声が聞こえない。
水分をとっていないから喉が乾いて声が出せないのか?
「柚琉様、お水飲みましょうか」
樹は柚の体を支えコップを傾けて少量の水を口に入れた。
喉が動いているからちゃんと飲み込めてるんだな。
「…珍しいですね。ここまで起きていられるなんて」
「は?今までも起きてたんだろ?」
「いえ…目を開け、数秒もすればまた閉じてしまい、会話も何かを口にすることもありませんでした」
「ちょっとは回復してるってことか?」
「そのようですね。お医者様を呼びましょうか」
樹はナースコールを押した。
…そういやオムツ替え途中だったな。
悪かったな、柚。
寒いだろ。
オムツをテープで止め、ズボンを履かせた。
「どうされましたか!?」
「柚琉様がお目覚めになられたので」
「柚琉くんが?柚琉くん。分かる?いつも君を診察してた椎名だよ」
柚は一点を見つめ、答えようとしない。
「…応答不可…か。何か食べ物をあげたりは?」
「まだ水しか」
「…何か口にした方がいいでしょうね。栄養剤を投与しているとはいえ、お腹は空くでしょうから」
あ、それならこれ飲ませれば。
俺は鞄の中からポットを取り出した。
「料理人に持たされた柚のお気に入りのコンソメスープ」
「翔様。ありがとうございます」
コンソメスープと口にした瞬間柚の目がキラリと光った気がした。
「柚、お腹すいたよな。もうちょっとしたら家にも帰れるからな」
これはもう退院の手続きをし始めてもいいかもな。
柚はコンソメスープをコップの3分の1ほど飲むとまた眠ってしまった。
「おやすみ柚。今度起きる時は家にいるといいな」
早めに帰らせてやろう。
俺達の声で起きるのならいくらでも声をかけ続けてやる。
柚のためならなんだってするさ。
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