普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です｡帰らせて｡

幼児編

98

｢ん…っく｣
｢…ってこらこら｡そこオメガ同士でキスしない｡全く…柚琉くんからやるとは思わなかったよ｣
｢だってほたるくんがおみずのみたいって｡まえになおとにいさんがこうやってのませてくれたから｣
｢…藤沢家…どうなってんだ｡…いやあそこアルファだらけだったな｡…柚琉くんは…発情期どこに逃げるんだよ｣
｢はつじょーき？｣
…はつじょーきって…発情期？
僕が？
ないない｡
その時パンっと軽い音が聞こえた｡
｢…始まったな｣
｢こうとうぶのかりものきょうそうってどんなの？｣
｢…とにかく借り物が鬼畜｡校長のカツラだったり体育教師と競争して勝ってその首にかけている笛を貰えだったり｣
待って｡
後者､借り物じゃない｡
｢ん？藤沢弟か｡…なんでこっち来るんだ｣
ん～？
あ!!
直人兄さんだ!!
直人兄さんは僕達のところまで走ってくると息を整え､こう言った｡
｢柚…ちょっと手伝って｣
｢ふぇ？｣
直人兄さんは僕を抱えるとまたグラウンドの方へ向かった｡
ふぇぇぇ？



｢…これでいいか｡柚､お着替えするよ｣
｢なんでグラウンドにおようふく…？かんいしちゃくしつまで…｣
｢柚？｣
色々質問したいけど…これ競争だし急がなきゃいけないのかな｡
あとから聞こう…｡



｢…これ､なに？｣
｢…ごめんね｣
直人兄さんは首を傾げる僕を抱き上げてゴールへ向かった｡
…なんか…知ってる気がする｡



｢優勝は藤沢弟!!…なになに？お題は…『男の娘』｡…そこで弟使います？｣
｢そこら辺で見つけてくるより早いし柚は可愛いからさ｣
｢まぁ…なんとも可愛らしい男の娘メイドですね｣
そうだ｡
僕､メイドさんの格好にされてたんだった｡
…何故かサイズぴったり｡
一般的なメイド服に白のフリルカチューシャ､黒のタイツと靴まで履き替えさせられてしまった｡
…可愛いと思うよ？
女の子が着れば｡