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幼児編

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「よし」
僕はこっそり部屋へ戻り、ハンカチを開いた。
「やっぱりおいしそうだもんね!!」
「何がですか。…柚琉様、これお預かりしたはずですよね?何故ここにあるのでしょうか」
ダラダラと僕の背中に汗が流れていく。
いや、流れてないけど。
後ろ振り向くの怖いよぉ。
「いつきくんごめんなさい!!…ってあれ?むつきくん?」
「どうも。…これお預かりしますね。卵が入っていることが判明しましたので。…口にしていませんよね?」
「うん。さわってもないよ?…とりあげられちゃった」
「後ほど別のものを用意します。…失礼します」
睦樹くんはそのクッキーを持つと部屋から出ていった。
卵かぁ。
…僕、卵食べるとすっごく苦しくなるんだよね。
小さい時に判明して以来僕のご飯には出なくなったから油断してた。
…僕、狙われるって…そういうことなの?
殺されるの?
アレルギーってね、怖いんだよ。
アナフィラキシーショックを起こせば容易に呼吸困難になる。
…苦しくて苦しくて死んじゃうかもしれない。
なのに…あの人はなぜ僕にあのクッキーを?
殺そうとしたの?
僕、いちゃダメなの?
「ゆずー!!あそぼー!!」
「なつ…」
僕は扉を勢いよく開けて入ってきた夏に抱きついた。
「ん?」
「…ちょっとだけ」
「いいよ。ゆず、こわいしたね。だいじょうぶ。なつがついてる」
夏は僕がどんな思いをしたのか分かってくれて頭を撫でた。


しばらくその状態でいると大分落ち着いた。
「なつ、もうへーき」
「ゆず、つらかったらいってね?なつがぎゅーしてあげる」
「ありがと」
…僕がいらない?
そんなこと知るか。
僕は神様(適当だったけども)に新しいこの命を貰ったんだ。
他人が簡単に奪っていいわけがない。
だよね?
神様。
…あー…見てないかも?
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