普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です｡帰らせて｡

幼児編

57

…なぜ？
なぜ僕はまた本家に来ているの？
いつもならベッドから出るの許さないって感じなのに｡
｢柚｡おじい様とお留守番出来るわね？｣
｢…かあさんどこいくの？ぼくもいく｣
｢ダメよ｡柚はまだ体調悪いでしょう？｣
｢…なつは？なつはどこ？｣
｢夏も父さんと一緒にお出かけよ｣
兄さん達は学校だろうし…｡
僕､初めて1人にされる｡
｢…やだ｣
｢少しだけよ｡すぐ帰ってくるわ｣
｢すこしだけだよね？ちょっとならぼくいけるもん｣
｢柚琉｡わがまま言わずこっちにおいで｣
｢やだ!!かあさんといっしょ!!｣
｢こんな甘えん坊じゃ学校行けないわよ？｣
学校だったら夏がいるもん｡
友達作るもん｡
｢…はぁ｡少々乱暴になってしまうけど仕方ないわね｡…おじい様｡私は少し外に出ます｡柚のことよろしくお願いします｣
｢おぉ｡行ってこい｣
｢やだぁ!!かあさん!!おいてかないでっ!!｣
僕はてててっと走り出したが､僕の前で無情にもドアは閉まった｡
｢…ひっく…かあしゃん…｣
｢柚琉｡おいで｣
｢おじいちゃんやだ!!かあしゃんがいい!!｣
｢…そうか｣
おじいちゃんは目に見えて落ち込んだ｡
…酷いこと言っちゃった｡
でも!!
僕､母さん達と一緒にいたかったんだもん｡
置いてかれるのはやだ｡
なんでだろう…1人になりたくない｡
｢…おじいちゃんひどいこといってごめんなさい｣
僕は扉の方を向いたまま謝った｡
｢柚琉､謝る時は人の目を見るんだぞ｣
｢…ごめんなさい｣
おじいちゃんの方に向き直って頭も下げた｡
｢…そうだ｡おやつがあったんだったな｡柚琉､食べるか？｣
｢おやつ…!!…でもなつとはんぶんできないし｣
｢おじいちゃんとしようか？｣
｢うん!!｣
僕一人分も食べれないもん｡
誰かが食べてくれないともったいないでしょ？
…可愛いのを食べるのはもっと出来ないけど｡