上 下
161 / 839
幼児編

55

しおりを挟む
ひとしきり吐くと、大分良くなった。
「…のどがやける…くちのなかがすっぱい…おみず」
「こちらに」
僕はコップを手に取りこくんと少し水を飲んだ。
「…いつきくん…なんでそうきゅうにあらわれるの…」
「…驚かれました?」
「うん…こわい」
「ではこの方法はもう辞めます」
樹くんは洗面器(吐瀉物入り)を持つと音もなく歩き、部屋を出た。
…足音しなかった。
絨毯あるけど…そんなに足音ってしないもの?
「…ゆず、だいじょーぶ?」
「なつ。…うん。なんとか」
「…きもちわるいのない?まだはく?」
「いまはいい。なつ…ごめんね。あそぶのとちゅう…」
「いいの。ゆず1ばん」
夏はいつも遊びたいと言うのに今日、この時だけはそんなことも言わず僕に引っ付いた。
「柚、吐いたって本当なの?」
「…かあさん。うん…」
「…いつもの風邪じゃなさそうね。食欲は…」
「ない」
「…でしょうね。お水と…ゼリーにしましょう。今日のおやつのりんごゼリーがあるから」
「なつのもゆずにあげるっ!!」
「ありがと…でもゼリーもいらない…なにもたべたくないの」
「…体力落ちちゃうわね」
でも…仕方ないし。
僕弱い子だし。
病弱って言うのかな?
…小学校行けるか不安になってきた。
行っても休みがちになっちゃうよね。
留年…するかな。
しないよね?
したくないもん。
あ…でも受験あるんだった…。
「今日は樹くんにそばに控えててもらうから何かあったらすぐに言いなさい。…あとで病院も行きましょうね」
「しはんやくでいいよ。はきけどめと…ねつさましちょうだい」
「ダメよ。ちゃんと診断してもらうの」
だって…高いし。
治療費かかっちゃうもん。
薬局で売ってる薬でいいよ。
「父さんが帰ってきたら行きましょうね」
…毎度思うけど…なんで父さんがいる時なの?
車は運転手さんがいるし母さんだけでも行けるよね?
しおりを挟む
感想 530

あなたにおすすめの小説

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

親衛隊総隊長殿は今日も大忙しっ!

BL
人は山の奥深くに存在する閉鎖的な彼の学園を――‥ 『‡Arcanalia‡-ア ル カ ナ リ ア-』と呼ぶ。 人里からも離れ、街からも遠く離れた閉鎖的全寮制の男子校。その一部のノーマルを除いたほとんどの者が教師も生徒も関係なく、同性愛者。バイなどが多い。 そんな学園だが、幼等部から大学部まであるこの学園を卒業すれば安定した未来が約束されている――。そう、この学園は大企業の御曹司や金持ちの坊ちゃんを教育する学園である。しかし、それが仇となり‥ 権力を振りかざす者もまた多い。生徒や教師から崇拝されている美形集団、生徒会。しかし、今回の主人公は――‥ 彼らの親衛隊である親衛隊総隊長、小柳 千春(コヤナギ チハル)。彼の話である。 ――…さてさて、本題はここからである。‡Arcanalia‡学園には他校にはない珍しい校則がいくつかある。その中でも重要な三大原則の一つが、 『耳鳴りすれば来た道引き返せ』

噂の補佐君

さっすん
BL
超王道男子校[私立坂坂学園]に通う「佐野晴」は高校二年生ながらも生徒会の補佐。 [私立坂坂学園]は言わずと知れた同性愛者の溢れる中高一貫校。 個性強過ぎな先輩後輩同級生に囲まれ、なんだかんだ楽しい日々。 そんな折、転校生が来て平和が崩れる___!? 無自覚美少年な補佐が総受け * この作品はBのLな作品ですので、閲覧にはご注意ください。 とりあえず、まだそれらしい過激表現はありませんが、もしかしたら今後入るかもしれません。 その場合はもちろん年齢制限をかけますが、もし、これは過激表現では?と思った方はぜひ、教えてください。

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

眠り姫

虹月
BL
 そんな眠り姫を起こす王子様は、僕じゃない。  ただ眠ることが好きな凛月は、四月から全寮制の名門男子校、天彗学園に入学することになる。そこで待ち受けていたのは、色々な問題を抱えた男子生徒達。そんな男子生徒と関わり合い、凛月が与え、与えられたものとは――。

お迎えから世界は変わった

不知火
BL
「お迎えに上がりました」 その一言から180度変わった僕の世界。 こんなに幸せでいいのだろうか ※誤字脱字等あると思いますがその時は指摘をお願い致します🙇‍♂️ タグでこれぴったりだよ!ってのがあったら教えて頂きたいです!

私の事を調べないで!

さつき
BL
生徒会の副会長としての姿と 桜華の白龍としての姿をもつ 咲夜 バレないように過ごすが 転校生が来てから騒がしくなり みんなが私の事を調べだして… 表紙イラストは みそかさんの「みそかのメーカー2」で作成してお借りしています↓ https://picrew.me/image_maker/625951

室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

BL
SECRET OF THE WORLD シリーズ《僕の名前はクリフェイド・シュバルク。僕は今、憂鬱すぎて溜め息ついている。なぜ、こうなったのか…。 ※シリーズごとに章で分けています。 ※タイトル変えました。 トラブル体質の主人公が巻き込み巻き込まれ…の問題ばかりを起こし、周囲を振り回す物語です。シリアスとコメディと半々くらいです。 ファンタジー含みます。

処理中です...