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幼児編

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「…はふ」
僕はまた熱を出した。
「…よわすぎ。ぼく」
季節の変わり目に熱出すとか…。
いや、前のクラスにこんな子いたけどさ。
「柚。薬、持ってきたわよ」
「…かあさん。ありがと」
「今回は呂律は回ってるのね。…おかゆ食べれそう?」
「…ううん…いらない。しょくよくない」
「…でも何か食べないとダメよ?…たまご酒はダメだし…スープでも飲みましょうか」
「コンソメスープ…がいい」
「分かったわ」
母さんは僕の要望を叶えてくれるようだ。
…美味しいの。
うちのコンソメスープ。
金色で何も入ってないのに色んな味がするの。
僕はころんと寝返りをうち、体を横に向けた。
「…ねつ……くすり」
あの薬飲めば楽になれるのに。
僕は手を伸ばして薬とコップを取ろうとしたが、ぷるぷるするだけで腕は全然伸びなかった。
横の机まで30cmなのに…。
「柚。持ってき……お水飲みたいの?」
「くすり。ねつ、らくになるの」
「これは食事のあとよ。スープ、飲めるだけ飲んでくれる?」
「うにゅ…」
母さんは僕の背中にクッションを挟み、体を起き上がらせた。
僕は両側に取手のついた小さなスープカップを受け取り、ふーふーと息を吹いて冷ました。
そして少しだけ口にし…
「…おいしい」
と呟いた。
「柚が飲めるぐらいの熱さに調節してくれてたの。食欲がないならこれぐらいなら食べれるだろうって」
「ありがとうっていっといて」
「ふふ。ないちゃうわよ?」
「…うそ。だいのおとながこれぐらいでなくはずないもん」
「どうかしらね。柚だもの。…あ、そうそう。夏は来たそうだったけど熱が上がっちゃうとまずいから止めておいたわ」
「…ありがとう。でも…べつにいいよ?」
母さんは飲み終わったスープカップを回収すると僕を寝かせ、布団をかけた。
「さ、たくさん寝て元気になりましょうね」
「…くすり」
「あ、そうだったわ」
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