普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です｡帰らせて｡

幼児編

14

｢柚｡よく寝れた？｣
｢うん｣
｢じゃあ病院行こうか｣
え…それ本当に行く気だったの？
父さんは僕を抱き上げて自分の上着を被せた｡
｢車を表に｣
｢はい｣
｢…雫は？｣
｢奥様はもうお車でお待ちです｣
｢そうか｣
父さんは家のすぐ前に停めた車に僕を抱いたまま乗り込んだ｡
｢…柚｡寒くない？｣
｢だいじょーぶ｣
｢お水は？飲む？｣
｢それもだいじょーぶ｣
｢着くまで寝てていいよ？｣
｢さっきまでねてたから｡ねむくない｣
｢そっか｣
父さんはさらに僕を抱きしめた｡
｢…柚…｣
…何をそんなに心配してるんだろ｡
ただ熱出しただけなのに｡

｢ありがとうございました｣
診察が終わったあとも父さんはずーっと僕を抱いたままだった｡
僕､今日まだ1人でやったの着替えしかない｡
それも脱ぐだけだったし…｡
｢…なんともなくてよかった｡なんか病気だったらどうしようかと…｣
｢とうさんしんぱいしすぎ｣
｢するよ｡柚だもん｣
｢ぼく､そんなによわくないよ？｣
｢柚は小さい時の雫に似ちゃったから…｣
…母さんも小さい頃こんなに病弱だったの？
｢とうさん｡らいげつの､にいさんのたいーくさい｡いける？｣
｢柚がその日に元気ならね｣
よし､頑張ろう｡
今月いっぱいは夏休みだけど来月からは兄さん達は学校に行かなきゃならないから｡
小学校なのに体育祭って…って思ったけど､話を聞く限りめちゃ楽しそうなんだもん｡
｢さ､帰ろうか｡雫も翔達も待ってるし｣
｢うん!!…けほっ｣
｢柚！？大丈夫！？｣
だいじょーぶ｡
元気に見せようと大きな声出したらむせただけ…｡