βが番になる方法

叶希

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1話

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その日はいつも通りに大学が終わった後バイトをしていた。

一人が退勤して9時を回った頃、店長に呼ばれた。
「深山くん、ちょっといいかな?」
店の奥に戻ると、困惑や心配が入り交じった表情をしながら受話器を持って立ち尽くしていた。
「はい、どうかしましたか?」
「深山くんってαの、男性の相手も受けてたっけ?」
これはαのラット化についての話だろう。
「いえ、NGは出してませんが……αなら女性の方がいいのでは?」
ここ以外の他の店にも言えることだが、この様なサービスパック基本的にΩを男性が、αを女性が相手にすることが多い。その方が準備に時間がかからないし、そもそも客がその性別を指定してくるからだ。

「お客様が男性を指定されたんです。今日はまだ他の男性スタッフが来ていませんし、急ぎのようなので出来れば深山くんにお願いしたいなと」
そのように言われてしまえば断れないだろう。したことがないから抵抗があるだけかもしれないし、きっと大丈夫だ。

「分かりました。もうお客様は隣のホテルにいるんですね?すぐ向かいます」






203号室。ここか。
コンコンと扉をノックする。
「こんにちは、Linkerの深山です。先程お電話くださった高宮様でよろしいですか?」
「……そうです、入って下さい」
少しの沈黙の後、返答が帰ってきた。
俺はフロントで受け取った鍵を使って扉を開ける。
中には頬を赤く染め、興奮した様子の男性が座っていた。部屋に入って来た俺にその人が視線を向ける。

──これが、ラット化したα。

至近距離で見るのは初めてだった。βの俺でも分かる。これが、αだ。本能が警鐘を鳴らす。これは危ないと、恐れられる者だと。
視線の中にラット特有の鋭い迫力がある。まるで猛獣にでも睨まれているようだ。対峙している相手は自分とさして変わらない体格の持ち主なのに。

そんなことを考えながらベットの方へと向かう。
「……よろしくお願いします」
お客さんにそう言われると同時に押し倒されて、服を脱がされる。
うちの店ではαを相手にするとき、女性は体を傷付けないために前戯を必須にしているが、男性は部屋に入る前に店の奥のシャワー室で自分で解しておく。今時男女差別のように言われるかも知れないが男性は女性に比べて解すのに時間がかかるため、効率を重視する至って普通のやり方である。

それなのにこの人は確かめるように俺の穴に指を挿れて動かす。
「ぁ、あの、ちゃんと解してあるので大丈夫ですよ?」
困惑気味にそう言うと、
「初めてでしょうし、少し心配で」
と、目だけを少しだけはにかませるように笑った。

そう言いながらいつの間にか二本入っていた指を俺の中から引き抜く。先程自分でやったのとは違い、言い知れぬ快感が後を引く。
中に刺激を与えていたばらばらに動く指が無くなり、そしてすぐに熱を持った物が入り口に当たった。
と思った瞬間、中が指とは比べものにならないほどの質量で埋まる。

そして、その先端が中にある何かをぐりっ、と擦る。
「あっ、」
自分の物だとは思えない声を耳に聞き、それと同時に自分の中心がゆるゆると勃ち上がった。

「あっ、ん、待っ!」
これでもかと足を広げさせられ、掴まれ固定される。
そして中で止まっていた中心が奥を突く。
容赦なく、欲望のままに気持ちいいところと奥をぐりぐりと擦られ、突かれる。

「あぁっ!も、イきま、んぁっ!~~~~」
勢いよく自分の中心が欲を吐き出す。
イった勢いで後ろをきつく締め付けて、中にある物をよりしっかりと感じさせられる。
お客さんも少しきつそうな声を出しながらイった。
俺の中から中心が引き抜かれる。口が開いたままなのか、ひんやりとした空気が中に触れる。

「あの、ごめんなさい」
急にお客さんに謝られた。
「え、どうしたんですか」
「あの、きつい体勢でさせてしまって……」
きつい体勢、とは今の行為のことだろう。恥ずかしげもなく声を上げてしまって、今更ながら頭にかぁっと血が上がった気がした。
「い、いえ!こちらこそ声を上げてしまってすみませんでした。体勢はお客様のお好きなかたちで大丈夫です」
恥ずかしさを隠すように早口で喋る。
「じゃあ、次はバックでもいいですか?」
「あ、はい!こうでいいですか?」

言われたとおりお客さんに背中を向け、四つん這いになる。すると、腹を少し持ち上げられ尻を突き出す格好に変えられてズチュン、と言う音を立てて先程よりゆっくり中心を入れられる。
その分中をゆっくりと擦られ、先程と同じようになぜか自分の中心も勃ち上がり、気持ち良くて声が出る。
「ぅあ、は、、あ!」
のし掛かられるような体勢になり、中心が奥まで一気に入る。肘がかくんと曲がり、声が出ないように手が頭を抱える。
そうやって体勢を変えている間も中で激しく中心を動かされる。

「ん、ぅ、」
腰を掴まれているので先の方だけが入っているときは一緒に腰が持ち上げられ、奥まで一気に突かれると体がベットに押しつけられる形になる。
それに先程イったばかりの敏感な自分の中心がシーツに擦れて、熱が溜まっていく一方だった。
でも、緩急をつけて動かされるので『もうイく』と思うとシーツから中心が離れてしまう。

自分で扱こうと思い、指先で触れるとイけなかったのが嘘のように勢いもないまま簡単に達した。
「ぁ……んぅ!?」
少し楽になった、と思うとお客さんも達した。自分とは違い、一度目の時のように勢いよく。

一度抜かれ、ゴムを付け替えるとすぐにまた入れられる。自分の背中越しにちらっと見たお客さんの顔はこの部屋に入ったときよりも、もっと獰猛な獣のような表情をしていた。
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