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最終章 最強コンビ解散!? ~最後のおにぎりはビビンバ風?~

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「え! 隼斗君がサヤちゃんのお父さんの会社に!?」

 私の方を見ながら、大きい声でそう言った。
 お父さんの会社に……隼斗君が!?
 どうしてそんなことに?

「わかりました! すぐにサヤちゃんに行ってもらいます!」

 受話器を置くと、田尻先生は困惑気味に私に話し出す。
 私も、一秒も早く内容が知りたかった。

「隼斗君、置き手紙を書いていったみたい」
「え、ど、どんなですか?」
「六原さんのお父さんの会社に行ってくる。おにぎりはピンチを救うんだ……だって」

 な、なんじゃそりゃ。
 ってことは、隼斗君……お父さんの会社でおにぎりを作る気なの?
 どうしてそうなるのよ。

「サヤちゃん、今日は学校はいいから。お父さんの会社に行ってみれば?」
「え、いいんですか?」
「みんなには上手く言っておくわ。こういう時は、とことん向き合った方がいいのよ」
「向き合う、か……」

 田尻先生は「お父さんと、そして、隼斗君ともね!」と最後に付け足した。
 そうだよね……このまま逃げるように転校するなんて、ダメだよね!
 お父さんにも、私の本当の気持ち、伝えてないし。

 私は学校を抜け出して、お父さんの会社に向かうことに決めた。

「気をつけて行ってくるのよ! 駅前にある会社なんでしょ?」
「はい! 大きい会社みたいなので、私でも行けると思います!」

 隠れて学校を飛び出して、お父さんの会社に向かう。
 そういえば、どうして隼斗君は私のお父さんの会社を知っているんだろう……。
 そう考えながら走っていると、頭に寿矢の存在が浮かんだ。

「寿矢に聞いたのかな……昨日誰かと電話していたし……」

 確かに、昨日の夜寿矢は誰かと電話していた。
 しかもその後、変によそよそしい態度だった。
 きっと、っていうか、絶対そうだ。
 昨日から、隼斗君はお父さんの会社に行こうと計画していたに違いない。

 信号待ちのたびに、ソワソワしてしまう。
 この待ち時間がもったいない。
 早く行かないと、隼斗君は勝手にお父さんに話を始めるだろう。
 私も間に入らないと、お父さん……困惑しちゃうよな。

「っていうか、おにぎりはピンチを救うって、どういうことよ……」

 最後の信号待ち。
 もう目の前に、大きなビルは見えている。
 青に変わるのを待ちながら、私はボソッと呟いた。
 あの大きなビルの三十五階にあるお父さんの会社で、隼斗君はおにぎりを作ろうとしているの?

 隼斗君はおにぎりをお父さんに食べさせて、どうするつもりなんだ。
 おにぎりで、何を訴えかけるんだろう。
 疑問を浮かべながら、駅前にそびえ立つ大きなオフィスビルの中に入る。
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