転校生はおにぎり王子 〜恋の悩みもいっちょあがり!~

成木沢 遥

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四章 先生の恋にもおにぎりを ~胃袋を掴む、カルボナーラ風ベーコンエッグ~

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「あら、サヤちゃん? どうしたの?」

 本当にたまたま通りかかっただけ……私の口からそう答える前に、先に隼斗君が話し出した。

「六原さん、さてはもう俺のおにぎりが食べたくなったんだな!」

 違うよ……って否定はできないか。
 私は「ま、まあね」と答えた。
 田尻先生は話に割り込む形で、「ここが隼斗君のお家なの?」と質問する。

「そうだよ! ここが父さんの店で、俺の家! 先生、寿司食べにきたの?」
「あ、いやぁ……たまたま通りかかって、新しいお店だったから、つい中が気になって……」

 田尻先生はもう一度お店をよく見てみる。
 看板が目に入ると、『わかさ』という名前でピンときたみたいだ。

「確かに、よく見たら隼斗君の苗字が店名になってるのね」
「そうだよ! 良かったら先生も食べていきなよ!」
「え、ええ?」
「俺、父さんに聞いてくる!」
「ちょ、ちょっと……」

 隼斗君が店の中に戻る。
 私と田尻先生が店の前で見つめ合った。

「サヤちゃんは、このお店来たことあるの?」
「はい、一度だけ」
「そうなのね。たまたま見つけたお店が隼斗君のお寿司屋だったとはね……一度はお邪魔しようと思ってたのよ」
「じゃあもし入れたら、タイミングばっちりですね」

 次に扉が開くと、隼斗君の後ろからお父さんもついてきた。

「ああ! 先生いつも隼斗がお世話になっております! サヤちゃんまで来てくれて」

 私はコクッと頷いて笑顔を見せた。
 先生はすぐにペコリと頭を下げる。

「こちらこそ、隼斗君はクラスの人気者で、いつも助けられています」
「本当ですか? 転校生だから、馴染んでくれるか心配でしたけど……良かったです」
「それはもう……転校初日からおにぎりを作ってくれて。みんなが隼斗君のおにぎりのファンになったんですよ」

 隼斗君がニッコリ笑う。つられて私も笑ってしまった。
 お店の前で、みんなが温かい気持ちになる。
 お父さんは話を変えるように「そうだ」と言って手を叩いた。

「先生、今日はお休みですよね?」
「あ、はい……」
「良かったら食べていきませんか? おもてなしさせていただきますよ」
「そんなそんな! 申し訳ないですよ!」

 隼斗君がお父さんの後ろから「食べていきなよ!」と声にする。
 絶対食べていった方がいいよ……隼斗君家のお寿司、最高だったもん……。
 遠慮している田尻先生に、隼斗君が「じゃあおにぎり食べていく!?」と聞いた。
 ああ……ここでもおにぎりなんだ。
 思わず笑いそうになった。

「あ、そ、そうね! じゃあ隼斗君のおにぎり、食べさせてもらおうかな!」
「おお! やったー! 父さん、いいでしょ?」
「もちろんだとも。先生、どうか遠慮せずに、寿司も食べていってください」
「じゃ、じゃあ……お言葉に甘えて」

 あ……隼斗君のおにぎりと、お父さんのお寿司が食べられる流れになった。
 最高のコースだな、それ。
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