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四章 先生の恋にもおにぎりを ~胃袋を掴む、カルボナーラ風ベーコンエッグ~
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今日はいつもと違ったおにぎり。
おにぎりをお肉が包んでいる。
これは寿矢、絶対好きだぞ……。
四個のおにぎりを中皿にのせて、リビングのダイニングテーブルに運ぶ。
四席に私と隼斗君、そして寿矢とお母さんが座って、いただきますを揃えて言った。
「小学生でこんなに美味しそうな肉巻きおにぎりが作れるのねぇ。早速いただくわ」
みんなが同時におにぎりを口に入れた。
お肉のジューシーさ、そしてお米に混ざっているミックスベジタブルの食感が面白い。
焼き肉のタレも、この濃さが最高だ。
寿矢の方を見てみると、もうラストひと口になっていた。
どれだけ美味しいんだ……ほっぺにタレをつけて、やんちゃに食べている。
まさに無我夢中って感じだ。
「どうだ弟君! 美味しいかい?」
「は、はい! 足りないくらいです!」
寿矢の可愛い言葉で、食卓は笑いに包まれた。
お母さんがひと口食べるたびに「美味しい」と口にし、隼斗君は満足そうにしている。
まさにパーフェクトな肉巻きおにぎりだ……私はほとんど隣で見ていただけだったけど。
でも、毎回こんなに簡単にできるなら、私にもできるかも。
今度寿矢に作ってあげようかな……。
「弟君! 今度試合の時に、このおにぎり作ってあげるよ! これ食べたらパワーが湧いてくるだろ?」
「いいんですか? もちろんお願いしたいです……何か元気になるし……」
「任せなさい! それにしても礼儀正しい弟君だね! ね、六原さん?」
急に話しかけられて、一瞬ビクッとなる。
お母さんが私よりも先に「でしょ? サヤより大人なの」と答えた。
「ちょっと、お母さん! それは言い過ぎ!」
隼斗君は笑いながら「六原さんも優しくて最高ですよ!」とお母さんに言ってくれた。
隼斗君……嬉しいこと言ってくれるなぁ。
お母さんは鼻高々に笑う。
「それは嬉しいわ! 自慢の娘息子なの!」
あらら……すっかりその気になっちゃって。
隼斗君、お母さんをおだてるのも上手だな。
お母さんは笑い終わると、今度は隼斗君に質問した。
「でも、どうして隼斗君はおにぎり作りのアシスタントに、サヤを選んだの?」
隼斗君は真剣な表情に変わった。
確かに、どうして隼斗君は私を誘ってくれたんだろう……。
「最初に俺のおにぎりを食べた時、こんなに美味しいおにぎり、食べたことないって言ってくれたから」
……最初は、塩おにぎりだったな。
隼斗君が転校してきた初日に食べたあのおにぎり……空腹なのも相まって、衝撃的な美味しさだったのを覚えている。
あの時のこと、隼斗君は覚えていてくれたんだ。
おにぎりをお肉が包んでいる。
これは寿矢、絶対好きだぞ……。
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四席に私と隼斗君、そして寿矢とお母さんが座って、いただきますを揃えて言った。
「小学生でこんなに美味しそうな肉巻きおにぎりが作れるのねぇ。早速いただくわ」
みんなが同時におにぎりを口に入れた。
お肉のジューシーさ、そしてお米に混ざっているミックスベジタブルの食感が面白い。
焼き肉のタレも、この濃さが最高だ。
寿矢の方を見てみると、もうラストひと口になっていた。
どれだけ美味しいんだ……ほっぺにタレをつけて、やんちゃに食べている。
まさに無我夢中って感じだ。
「どうだ弟君! 美味しいかい?」
「は、はい! 足りないくらいです!」
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お母さんがひと口食べるたびに「美味しい」と口にし、隼斗君は満足そうにしている。
まさにパーフェクトな肉巻きおにぎりだ……私はほとんど隣で見ていただけだったけど。
でも、毎回こんなに簡単にできるなら、私にもできるかも。
今度寿矢に作ってあげようかな……。
「弟君! 今度試合の時に、このおにぎり作ってあげるよ! これ食べたらパワーが湧いてくるだろ?」
「いいんですか? もちろんお願いしたいです……何か元気になるし……」
「任せなさい! それにしても礼儀正しい弟君だね! ね、六原さん?」
急に話しかけられて、一瞬ビクッとなる。
お母さんが私よりも先に「でしょ? サヤより大人なの」と答えた。
「ちょっと、お母さん! それは言い過ぎ!」
隼斗君は笑いながら「六原さんも優しくて最高ですよ!」とお母さんに言ってくれた。
隼斗君……嬉しいこと言ってくれるなぁ。
お母さんは鼻高々に笑う。
「それは嬉しいわ! 自慢の娘息子なの!」
あらら……すっかりその気になっちゃって。
隼斗君、お母さんをおだてるのも上手だな。
お母さんは笑い終わると、今度は隼斗君に質問した。
「でも、どうして隼斗君はおにぎり作りのアシスタントに、サヤを選んだの?」
隼斗君は真剣な表情に変わった。
確かに、どうして隼斗君は私を誘ってくれたんだろう……。
「最初に俺のおにぎりを食べた時、こんなに美味しいおにぎり、食べたことないって言ってくれたから」
……最初は、塩おにぎりだったな。
隼斗君が転校してきた初日に食べたあのおにぎり……空腹なのも相まって、衝撃的な美味しさだったのを覚えている。
あの時のこと、隼斗君は覚えていてくれたんだ。
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