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四章 先生の恋にもおにぎりを ~胃袋を掴む、カルボナーラ風ベーコンエッグ~
①
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「はじめまして! 六原さんのクラスに転校してきた、若佐 隼斗です!」
「あらら、こんなイケメンのお友達がいるなんてね! サヤ、良かったわね!」
あれ? どうして、隼斗君が家にいるんだっけ?
ああ、そうだ……今日は弟の寿矢におにぎりを振る舞ってくれるんだ。
休みの日に、私の家にやってきた。
今日はお父さん以外、全員家にいる。
「あ、姉ちゃんがいつもお世話になってます」
「おお! 弟君! すごく礼儀正しいね!」
「部活で先生から、あいさつだけは厳しく言われているから……」
「柔道部なんだよね? じゃあ食べ盛りだ!」
寿矢、隼斗君が来てからちょっと緊張しているみたいだ……。
でも、柔道部は礼儀やルールに厳しいから、寿矢は同じ小学三年生の中でもかなりしっかり者だと思う。
がっしりした体格とふっくらした顔周りに、つぶらな瞳が可愛い弟。そして背も大きい。隼斗君と同じくらいかな?
隼斗君はお母さんに誘導されて、キッチンの方に入っていった。
「サヤから話は聞いてるわよ! おにぎり王子がやってきたって」
「そうなんですよ! 北海道は札幌からやってきました!」
「札幌? あら、それはちょうどいいわ……私たちもねぇ……」
ああ! お母さん、余計なことを言おうとしてる!
私は慌ててお母さんの腕を掴み「もういいから!」とキッチンの外へ追いやった。
「何よ、慌てて……わかったから、火の扱いだけ気をつけなさいよ」
隼斗君は不思議そうな表情を浮かべたけど、すぐに切り替えてキッチン周りの確認を始めた。
良かった……特に気にならなかったみたいだ。
もう、お母さんったら……北海道に転校すること、話そうとして……。
それはまだ隼斗君に言いたくない。
言う勇気がない。
ここまで仲良く活動してきて、これからだっていう時に離れ離れになってしまうなんて。
それを知ったら、隼斗君は私のこと嫌いになると思うから……。
「今日は弟君に、力のつくおにぎりを作るぞ!」
「……え? あ、うん!」
隼斗君がスーパーの袋の中に入った食材たちを取り出し並べる。
寿矢のために、メニューを考えて持ってきてくれたんだ……。
気を取り直して、今日もおにぎり作りのアシスタントをしないと。
「六原さん、米は用意できてる?」
「あ、お母さんが朝炊いた米使っていいって! 炊飯器に入ってる!」
「オッケー、じゃあ米はそれを使わせてもらおう。そして今日使う食材はこれね!」
パックに入ったお肉。これは……豚バラ肉かな?
細かく切られたチーズは、ピザ用のチーズか。
そしてみじん切りされた青ネギ、あとは冷凍食品のミックスベジタブル。
その横には調味料が並んでいる。
今日も、使う食材はそこまで多くはなさそう。
「今回は、男子がみんな大好きな……とろとろチーズ入りの肉巻きおにぎりを作るよ!」
「あらら、こんなイケメンのお友達がいるなんてね! サヤ、良かったわね!」
あれ? どうして、隼斗君が家にいるんだっけ?
ああ、そうだ……今日は弟の寿矢におにぎりを振る舞ってくれるんだ。
休みの日に、私の家にやってきた。
今日はお父さん以外、全員家にいる。
「あ、姉ちゃんがいつもお世話になってます」
「おお! 弟君! すごく礼儀正しいね!」
「部活で先生から、あいさつだけは厳しく言われているから……」
「柔道部なんだよね? じゃあ食べ盛りだ!」
寿矢、隼斗君が来てからちょっと緊張しているみたいだ……。
でも、柔道部は礼儀やルールに厳しいから、寿矢は同じ小学三年生の中でもかなりしっかり者だと思う。
がっしりした体格とふっくらした顔周りに、つぶらな瞳が可愛い弟。そして背も大きい。隼斗君と同じくらいかな?
隼斗君はお母さんに誘導されて、キッチンの方に入っていった。
「サヤから話は聞いてるわよ! おにぎり王子がやってきたって」
「そうなんですよ! 北海道は札幌からやってきました!」
「札幌? あら、それはちょうどいいわ……私たちもねぇ……」
ああ! お母さん、余計なことを言おうとしてる!
私は慌ててお母さんの腕を掴み「もういいから!」とキッチンの外へ追いやった。
「何よ、慌てて……わかったから、火の扱いだけ気をつけなさいよ」
隼斗君は不思議そうな表情を浮かべたけど、すぐに切り替えてキッチン周りの確認を始めた。
良かった……特に気にならなかったみたいだ。
もう、お母さんったら……北海道に転校すること、話そうとして……。
それはまだ隼斗君に言いたくない。
言う勇気がない。
ここまで仲良く活動してきて、これからだっていう時に離れ離れになってしまうなんて。
それを知ったら、隼斗君は私のこと嫌いになると思うから……。
「今日は弟君に、力のつくおにぎりを作るぞ!」
「……え? あ、うん!」
隼斗君がスーパーの袋の中に入った食材たちを取り出し並べる。
寿矢のために、メニューを考えて持ってきてくれたんだ……。
気を取り直して、今日もおにぎり作りのアシスタントをしないと。
「六原さん、米は用意できてる?」
「あ、お母さんが朝炊いた米使っていいって! 炊飯器に入ってる!」
「オッケー、じゃあ米はそれを使わせてもらおう。そして今日使う食材はこれね!」
パックに入ったお肉。これは……豚バラ肉かな?
細かく切られたチーズは、ピザ用のチーズか。
そしてみじん切りされた青ネギ、あとは冷凍食品のミックスベジタブル。
その横には調味料が並んでいる。
今日も、使う食材はそこまで多くはなさそう。
「今回は、男子がみんな大好きな……とろとろチーズ入りの肉巻きおにぎりを作るよ!」
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