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三章 クラスメイトは幼馴染 ~勇気が出る、鮭ときのこのバター焼きおにぎり~

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「決めたっ! 今回は焼きおにぎりにしよう! しかも鮭ときのこのバター焼きおにぎりだ!」

 うわ、何それ? 鮭ときのこ? しかもバター焼きおにぎり?
 名前だけでも贅沢なのがわかる。
 焼きおにぎり、私大好きなんだよなぁ……。

「六原さん! そうと決まれば、早速作業開始だ!」
「え、今から!?」
「当たり前だろ! 完璧な状態でケイタ君に教えたいじゃん!」

 そりゃあそうだけど……。
 でも具材は? また松本さんに頼むの?
 というか、そろそろ帰りたいんだけど……。
 困った顔で隼斗君を見ていると、私の表情に気づいた隼斗君はすぐに謝ってきた。

「あ! ごめんごめん! ついテンションが上がっちゃって! いくら何でも今からはやり過ぎか!」
「そ、そうだね……食材も揃ってないだろうし……」
「確かに! 六原さんの言う通りだね!」

 隼斗君はちょっと寂しそうだった。
 今回はしょうがない。もうすでに一個目のおにぎりを作っているんだから。

「あ、じゃあさ! 明日の放課後、俺の家で作業しよう!」
「隼斗君の家で?」
「ああ! ウチなら松本さんに頼まなくても食材あるしさ!」
「お店は? 大丈夫なの?」
「店じゃなくて二階のキッチンでやるんだ! 店は父さんが働いてて忙しいから!」

 なるほど……家のキッチンを使うのか。
 それなら松本さんに迷惑もかからないし、悪くないけど……。

「私がお邪魔して、迷惑じゃないの?」
「全然! 母さんにも会わせたいし!」

 え、隼斗君のお母さんって……あのお母さんか……。
 隼斗君の転校初日に、偶然見たことがある。
 その時は隼斗君、怒られていた気がするけど……。
 私、怒られないかな? ちょっと不安だなぁ。

「よし! 決まりだね! じゃあ明日学校終わったら一緒に帰ろ!」
「う、うん!」

 隼斗君と一緒に帰る約束をした……それはちょっと嬉しいかも。
 あれ? 私、今ウキウキした気持ちになった……。
 いつも隼斗君と一緒にいるのに、いつもとは違う感覚に……。
 なんか、胸がキュンとする。

 ――帰ってからも、隼斗君のことを考えていた。
 明日は一緒に帰れる。その誘いが、私のハートを揺らしてきた。
 待って……今まで気づかなかったけど……私、隼斗君のこと……。

 いいや! 私はただのアシスタント!
 隼斗君と一緒に、日本一のおにぎりを作る……その目的のために力を尽くす、ただのパートナー!
 隼斗君を好きになっちゃいけないの!

 ……だって、私はもう少しで転校しちゃうから。
 好きになっても、意味ない。
 離れ離れになるくらいなら、好きになんかなっちゃいけないんだ……。
 でも今日、隼斗君に「一緒に帰ろ!」って言われて……自分の素直な気持ちに気づいてしまったような……。
 そんな気持ち、邪魔なだけなのに……。

 明日からも、ちゃんと意識しないで話さないと。
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