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三章 クラスメイトは幼馴染 ~勇気が出る、鮭ときのこのバター焼きおにぎり~
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私は苦い顔をしてしまった。
家族ぐるみで仲良くなったら、転校するってなった時に余計に辛くなっちゃうだろうから……。
「ん? どうしたの六原さん? 俺が弟君に会ったらマズいの?」
「え、ええ? そ、そんなことないよ」
「なら良かった! じゃあ今度六原さんの家行くね!」
私は引きつった顔のまま「うん……」と答えた。
寿矢ならきっと、隼斗君に懐いちゃうだろうな……。
先輩に好かれるほどの愛嬌があるし……何より隼斗君のおにぎりに胃袋を掴まれる気がする。
ああ……隼斗君とおにぎり、ずっと作っていたいなぁ……。
”コン、コン”
突然、閉まっていたドアがノックされた。
ヤバい……ついに先生に怒られる?
すぐにドアの方を見てみると、すりガラスの奥でこっちを見てくる男の子の姿があった。
隼斗君は首を傾げながら「入って!」という声を出した。
ガラガラと、家庭科室の引き戸を開ける。
中に入ってきたのは……。
「あ、ごめん、おにぎりの研究中だよね?」
この子は確か……同じクラスのケイタ君だ!
肌は日焼けしていて、短髪。爽やかなサッカー少年……だったはず。
ケイタ君が私たちに、一体何の用なんだろう。
隼斗君が私よりも先に口を開いた。
「そうだけど……何か用?」
「あ、あの……僕におにぎりの作り方を教えてほしいんだ……」
私は思わず「おにぎりの作り方?」と聞き返してしまった。
ケイタ君はもじもじしながら「うん」と小さく答える。
隣の隼斗君の反応を見てみると、やはり嬉しそうにしていた。
「え、なになに!? 君もおにぎりが好きなの?」
「あ……そうなんだけど……」
隼斗君のテンションとは真逆で、ケイタ君は声が小さくどこか不安そうだ。
何か言いたそうなケイタ君に、隼斗君はケイタ君の俯いた顔を覗くようにして聞いた。
「どうしたの?」
「あの……同じクラスにハンナっているの、わかる?」
「ハンナ……ああ、あのハーフの子ね!」
隼斗君、もうクラスのみんなのこと覚えたんだ。
ハンナちゃんとは、私もちょっとだけ話したことがある。
イギリス人と日本人のハーフで、フルネームは鈴木 ハンナ ホーリン……だった気がする。
みんなからはハンナちゃんと呼ばれている。
「実は僕、ハンナと幼馴染なんだけど……最近ハンナの両親が、ケンカばかりしているらしくて……」
ケイタ君とハンナちゃん、まさか同級生だったなんて。
ハンナちゃんの家庭の話まで知ってるってことは、相当家族ぐるみの付き合いなんだな。
ハンナちゃんの家族が心配なのはわかるけど、だからって、どうしておにぎり?
私も隼斗君も、黙ってケイタ君の話を聞く。
家族ぐるみで仲良くなったら、転校するってなった時に余計に辛くなっちゃうだろうから……。
「ん? どうしたの六原さん? 俺が弟君に会ったらマズいの?」
「え、ええ? そ、そんなことないよ」
「なら良かった! じゃあ今度六原さんの家行くね!」
私は引きつった顔のまま「うん……」と答えた。
寿矢ならきっと、隼斗君に懐いちゃうだろうな……。
先輩に好かれるほどの愛嬌があるし……何より隼斗君のおにぎりに胃袋を掴まれる気がする。
ああ……隼斗君とおにぎり、ずっと作っていたいなぁ……。
”コン、コン”
突然、閉まっていたドアがノックされた。
ヤバい……ついに先生に怒られる?
すぐにドアの方を見てみると、すりガラスの奥でこっちを見てくる男の子の姿があった。
隼斗君は首を傾げながら「入って!」という声を出した。
ガラガラと、家庭科室の引き戸を開ける。
中に入ってきたのは……。
「あ、ごめん、おにぎりの研究中だよね?」
この子は確か……同じクラスのケイタ君だ!
肌は日焼けしていて、短髪。爽やかなサッカー少年……だったはず。
ケイタ君が私たちに、一体何の用なんだろう。
隼斗君が私よりも先に口を開いた。
「そうだけど……何か用?」
「あ、あの……僕におにぎりの作り方を教えてほしいんだ……」
私は思わず「おにぎりの作り方?」と聞き返してしまった。
ケイタ君はもじもじしながら「うん」と小さく答える。
隣の隼斗君の反応を見てみると、やはり嬉しそうにしていた。
「え、なになに!? 君もおにぎりが好きなの?」
「あ……そうなんだけど……」
隼斗君のテンションとは真逆で、ケイタ君は声が小さくどこか不安そうだ。
何か言いたそうなケイタ君に、隼斗君はケイタ君の俯いた顔を覗くようにして聞いた。
「どうしたの?」
「あの……同じクラスにハンナっているの、わかる?」
「ハンナ……ああ、あのハーフの子ね!」
隼斗君、もうクラスのみんなのこと覚えたんだ。
ハンナちゃんとは、私もちょっとだけ話したことがある。
イギリス人と日本人のハーフで、フルネームは鈴木 ハンナ ホーリン……だった気がする。
みんなからはハンナちゃんと呼ばれている。
「実は僕、ハンナと幼馴染なんだけど……最近ハンナの両親が、ケンカばかりしているらしくて……」
ケイタ君とハンナちゃん、まさか同級生だったなんて。
ハンナちゃんの家庭の話まで知ってるってことは、相当家族ぐるみの付き合いなんだな。
ハンナちゃんの家族が心配なのはわかるけど、だからって、どうしておにぎり?
私も隼斗君も、黙ってケイタ君の話を聞く。
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