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三章 クラスメイトは幼馴染 ~勇気が出る、鮭ときのこのバター焼きおにぎり~
①
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五月になると、だいぶクラスにも馴染めてきた。
隼斗君もすっかりクラスの中心になったし、私もクラスメイト全員と話せるようになった。
隼斗君は週に一回くらい、放課後に私を家庭科室に呼びつける。
その時間におにぎりの新メニューをあーでもない、こーでもないと言いながら研究している。
給食の松本さん全面協力のもと、私と隼斗君は日本一のおにぎりを追求するために活動していた。
校長先生や担任の田尻先生も面白いと言って応援してくれている。
また今日も、隼斗君が思いついたアイデアメニューを試しに作っていた……。
「天かすとたくあんとチーズのおにぎりだ! どうだろう?」
隼斗君は温かいご飯の中に天かすと細かく切ったたくあん、チーズを入れて混ぜていた。
調味料は麺つゆのみというシンプルな味付け。これもご飯に加えて混ぜ込んでいる。
「良いと思う……楽に作れて美味しいおにぎりが、究極一番良いよね」
私の言葉に隼斗君は混ぜていた手を止めて、「それが理想なんだ!」と答えた。
私もすっかり、隼斗君のアシスタントが板についてきている……。
自分でもそう実感できた。
「よし! ナイスな色合いだ! じゃあこれを握っていこうか」
ビニール手袋をつけて、綺麗な三角に握る。
私と隼斗君の分の、二人前だ。
淡く薄茶色になったお米たちは、味が染み込んでいるのだろう。
たくあんの黄色とチーズのクリーム色は、存在感抜群。
三角の形になっても、どの食材もしっかりこの目で確認できた。
サクッと作れる割には……見た目が綺麗で美味しそう……。
「はい! じゃあ六原さん! 海苔をお願い!」
「わかった!」
いつもの役割。
両サイドから包み込むように巻いて……これで完成だ。
二個とも上手く巻けた。
「ありがとう! 天かすとたくあんのチーズ入りおにぎり、いっちょあがり!!」
シンプルなのにこの完成度。
混ぜご飯にしてから握るおにぎりが、隼斗君の得意分野なのかな?
簡単だけど美味しいおにぎりは、混ぜご飯系が多い気がする。
隼斗君のおかげで、いろいろ知れて嬉しいな……。
「よし、じゃあ食べてみよう!」
隼斗君に続いて、私もひと口パクリ。
……味付けは麺つゆのみでシンプルだけど、ちょうど良く濃くて美味しい。
たくあんのしょっぱさとチーズのコクがプラスの味を引き出しているんだ。
「美味しい……これなら私でも作れそう」
「おお! 六原さんも家で作ってみなよ! 簡単だから!」
「うん。今度時間ある時に寿矢に作ってあげようかな」
「寿矢って?」
「ああ、弟! 柔道部だからよく食べるんだ!」
「そっか! 弟がいるって前に言ってたね!」
弟の存在は、隼斗君には軽くしか言っていない。
小三にしては体が大きくて、よく食べるからな……こんな味の濃いおにぎりを作ったら、ものの三十秒で食べきっちゃう気がする。
「じゃあ今度、弟に会わせてよ! 俺もおにぎり作ってあげるから!」
隼斗君もすっかりクラスの中心になったし、私もクラスメイト全員と話せるようになった。
隼斗君は週に一回くらい、放課後に私を家庭科室に呼びつける。
その時間におにぎりの新メニューをあーでもない、こーでもないと言いながら研究している。
給食の松本さん全面協力のもと、私と隼斗君は日本一のおにぎりを追求するために活動していた。
校長先生や担任の田尻先生も面白いと言って応援してくれている。
また今日も、隼斗君が思いついたアイデアメニューを試しに作っていた……。
「天かすとたくあんとチーズのおにぎりだ! どうだろう?」
隼斗君は温かいご飯の中に天かすと細かく切ったたくあん、チーズを入れて混ぜていた。
調味料は麺つゆのみというシンプルな味付け。これもご飯に加えて混ぜ込んでいる。
「良いと思う……楽に作れて美味しいおにぎりが、究極一番良いよね」
私の言葉に隼斗君は混ぜていた手を止めて、「それが理想なんだ!」と答えた。
私もすっかり、隼斗君のアシスタントが板についてきている……。
自分でもそう実感できた。
「よし! ナイスな色合いだ! じゃあこれを握っていこうか」
ビニール手袋をつけて、綺麗な三角に握る。
私と隼斗君の分の、二人前だ。
淡く薄茶色になったお米たちは、味が染み込んでいるのだろう。
たくあんの黄色とチーズのクリーム色は、存在感抜群。
三角の形になっても、どの食材もしっかりこの目で確認できた。
サクッと作れる割には……見た目が綺麗で美味しそう……。
「はい! じゃあ六原さん! 海苔をお願い!」
「わかった!」
いつもの役割。
両サイドから包み込むように巻いて……これで完成だ。
二個とも上手く巻けた。
「ありがとう! 天かすとたくあんのチーズ入りおにぎり、いっちょあがり!!」
シンプルなのにこの完成度。
混ぜご飯にしてから握るおにぎりが、隼斗君の得意分野なのかな?
簡単だけど美味しいおにぎりは、混ぜご飯系が多い気がする。
隼斗君のおかげで、いろいろ知れて嬉しいな……。
「よし、じゃあ食べてみよう!」
隼斗君に続いて、私もひと口パクリ。
……味付けは麺つゆのみでシンプルだけど、ちょうど良く濃くて美味しい。
たくあんのしょっぱさとチーズのコクがプラスの味を引き出しているんだ。
「美味しい……これなら私でも作れそう」
「おお! 六原さんも家で作ってみなよ! 簡単だから!」
「うん。今度時間ある時に寿矢に作ってあげようかな」
「寿矢って?」
「ああ、弟! 柔道部だからよく食べるんだ!」
「そっか! 弟がいるって前に言ってたね!」
弟の存在は、隼斗君には軽くしか言っていない。
小三にしては体が大きくて、よく食べるからな……こんな味の濃いおにぎりを作ったら、ものの三十秒で食べきっちゃう気がする。
「じゃあ今度、弟に会わせてよ! 俺もおにぎり作ってあげるから!」
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