転校生はおにぎり王子 〜恋の悩みもいっちょあがり!~

成木沢 遥

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二章 憧れの先輩は陸上部 ~後押しする、豚キムチーズ~

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「じゃあ六原さん、恒例のこれを……」

 隼斗君が渡してきたのは、使い捨てのビニール手袋。
 しっかり装着して、隼斗君の指示を待つ。
 あれ? 私今日……そこまで活躍できてないな……いや、元々私にできることは少ないし、こんなもんか。

「ここから握れるだけ握っていくから、六原さんはおにぎりの真ん中に窪みを作っておいて!」
「窪み? わ、わかった……」

 何でだろ? とりあえず言われた通りにしないと。
 このお米の量だと、三つくらいは作れるんじゃないかな……。
 結構熱そうだけど、大丈夫かな?

「うわ、あっちぃー! よいしょー!」

 やっぱり熱いんだ……。
 そりゃあそうだよね……こんなに湯気が上がってるんだから。
 隼斗君は気合いで三角に握っていった。
 皿の上に一個、二個と……綺麗な形ができあがっていく。
 私も三角の中央に窪みをあけていった。

「こんな感じでいいかな?」

 隼斗君はラスト一個を握りながら「そうそう、そんな感じ!」と言って笑った。
 この窪みに、何を入れるんだろう……。
 あ、そうだ! チーズだ!

「よし! じゃあ六原さん! その窪みにチーズを埋めるんだ!」

 なるほど……ここにチーズを入れて、豚キムチーズのおにぎりの完成か。
 でもなんか、見た目が良くないような……チーズむきだしになってるし。
 一口大のプロセスチーズが窪みにはまっている。

「これで終わりじゃないよ! 次でフィナーレさ!」

 隼斗君は最後に海苔を持ってきた。
 今回も海苔を巻くのか。
 混ぜご飯になったから、海苔を巻く工程があるなんて思わなかった。
 でも、この海苔、普通のとちょっと違うような……。

「これは韓国海苔さ! このおにぎりに相性抜群なんだ!」

 うわぁ、発想が天才的……。
 こんなの小学生が思いつく? コンビニとかにあるのかな、このおにぎり?
 私はこないだと同じように、サイドから包み込むようにおにぎりを巻いた。
 海苔を巻く仕事は、完全に私の仕事になったらしい。

「六原さん、ありがとう! これにて豚キムチーズのおにぎり、いっちょあがり!」

 パチパチパチパチ……私とアイ美ちゃんは拍手をしておにぎりの完成を喜んだ。
 アイ美ちゃんのメモにはその手順がびっしりと書かれている。
 ああ……美味しそう……。
 給食はしっかり食べたのに、この香ばしさを嗅いでいたらまたお腹が空いてくる……。

「ちょうど三個作れて良かった! さあ、食べよう!」

 隼斗君の声により、私たちは全員おにぎりを持った。
 まず最初にアイ美ちゃんがかぶりついた。
 その後に私も続く。

 ……うわぁ、ゴマ油のパンチと豚キムチのガツンとくる肉々しさが絶妙だ……。
 キムチのシャキシャキ感、そしてほどよく溶けたチーズのまろやかさによって米が踊っている。
 美味しい……美味し過ぎる。

 これを食べたら、男の子は頑張れるに違いない……。

「こんな美味しいおにぎり、食べたことない! これなら山久君も元気になると思う!」

 アイ美ちゃんも嬉しそうだ。
 うんうん……テンションが上がるほど、美味しいよね。
 よし、あとはアイ美ちゃん自身がこれを作って、山久君に食べてもらうだけ……。

 山久君、喜んでくれるといいなぁ……。
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