転校生はおにぎり王子 〜恋の悩みもいっちょあがり!~

成木沢 遥

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二章 憧れの先輩は陸上部 ~後押しする、豚キムチーズ~

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「六原さん、アイ美ちゃん、家庭科室に集合だ!」

 帰りのチャイムが鳴ると、隼斗君は私たちを家庭科室へと誘った。
 やっぱり……今日から特訓が始まるのね。

「松本さん! 準備してくれてありがとう!」

 家庭科室に入ると、先に松本さんが待機していた。
 室内にたくさんある家庭科室用キッチンの一ヶ所に、今日使う食材が用意されてあった。
 さっき隼斗君が松本さんに注文したんだろうな……。

「おにぎり王子に言われた通り、豚肉とキムチ、それからチーズね! あとは調味料……全部用意したわ」

 食品用バットに、今回使う食材がまとめられていた。
 それとやや大きめの丼の中に、すでに炊き上がっているお米が。これにはラップがかけられている。

「お米は給食の時に炊いたもののあまりだから。レンジでチンして使ってね」
「わかった! 松本さん、何から何までありがとう!」
「いいのよおにぎり王子! 校長先生の許可も取ってるから、好きに使いなさい! 騒がないようにね!」

 松本さん……校長の許可まで取るなんて……どこまでも心強い。
 本来なら生徒たちだけでキッチンを使うなんて、絶対アウトだよな……。
 それほどおにぎり王子の評判が、先生たちにも轟いてるってことか。
 松本さんは「じゃあごゆっくり」と言って、家庭科室から出ていった。

「よし! それじゃあ始めるぞ! アイ美ちゃんはよーく見ててね!」
「わ、わかった! お願いします!」

 隼斗君が手を洗って、調理の準備を始める。
 私も真似をして、石鹸でしっかり洗った。
 準備が整った隼斗君が、先に使う食材の説明をする。

「今日使う食材は、豚肉とキムチ、それからチーズ! 調味料は甘めな味噌と塩、コショウ、白ゴマ……あ、あとゴマ油も!」

 アイ美ちゃんはメモ帳を片手に、必死に覚えていた。
 調味料も松本さんが、使う分だけそれぞれ小皿に入れてくれている。

「今日の具材は包丁を使わないから、食材さえ揃えればあとは簡単だよ。じゃあ早速作っていくね!」

 隼斗君がフライパンにゴマ油を入れて、全体に広がるように傾けた。
 火をつけて、熱するのを待つ。
 私は何をすればいいのか……。

「あ、じゃあ六原さん! ご飯をチンしてきて!」
「は、はい!」

 ようやく指示が飛んできた。
 アシスタントなんだから、軽やかに手伝わないとね……。
 えーっと……これくらいの量なら……。

「二分くらいにしておくか……いや、すぐに具材ができるとは限らないから、もうちょっと長めにしておこう」

 結局三分に設定して、電子レンジのスタートボタンを押した。
 チンと鳴るまでまだ時間がかかる。またキッチンに戻った。
 他に手伝えることはないか……。
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