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二章 憧れの先輩は陸上部 ~後押しする、豚キムチーズ~

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「アイ美ちゃん、おはよう」
「あ、サヤちゃん! おはよう……」

 後ろをついてきた隼斗君もペコッと挨拶する。
 そっか……隼斗君はみんなと、まだそこまで話していないのか……。
 私が率先して話さないと!

「アイ美ちゃん、昨日の話なんだけど……」
「昨日の話?」
「あの、山久君に……おにぎりを、さ?」

 昨日話したことを思い出したアイ美ちゃんは「あ、そうだった」と言って、苦笑いした。
 私たちのやり取りを聞いていた隼斗君が、私の背中からひょこっと顔を出して話し始める。

「話は聞かせてもらったよ! スポーツ男子の胃袋を掴むには、やっぱりガツンとした具材が良いと思うんだ」
「ガツンとした?」

 アイ美ちゃんは何を提案されるか、見当もついていない様子。
 そりゃあそうか……わかるわけがない。

「豚キムチーズのおにぎり! それをその先輩に食べてもらうんだ!」
「豚キムチーズ? 私に作れるかなぁ……」

 アイ美ちゃんの弱気な声を、隼斗君は笑い飛ばす。
 またみんなの視線が隼斗君に集まった。

「大丈夫! 俺が教えるから! 最高のおにぎりにしよう!」

 心強い発言。おにぎり王子の言葉は男らしい。
 私はアイ美ちゃんの肩に手を置いて「きっとできるよ!」と勇気づけた。

「……わかった。隼斗君! 私におにぎりの作り方、教えて!」

 先生が教室に入ってくると、私たちは急いで席に戻った。
 アイ美ちゃんもやる気になってくれた……山久君に力を与えることができれば、アイ美ちゃんも元気になると思う……。
 美味しく作れたらいいなぁ……。

 ――授業中も、アイ美ちゃんの恋が上手くいってほしいと、ずっと考えていた。
 昼休みの時間になっても、一人で折り紙を折りながら、そのことを考える。
 ああ……好きな人のために頑張れるなんて、なんて素敵なんだろう……。

「あれ? そういえば隼斗君、どこ行ったんだろう……」

 いつも昼休みの時間は机に伏せて寝ている隼斗君だけど……今日はいないみたい。
 どこにいるんだろう……気になるから探しにでもいこっかな。

「あ、隼斗君……」

 給食室の前で、給食のおばちゃんと話している。
 確か……松本さんだったっけ?

「ふむふむ……りょーかい! じゃあ放課後までに用意しておくわね!」
「ありがとう、おばちゃん!」
「何でも言ってね! おにぎり王子のお願い事は、できるだけ叶えてあげるから」

 松本さん……隼斗君のこと『おにぎり王子』って呼ぶようになったんだ。
 先生たちの間でも、噂になっているのかもしれないな。
 というか、何の約束だろう……いや、大体予想はつくけど。

 隼斗君は松本さんと約束した後に、にこやかな顔で教室に帰っていった。
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