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二章 憧れの先輩は陸上部 ~後押しする、豚キムチーズ~
⑥
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「アイ美ちゃん、おはよう」
「あ、サヤちゃん! おはよう……」
後ろをついてきた隼斗君もペコッと挨拶する。
そっか……隼斗君はみんなと、まだそこまで話していないのか……。
私が率先して話さないと!
「アイ美ちゃん、昨日の話なんだけど……」
「昨日の話?」
「あの、山久君に……おにぎりを、さ?」
昨日話したことを思い出したアイ美ちゃんは「あ、そうだった」と言って、苦笑いした。
私たちのやり取りを聞いていた隼斗君が、私の背中からひょこっと顔を出して話し始める。
「話は聞かせてもらったよ! スポーツ男子の胃袋を掴むには、やっぱりガツンとした具材が良いと思うんだ」
「ガツンとした?」
アイ美ちゃんは何を提案されるか、見当もついていない様子。
そりゃあそうか……わかるわけがない。
「豚キムチーズのおにぎり! それをその先輩に食べてもらうんだ!」
「豚キムチーズ? 私に作れるかなぁ……」
アイ美ちゃんの弱気な声を、隼斗君は笑い飛ばす。
またみんなの視線が隼斗君に集まった。
「大丈夫! 俺が教えるから! 最高のおにぎりにしよう!」
心強い発言。おにぎり王子の言葉は男らしい。
私はアイ美ちゃんの肩に手を置いて「きっとできるよ!」と勇気づけた。
「……わかった。隼斗君! 私におにぎりの作り方、教えて!」
先生が教室に入ってくると、私たちは急いで席に戻った。
アイ美ちゃんもやる気になってくれた……山久君に力を与えることができれば、アイ美ちゃんも元気になると思う……。
美味しく作れたらいいなぁ……。
――授業中も、アイ美ちゃんの恋が上手くいってほしいと、ずっと考えていた。
昼休みの時間になっても、一人で折り紙を折りながら、そのことを考える。
ああ……好きな人のために頑張れるなんて、なんて素敵なんだろう……。
「あれ? そういえば隼斗君、どこ行ったんだろう……」
いつも昼休みの時間は机に伏せて寝ている隼斗君だけど……今日はいないみたい。
どこにいるんだろう……気になるから探しにでもいこっかな。
「あ、隼斗君……」
給食室の前で、給食のおばちゃんと話している。
確か……松本さんだったっけ?
「ふむふむ……りょーかい! じゃあ放課後までに用意しておくわね!」
「ありがとう、おばちゃん!」
「何でも言ってね! おにぎり王子のお願い事は、できるだけ叶えてあげるから」
松本さん……隼斗君のこと『おにぎり王子』って呼ぶようになったんだ。
先生たちの間でも、噂になっているのかもしれないな。
というか、何の約束だろう……いや、大体予想はつくけど。
隼斗君は松本さんと約束した後に、にこやかな顔で教室に帰っていった。
「あ、サヤちゃん! おはよう……」
後ろをついてきた隼斗君もペコッと挨拶する。
そっか……隼斗君はみんなと、まだそこまで話していないのか……。
私が率先して話さないと!
「アイ美ちゃん、昨日の話なんだけど……」
「昨日の話?」
「あの、山久君に……おにぎりを、さ?」
昨日話したことを思い出したアイ美ちゃんは「あ、そうだった」と言って、苦笑いした。
私たちのやり取りを聞いていた隼斗君が、私の背中からひょこっと顔を出して話し始める。
「話は聞かせてもらったよ! スポーツ男子の胃袋を掴むには、やっぱりガツンとした具材が良いと思うんだ」
「ガツンとした?」
アイ美ちゃんは何を提案されるか、見当もついていない様子。
そりゃあそうか……わかるわけがない。
「豚キムチーズのおにぎり! それをその先輩に食べてもらうんだ!」
「豚キムチーズ? 私に作れるかなぁ……」
アイ美ちゃんの弱気な声を、隼斗君は笑い飛ばす。
またみんなの視線が隼斗君に集まった。
「大丈夫! 俺が教えるから! 最高のおにぎりにしよう!」
心強い発言。おにぎり王子の言葉は男らしい。
私はアイ美ちゃんの肩に手を置いて「きっとできるよ!」と勇気づけた。
「……わかった。隼斗君! 私におにぎりの作り方、教えて!」
先生が教室に入ってくると、私たちは急いで席に戻った。
アイ美ちゃんもやる気になってくれた……山久君に力を与えることができれば、アイ美ちゃんも元気になると思う……。
美味しく作れたらいいなぁ……。
――授業中も、アイ美ちゃんの恋が上手くいってほしいと、ずっと考えていた。
昼休みの時間になっても、一人で折り紙を折りながら、そのことを考える。
ああ……好きな人のために頑張れるなんて、なんて素敵なんだろう……。
「あれ? そういえば隼斗君、どこ行ったんだろう……」
いつも昼休みの時間は机に伏せて寝ている隼斗君だけど……今日はいないみたい。
どこにいるんだろう……気になるから探しにでもいこっかな。
「あ、隼斗君……」
給食室の前で、給食のおばちゃんと話している。
確か……松本さんだったっけ?
「ふむふむ……りょーかい! じゃあ放課後までに用意しておくわね!」
「ありがとう、おばちゃん!」
「何でも言ってね! おにぎり王子のお願い事は、できるだけ叶えてあげるから」
松本さん……隼斗君のこと『おにぎり王子』って呼ぶようになったんだ。
先生たちの間でも、噂になっているのかもしれないな。
というか、何の約束だろう……いや、大体予想はつくけど。
隼斗君は松本さんと約束した後に、にこやかな顔で教室に帰っていった。
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