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二章 憧れの先輩は陸上部 ~後押しする、豚キムチーズ~
⑤
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「好きな先輩のために、おにぎりを作りたいだって!?」
「隼斗君、声が大きいよ」
次の日、隼斗君にアイ美ちゃんの話をしにいく。
朝教室に入ってすぐ隼斗君を見つけた私は、おはようを言う前に話しかけた。
まだ、アイ美ちゃんは来ていない。
「なるほどね……陸上部の先輩のために、おにぎりを作って励ましてあげたいってことか」
「そうなの。その先輩、どうやら最近スランプらしくて」
「そっかぁ。じゃあ元気になるおにぎりを作ってあげないとな」
やっぱり、隼斗君は乗り気だった。
さすが、おにぎり王子。
隼斗君は天井を見ながら、メニューを考え始めた。
「スポーツ男子の心を掴むおにぎりか……何がいいかなぁ」
今まで立ちっぱなしで隼斗君と話していた私は、その前の自分の席に座る。
後ろを向いて、隼斗君と話す体勢になった。
私も一緒に考えてみる。
コンビニに並んでいるおにぎりの具を思い出しながら、いろいろ提案してみた。
「おかかは?」
「おかかもいいけど、ちょっと渋いな」
「じゃあ、シャケは?」
「シャケもありっちゃあり。でも魚かぁ……」
「やっぱりお肉がいいか……あ、豚カルビとか?」
その提案をした瞬間、隼斗君は指パッチンしながら微笑んだ。
隼斗君のお気に召したみたい。
「豚肉、ありだねぇ! ただカルビだと胸焼けしちゃう可能性があるから……そうだ!」
ひらめいた隼斗君がイスから立ち上がる。
そのタイミングで教室にアイ美ちゃんが入ってきた。
「ズバリ! 豚キムチーズのおにぎりでどうだ!?」
教室中に響く、隼斗君の声。
みんなの視線が隼斗君に注がれて、一瞬シーンとなった。
隼斗君は空気を変えてしまったことに恥ずかしくなったのか、「あれ?」と言ってゆっくりとまた座った。
「やべ、恥ずかしっ」
みんなのクスクスという笑い声を聞きながら、顔を赤らめる隼斗君。
アイ美ちゃんも首を傾げながら、不思議そうな表情で自分の席に座った。
「隼斗君、豚キムチーズって?」
「あ、ああ! その名の通り、豚キムチ炒めにチーズを加えた、男の子は誰でも大好きな一品さ!」
豚キムチ炒めとチーズかぁ……すごく美味しそう。
それをおにぎりの具材に? 想像しただけでよだれが出そうだ。
ちゃんと朝ご飯食べてきたのに、早くもお腹が空いてくる。
確かに、それなら力が湧いてきそうだし、しっかり後押しができそうだ。
「いいね! 早速アイ美ちゃんに言いに行こう!」
私は隼斗君を連れて、アイ美ちゃんの席まで行くことにした。
アイ美ちゃんはまだ、元気がなさそうだ……。
「隼斗君、声が大きいよ」
次の日、隼斗君にアイ美ちゃんの話をしにいく。
朝教室に入ってすぐ隼斗君を見つけた私は、おはようを言う前に話しかけた。
まだ、アイ美ちゃんは来ていない。
「なるほどね……陸上部の先輩のために、おにぎりを作って励ましてあげたいってことか」
「そうなの。その先輩、どうやら最近スランプらしくて」
「そっかぁ。じゃあ元気になるおにぎりを作ってあげないとな」
やっぱり、隼斗君は乗り気だった。
さすが、おにぎり王子。
隼斗君は天井を見ながら、メニューを考え始めた。
「スポーツ男子の心を掴むおにぎりか……何がいいかなぁ」
今まで立ちっぱなしで隼斗君と話していた私は、その前の自分の席に座る。
後ろを向いて、隼斗君と話す体勢になった。
私も一緒に考えてみる。
コンビニに並んでいるおにぎりの具を思い出しながら、いろいろ提案してみた。
「おかかは?」
「おかかもいいけど、ちょっと渋いな」
「じゃあ、シャケは?」
「シャケもありっちゃあり。でも魚かぁ……」
「やっぱりお肉がいいか……あ、豚カルビとか?」
その提案をした瞬間、隼斗君は指パッチンしながら微笑んだ。
隼斗君のお気に召したみたい。
「豚肉、ありだねぇ! ただカルビだと胸焼けしちゃう可能性があるから……そうだ!」
ひらめいた隼斗君がイスから立ち上がる。
そのタイミングで教室にアイ美ちゃんが入ってきた。
「ズバリ! 豚キムチーズのおにぎりでどうだ!?」
教室中に響く、隼斗君の声。
みんなの視線が隼斗君に注がれて、一瞬シーンとなった。
隼斗君は空気を変えてしまったことに恥ずかしくなったのか、「あれ?」と言ってゆっくりとまた座った。
「やべ、恥ずかしっ」
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アイ美ちゃんも首を傾げながら、不思議そうな表情で自分の席に座った。
「隼斗君、豚キムチーズって?」
「あ、ああ! その名の通り、豚キムチ炒めにチーズを加えた、男の子は誰でも大好きな一品さ!」
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それをおにぎりの具材に? 想像しただけでよだれが出そうだ。
ちゃんと朝ご飯食べてきたのに、早くもお腹が空いてくる。
確かに、それなら力が湧いてきそうだし、しっかり後押しができそうだ。
「いいね! 早速アイ美ちゃんに言いに行こう!」
私は隼斗君を連れて、アイ美ちゃんの席まで行くことにした。
アイ美ちゃんはまだ、元気がなさそうだ……。
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