転校生はおにぎり王子 〜恋の悩みもいっちょあがり!~

成木沢 遥

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一章 おにぎり王子降臨! ~心を奪う、ツナのゴマ味噌マヨネーズ~

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「はい! これから始業式が始まります! 体育館に移動しますよー」

 田尻先生に引率されて、体育館に向かう。
 その間もクラスのみんなが隼斗君に話しかけていた。
 すごく居心地が良いクラスだ……最初は不安だったけど、もうその不安は吹き飛んだ。

 でも……転校しちゃうかもしれないのか。
 ここでどんなに友達を作っても、結局はリセットされてしまう。

「はぁ……」

 体育館の中にいる全校生徒のガヤガヤは、私の溜息を無かったようにする。

「六原さん、なんか元気ないなぁ」
「ああ、隼斗君……」
「何か悩み事でもあるの?」

 気がつくと、隼斗君が後ろに立っていた。
 気持ちが落ち込んでいるところを、見抜かれてしまう。

「い、いや、何でもないよ」
「そう? 何でも言ってよ! せっかく仲良くなったんだからさ!」

 隼斗君、まだ会って二時間くらいしか経っていないのに、すごく接しやすい。
 みんなにフレンドリーだし、優しいし……本当に王子様みたいだ。

 校長先生のつまらない話を聞きながら、後ろに立っている隼斗君の存在感にドキドキしてしまう。
 また隼斗君が作るおにぎり、食べたいなぁ。

 今日から赴任してくる先生や用務員のおじちゃん、そして給食のおばちゃんの紹介がされている。
 もうそろそろ飽きてきた。
 みんなが早く終わらないかなぁと、心で思っているはず。

「あれが給食のおばちゃんか……」

 後ろでボソッと、隼斗君が呟いたのが聞こえた。
 給食のおばちゃんのことが、どうして気になったのだろう。
 振り向いて隼斗君に聞いて見たかったけど、やめておく。
 だって今後ろを向いちゃったら、きっと田尻先生に怒られるから。

 ……ようやく始業式が終わると、次は算数の授業が待っていた。その後は国語の授業。
 最初はオリエンテーションだけだから、授業っぽいのは次回からやるらしい。
 教科書の配布だけだったから、あまり集中力は使っていない……なのにも関わらず、やっぱりお腹は空いてしまう。

 我慢して我慢して、ようやく給食の時間。
 隼斗君の塩おにぎりを食べたとはいえ、空腹状態は続いていた。
 給食当番の班が、教室に給食を運んでくる。

「それじゃあ近くの人たちと班になって、一緒に食べてくださいね!」

 田尻先生の大きな声の後に、みんなが机をくっつけて班を作る。
 あれ、隼斗君がいない……どこ行っちゃったんだろう。
 隼斗君、給食当番でもないはずなのに……。

 とりあえず隼斗君の席もくっつけてあげる。
 みんなも「隼斗君がいないね」と心配そうにしていた。
 その間に給食の準備が整って、みんなの机の上に給食が用意された。
 隼斗君の分も運んであげたけど……田尻先生に言わないとな。

 田尻先生、隼斗君がいません! そう言いに行こうとした時、教室の扉が開いた。
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