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⑳
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* * *
部屋の窓を散弾銃のように、横殴る雨。窓がガタガタと揺れるほど、強い雨風だ。
朝起きた時は、雨音なんてしなかったのに……数分前に急に降ってきた。
ベッドの温もりは依然保ったまま、朝起きてから何時間経っただろう。というか、今何時だろう。
「優雨ー! 今日はもう学校行かないのねー!?」
一階のリビングから飛んでくる母さんの声。声帯を震わせる気力なんてなく、無視してしまう。
スマホの電源を点けると、時刻は昼の十二時だった。僕は学校を休んでしまった。
昨日、病院で早織のお母さんに言われたセリフが耳の奥でループ再生されている。ズシッと重い声で言った、「あなたに責任が取れるの?」という言葉。
僕は塞ぎ込むように、またベッドの中に潜り込んだ。
昔から僕は厄介者だった。みんなに迷惑をかける存在だ。
それから引きこもりになって、世界を拒絶した。
でも、早織が僕をまた引き戻してくれて……泣かない体になったら、案外やっていけることに気づけた。
怠さや絶望感はまだ拭えないけど、それでもギリギリ生きていけるのかと思わせてくれた……なのに、また僕は厄介者になった。
早織と、早織のお母さんにとって……僕は厄介者。
虹山ヶ丘の夕景色を見せたいなんて、ただのめでたい妄想。僕の理想論を押しつけているだけだ。
早織は重度の病気なんだ。まだ治療法が見つかっていない奇病に罹っているのに、ヒーロー面して何が虹山ヶ丘に連れて行きたいだ……僕にできるわけがないだろう。
パッタリと、行動する気をなくした。
また逆戻り。わかっているけど、どうでもいい。どうせ今日も、早織は学校に来ないだろう。
目を瞑って無になる。いくら寝ても、目を瞑ればうつらうつらと意識が遠のくのは何故だろう。
――ハッキリと体を起こしたのは、家中に響いたチャイムの音のせいだった。
「優雨! お友達が来てくれたわよー! 早く起きなさい!」
大声に反応して、バサッと掛け布団を取る。
お友達……? 今確かに、お友達って言ったよな? 寝ぼけているだけか?
声がしたのは確かだから、寝巻のまま一階に降りてみる。
部屋の窓を散弾銃のように、横殴る雨。窓がガタガタと揺れるほど、強い雨風だ。
朝起きた時は、雨音なんてしなかったのに……数分前に急に降ってきた。
ベッドの温もりは依然保ったまま、朝起きてから何時間経っただろう。というか、今何時だろう。
「優雨ー! 今日はもう学校行かないのねー!?」
一階のリビングから飛んでくる母さんの声。声帯を震わせる気力なんてなく、無視してしまう。
スマホの電源を点けると、時刻は昼の十二時だった。僕は学校を休んでしまった。
昨日、病院で早織のお母さんに言われたセリフが耳の奥でループ再生されている。ズシッと重い声で言った、「あなたに責任が取れるの?」という言葉。
僕は塞ぎ込むように、またベッドの中に潜り込んだ。
昔から僕は厄介者だった。みんなに迷惑をかける存在だ。
それから引きこもりになって、世界を拒絶した。
でも、早織が僕をまた引き戻してくれて……泣かない体になったら、案外やっていけることに気づけた。
怠さや絶望感はまだ拭えないけど、それでもギリギリ生きていけるのかと思わせてくれた……なのに、また僕は厄介者になった。
早織と、早織のお母さんにとって……僕は厄介者。
虹山ヶ丘の夕景色を見せたいなんて、ただのめでたい妄想。僕の理想論を押しつけているだけだ。
早織は重度の病気なんだ。まだ治療法が見つかっていない奇病に罹っているのに、ヒーロー面して何が虹山ヶ丘に連れて行きたいだ……僕にできるわけがないだろう。
パッタリと、行動する気をなくした。
また逆戻り。わかっているけど、どうでもいい。どうせ今日も、早織は学校に来ないだろう。
目を瞑って無になる。いくら寝ても、目を瞑ればうつらうつらと意識が遠のくのは何故だろう。
――ハッキリと体を起こしたのは、家中に響いたチャイムの音のせいだった。
「優雨! お友達が来てくれたわよー! 早く起きなさい!」
大声に反応して、バサッと掛け布団を取る。
お友達……? 今確かに、お友達って言ったよな? 寝ぼけているだけか?
声がしたのは確かだから、寝巻のまま一階に降りてみる。
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