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最終日

浮遊霊が行き着く不思議な山カフェ④

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 藤沢の背景が知れるような言葉が、二人の前で初めて吐かれた。
 昨日、恵那とリュウが予想していたように、やはり藤沢にも背負っている過去がありそうだ。
 ようやく、中身を曝け出してくれた気がして、恵那の心が妙に落ち着いていく。
 これから慎重に探っていこうとした矢先に、藤沢本人からその糸口となるような発言が飛び出すとは、思いもしなかった。
 藤沢が言った『前に進める』という言葉には、どんな意味があるのか。気になった恵那は、即座に聞き返す。

「藤沢さんは今、何か抱えていることがあるってことですか?」

「いや、それは……マルナたちがその場所に行ってから話すよ。行けばわかると思うから」

 明確な答えは、どうやら言わないみたいだ。
 藤沢の言いざまからは、言いたくなさそうな雰囲気がビンビン感じられていて、追随するように聞くのは諦めようと思えた。
 とにかくその場に行って、自分たちで確かめてほしいのだろう。
 聞くのを諦めている恵那とは対照的に、リュウはまだ渋っている様子だ。
 今度はリュウが、恵那と同じ質問をする。

「いや、藤沢さん。それじゃ答えになってないっすよ。その場所に何があるかだけは教えてください」

「はは……リュウ君は用心なんだな」

「恵那は誤魔化せても、俺は騙されないっすよ」

「わかったよ。そこには、とあるお墓がある。そこの様子を見に行ってほしいんだ」

「……お墓!?」

 リュウの大袈裟な反応と、恵那の小さく驚く声が、部屋中に響く。
 結局はお墓という怖い場所に行くなんて、二人は納得ができなかった。
 安心で怖くない場所というような説明だったのに、結局は心霊スポットなのではないか……そんな裏切られた気分になったリュウが、強めに反論する。

「ほら、やっぱり怖い場所なんじゃん! 俺行きたくないよ、こんな山の中にあるお墓なんて」

「何だよリュウ君、男なんだろ? 怖くないから行ってきてくれよ」

「そうですけど、藤沢さんが行けばいいじゃないですか!」

「俺が行っても意味がない。マルナとリュウ君に行ってもらいたいんだよ。二人なら、もしかしたら……俺の力になってくれるかも」

 どうして二人なのかと一度は考えてみるけど、要は人間なのに浮遊霊と交流できる二人が珍しいから、そのお墓の前で化学反応が起きることを期待しているのだろう。
 恵那はすぐにそう思うことができて、藤沢の心の中が完璧に読めた気がした。
 藤沢のような霊能者でもない特殊な二人が、その場に行ったら何が起こるのだろうか。
 今はわからないけど、藤沢がこんなに嘆願しているのなら、素直に聞いてあげたい。
 それはリュウも一緒なのか、藤沢の縋るような顔つきを見て「しょうがないな」と言いながら折れてあげた。
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