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最終日
浮遊霊が行き着く不思議な山カフェ③
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「それじゃあ……マルナとリュウ君には、とある場所に行ってもらおうかな」
「とある場所って……前に藤沢さんと行った、もう一つの山小屋ですか?」
「いや、もうハーブは収穫済みだから、そこじゃないよ」
「じゃあ、どこですか?」
「俺の秘密の場所」
藤沢の秘密の場所……? 恵那とリュウの頭上には、同じようにハテナマークが浮かんでいた。
そんな場所があったなんて、恵那は全く聞かされたことがない。
藤沢の言い方にはホラー感があって、恵那もリュウも行く気にはなれなかった。何でもやろうと思っていたけど、怖いのだけは勘弁だ。
二人の表情から、恐怖心を抱いていると察した藤沢は、苦笑いをしながら丁寧に訂正した。
「いや、そんなに怖い所じゃないって。二人には、見せたい場所があるんだ。そこに行ってほしい」
「藤沢さんがそう言うならいいですけど……リュウは大丈夫?」
「いや、恵那こそいいのかよ。俺は男だから、余裕だよ」
「……そっか。じゃあ藤沢さん、私たち行ってきます。どこへ行けばいいんですか?」
「ちょっと待ってくれ、今教えるから」
自分が食べ終わった皿を洗い場に下げてから、キッチンに付いている棚を開けて、紙と黒ペンを取り出す。
流れるような手つきでサラサラと書いているのは、どこかへの地図のようなものだった。
藤沢が行ってほしい場所とは、一体どこなのか。
書き記された場所に、これから向かうことになると思うけど、そこに行く理由が何なのか恵那は知りたくなった。
薄い紙切れを一枚授かった恵那に、藤沢が続けて説明をする。
「この地図通り行けば、簡単に辿り着けるから」
「わかりました。でも、どうして私たちだけが、ここに行くんですか?」
「それは……行ってからのお楽しみだ」
「何があるかくらいは、教えてくださいよ」
恵那の懇願に、リュウも合わせるように「お願いします」と頭を下げた。
どうしても怖い場所というイメージを持っているのか、リュウの『お願いします』は、シリアスな声色に聞こえる。
リュウがビビっているのを可哀想に思えた藤沢は、観念したようにその意図を答えてあげた。
「恵那とリュウ君、二人が何故ここに来ることができたか……俺なりに考えているんだけど、未だに答えが出なくてな」
「それは……私もリュウも、どうしてだろうって思ってます」
「ああ。だけど、マルナたちがここに来れた理由は、知っておきたいんだ。それを知れたら、俺は……」
急に言葉が詰まり出した藤沢は、下を向いたまま喋らなくなってしまった。
その先が何なのか知りたい恵那とリュウは、何も言わずに藤沢を待つ。
話していいのか、やっぱりやめておこうか、それを考えているみたいで、藤沢の表情には葛藤が表れていた。
口を挿まずにじっと待っていた二人に対して、藤沢は覚悟を決めたように力強く話し出す。
「マルナたちがこの山小屋を見つけられた理由が知れたら……俺は前に進むことができる気がするんだ」
「とある場所って……前に藤沢さんと行った、もう一つの山小屋ですか?」
「いや、もうハーブは収穫済みだから、そこじゃないよ」
「じゃあ、どこですか?」
「俺の秘密の場所」
藤沢の秘密の場所……? 恵那とリュウの頭上には、同じようにハテナマークが浮かんでいた。
そんな場所があったなんて、恵那は全く聞かされたことがない。
藤沢の言い方にはホラー感があって、恵那もリュウも行く気にはなれなかった。何でもやろうと思っていたけど、怖いのだけは勘弁だ。
二人の表情から、恐怖心を抱いていると察した藤沢は、苦笑いをしながら丁寧に訂正した。
「いや、そんなに怖い所じゃないって。二人には、見せたい場所があるんだ。そこに行ってほしい」
「藤沢さんがそう言うならいいですけど……リュウは大丈夫?」
「いや、恵那こそいいのかよ。俺は男だから、余裕だよ」
「……そっか。じゃあ藤沢さん、私たち行ってきます。どこへ行けばいいんですか?」
「ちょっと待ってくれ、今教えるから」
自分が食べ終わった皿を洗い場に下げてから、キッチンに付いている棚を開けて、紙と黒ペンを取り出す。
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書き記された場所に、これから向かうことになると思うけど、そこに行く理由が何なのか恵那は知りたくなった。
薄い紙切れを一枚授かった恵那に、藤沢が続けて説明をする。
「この地図通り行けば、簡単に辿り着けるから」
「わかりました。でも、どうして私たちだけが、ここに行くんですか?」
「それは……行ってからのお楽しみだ」
「何があるかくらいは、教えてくださいよ」
恵那の懇願に、リュウも合わせるように「お願いします」と頭を下げた。
どうしても怖い場所というイメージを持っているのか、リュウの『お願いします』は、シリアスな声色に聞こえる。
リュウがビビっているのを可哀想に思えた藤沢は、観念したようにその意図を答えてあげた。
「恵那とリュウ君、二人が何故ここに来ることができたか……俺なりに考えているんだけど、未だに答えが出なくてな」
「それは……私もリュウも、どうしてだろうって思ってます」
「ああ。だけど、マルナたちがここに来れた理由は、知っておきたいんだ。それを知れたら、俺は……」
急に言葉が詰まり出した藤沢は、下を向いたまま喋らなくなってしまった。
その先が何なのか知りたい恵那とリュウは、何も言わずに藤沢を待つ。
話していいのか、やっぱりやめておこうか、それを考えているみたいで、藤沢の表情には葛藤が表れていた。
口を挿まずにじっと待っていた二人に対して、藤沢は覚悟を決めたように力強く話し出す。
「マルナたちがこの山小屋を見つけられた理由が知れたら……俺は前に進むことができる気がするんだ」
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