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三日目

ずっとそばに④

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「マルナ、こっちの手伝いはいいから、そろそろリュウ君のもとに行ってやれよ。何か話してやらないと、心配だろ」

「そ、そうですね。私、リュウの所に行ってきます」

 薄手のジャージで、夜風の冷たさを凌げるか不安ではあったけど、とにかくリュウの様子を見に行くことにした。
 扉を開けた瞬間に染みてくる冷気に、慄いてしまう。
 すぐに戻ろうと思ったけど、それ以上にリュウのことが心配になっている恵那は、逃げることなく断崖絶壁の方へ歩いた。

「リュウ? そんな所に立ってたら、危ないよ?」

「……何だよ、手伝い終わったのか?」

「うん、終わった。藤沢さんが、様子見て来いってさ」

「そっか。あの人、良い人だよな」

「藤沢さんね。私も色々助けられてるよ」

 雨のせいで水量が増えている沼地から、水が漂う音が聞こえてくる。
 リュウは覗くようにして崖っぷちに立っていたけど、恵那が来たことを機に一歩だけ下がった。
 恵那もリュウの隣に立って、どちらともなくその場にしゃがむ。
 巴先輩のことを今は話したくないのか、リュウが話し始めた話題は、藤沢についてのことだった。

「恵那は、藤沢さんについて、どこまで知ってるの?」

「え? えーと……二十五歳ってことと、霊能者ってことと、それからハーブに詳しいってことと……」

「霊能者?」

「あ、うん。だって浮遊霊とコミュニケーションが取れるなんて、霊能者以外ありえないでしょ。私たちも何故か、浮遊霊が見えるけどね」

「本人が霊能者って言ったのか?」

「本人は……確か”まあそんな感じかな”って言ってた気がするけど」

「ふーん、何か濁されてんな。藤沢さんって、一体何者なんだ?」

 恵那も、藤沢についての疑問はいくつかあった。
 だけど、連日接していく中で、そんなことは気にならなくなったし、巴先輩のことや自分のことで精一杯だったから、深くまで詮索することはしなかったのだ。
 リュウに指摘されて、再びそのことを思い出した恵那は、改めて藤沢について考えてみることにした。

「何者……なんだろうね。浮遊霊という存在が当たり前に感じて、そこまで頭が回らなかったけど、特殊な人なのは間違いないかな」

「そりゃそうだろ。じゃないと、こんな所に普通は住まないぞ。電気もガスも水道も、どうやって引っ張って来てるんだ?」

「それも”お前は余計なことを考えるな”って言われたはず」

「うーん、怪しいな。藤沢さんのおかげで、兄貴と最後の会話をすることができたけど……あの人の謎に迫りたくなってきた」

「私も……それはすごい気になる。もしかしたら藤沢さんも、何かに囚われてるのかもしれないし」

「そうだよな。こんな所で浮遊霊を成仏させてるなんて、藤沢さんも何かを背負ってるとしか思えないよ」
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