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三日目
人捜し⑥
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空と恵那に視線をチラチラと移しながら話していたリュウは、恵那の謝罪を機にその場にしゃがみ込んだ。
恵那を見上げるようにしているけど、その目は若干の潤みを持っている。
感情的になっているリュウに、その後かける言葉が見つからない。
リュウが喋り出すのを待つように、恵那もその場にしゃがみ込んだ。
「その時のことが頭に残ってるから、恵那のことがずっと心配で……でも良かったよ。恵那が、生きていてくれて」
「リュウ……」
「だってさ、俺の大切な人が二人もいなくなったら、流石にしんどいだろ。兄貴だけでも絶望的だったのに、恵那までいなくなったら、まじで無理だったよ」
「死のうとして、本当にごめん」
結局、恵那はまた謝ってしまった。それ以外の言葉を発するのは、逆に難しい。
リュウは恵那の謝罪に、今度は「良かったぁ」と嚙みしめる様な言葉を漏らして応えた。
その表情を見た恵那は、こんなに想ってくれる人がこの世にいたことに、感動すら覚える。
巴先輩のことしか頭になかったけど、リュウも恵那のことを考えてくれた人だったなんて。
リュウは恵那や巴先輩と違って、家族の中でも期待をされる側で、気を使われる側ではない。
そっち側のことを考えられるほどの余裕がなかったことに、今更ながらに恵那は気がついた。
もしかしたら、妹の加奈子にも、本当の自分を隠してしまっていたのかもしれない。
混乱してしまっている頭の中を吹き飛ばすように、明るい声に変わったリュウが、新たな疑問を恵那にぶつけてきた。
「んで、この山小屋って、一体何なんだ。まず、浮遊霊が存在するってどういうことだよ」
第一に聞かなければいけないくらいの疑問が、ようやくここで飛び出した。
浮遊霊という言葉を簡単に受け入れられるほど、リュウもバカではない。
恵那が無事だったということで、ようやく落ち着いてこの空間の謎に迫ることができるだろう。
リュウはこれまでと違った、全く力みのない声に変わっている。
「私も最初は驚いたけど、本当に浮遊霊がこの山小屋を訪れるのよ」
「嘘だろ? あの藤沢っていう人の冗談じゃないのか?」
「本当なんだって。私はもう二人の浮遊霊に会ってるのよ」
「二人も!? そんなおとぎ話みたいなこと、現実問題あり得るのか」
「私も、まだわかんない。この山小屋にどんな要素が働いているのかは」
「なるほどな……完全にファンタジーな世界に、俺たちは迷い込んでしまったってわけか」
普通ではあり得ないことが、現実として起こっている。
浮遊霊が行き着く山カフェは、通常の人間には見えないはずなのに、恵那とリュウには見えているという問題。
そして、その浮遊霊が、アロマとハーブティーの力で成仏してしまうという問題。
何より、藤沢という霊能者が、この険しい自殺スポットに住んでいるのも、不思議でしょうがない。
わからないことだらけなのを、リュウは受け入れるように飲み込んだ。
恵那を見上げるようにしているけど、その目は若干の潤みを持っている。
感情的になっているリュウに、その後かける言葉が見つからない。
リュウが喋り出すのを待つように、恵那もその場にしゃがみ込んだ。
「その時のことが頭に残ってるから、恵那のことがずっと心配で……でも良かったよ。恵那が、生きていてくれて」
「リュウ……」
「だってさ、俺の大切な人が二人もいなくなったら、流石にしんどいだろ。兄貴だけでも絶望的だったのに、恵那までいなくなったら、まじで無理だったよ」
「死のうとして、本当にごめん」
結局、恵那はまた謝ってしまった。それ以外の言葉を発するのは、逆に難しい。
リュウは恵那の謝罪に、今度は「良かったぁ」と嚙みしめる様な言葉を漏らして応えた。
その表情を見た恵那は、こんなに想ってくれる人がこの世にいたことに、感動すら覚える。
巴先輩のことしか頭になかったけど、リュウも恵那のことを考えてくれた人だったなんて。
リュウは恵那や巴先輩と違って、家族の中でも期待をされる側で、気を使われる側ではない。
そっち側のことを考えられるほどの余裕がなかったことに、今更ながらに恵那は気がついた。
もしかしたら、妹の加奈子にも、本当の自分を隠してしまっていたのかもしれない。
混乱してしまっている頭の中を吹き飛ばすように、明るい声に変わったリュウが、新たな疑問を恵那にぶつけてきた。
「んで、この山小屋って、一体何なんだ。まず、浮遊霊が存在するってどういうことだよ」
第一に聞かなければいけないくらいの疑問が、ようやくここで飛び出した。
浮遊霊という言葉を簡単に受け入れられるほど、リュウもバカではない。
恵那が無事だったということで、ようやく落ち着いてこの空間の謎に迫ることができるだろう。
リュウはこれまでと違った、全く力みのない声に変わっている。
「私も最初は驚いたけど、本当に浮遊霊がこの山小屋を訪れるのよ」
「嘘だろ? あの藤沢っていう人の冗談じゃないのか?」
「本当なんだって。私はもう二人の浮遊霊に会ってるのよ」
「二人も!? そんなおとぎ話みたいなこと、現実問題あり得るのか」
「私も、まだわかんない。この山小屋にどんな要素が働いているのかは」
「なるほどな……完全にファンタジーな世界に、俺たちは迷い込んでしまったってわけか」
普通ではあり得ないことが、現実として起こっている。
浮遊霊が行き着く山カフェは、通常の人間には見えないはずなのに、恵那とリュウには見えているという問題。
そして、その浮遊霊が、アロマとハーブティーの力で成仏してしまうという問題。
何より、藤沢という霊能者が、この険しい自殺スポットに住んでいるのも、不思議でしょうがない。
わからないことだらけなのを、リュウは受け入れるように飲み込んだ。
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