59 / 97
三日目
人捜し④
しおりを挟む
「まあ、生きてて良かったけど。恵那までいなくなったら、俺立ち直れなくなってたよ……」
「リュウ……私のこと、そんなに気にかけてたんだね」
「当たり前だろ。まじで心が折れそうだったぞ。遺書を見せてもらって、街中捜し回ってようやくここまで辿り着いたけど……正直出会えたことは奇跡に近いだろ」
「うん、よくこの山奥に来ようと思えたね。何の手掛かりもなくここまで来たの?」
「……いや。実は、この山について書かれている、闇サイトがあって。それを見て、もしかしたらって思ったんだ」
「リュウも、闇サイト見たんだ……」
リュウのこの言い方だと、単なる一ノ瀬山の神隠しについて書かれている裏サイトではなく、恵那や自殺した浮遊霊たちが閲覧した、もう一つの方の闇サイトを見たのだろう。
自殺スポットについて書かれている闇サイトを見て、リュウは可能性を見出した。
恵那がジャージを着て家を飛び出したという情報も相まって、この険しい山奥が怪しいと思ったみたいだ。
昔から行動力のある人間だとは感じていたけど、ここまでとは恵那も思わなかった。
自らの身にも危険が及ぶほどの自殺スポットまで、リュウが来てくれた理由は何なのか。ここまでして、恵那のことを助け出そうとしてくれるのは、何故なのか。
リュウが懸命に尽くしてくれたその本心を、恵那は聞いてみたくなった。
「リュウは……どうしてそんなに、私のことを気にかけてくれるの?」
顔を歪ませながら、面目なさそうに聞く。
リュウは恵那の恐々とした顔を見た後に、天に広がっている澄んだ青空に目を向けた。
少しの時間だけ、考えるように無言になると、ピューッという風の音が目立つように聞こえてきた。
風の音が穏やかになったタイミングで、リュウは静かにまた語り出す。
「恵那、昔も死のうとしたことがあるだろ? 中一の時」
「中一の時?」
「そう、中一の時。今から大体……五年前か」
「そんなこと、あったっけ?」
「ひでぇな。俺だけかよ、覚えてるの」
「ごめん」
唐突に言われた、五年前の話を、恵那は覚えていないフリをした。
頭の中から消え捨てた記憶だったのに、リュウはしっかりと覚えていたなんて。
……そう、恵那は過去にも、死のうとしたことがあった。
だけどそれは中学一年生の時で、今よりももっと突発的な感情から生まれたものだった。
その時からすでに、家族の中で居づらい存在になっていた恵那は、漠然と消えてみたいと思うようになったのだ。
恵那が死んだら家族は悲しんでくれるのか、心のどこかで、そうやって家族を困らせてみたいという衝動に駆られて、ある行動に移したのだった。
鮮明に覚えている記憶なのに、知らないフリをしている恵那に対して、リュウは思い出してもらおうと、あの日を回想し出す。
「リュウ……私のこと、そんなに気にかけてたんだね」
「当たり前だろ。まじで心が折れそうだったぞ。遺書を見せてもらって、街中捜し回ってようやくここまで辿り着いたけど……正直出会えたことは奇跡に近いだろ」
「うん、よくこの山奥に来ようと思えたね。何の手掛かりもなくここまで来たの?」
「……いや。実は、この山について書かれている、闇サイトがあって。それを見て、もしかしたらって思ったんだ」
「リュウも、闇サイト見たんだ……」
リュウのこの言い方だと、単なる一ノ瀬山の神隠しについて書かれている裏サイトではなく、恵那や自殺した浮遊霊たちが閲覧した、もう一つの方の闇サイトを見たのだろう。
自殺スポットについて書かれている闇サイトを見て、リュウは可能性を見出した。
恵那がジャージを着て家を飛び出したという情報も相まって、この険しい山奥が怪しいと思ったみたいだ。
昔から行動力のある人間だとは感じていたけど、ここまでとは恵那も思わなかった。
自らの身にも危険が及ぶほどの自殺スポットまで、リュウが来てくれた理由は何なのか。ここまでして、恵那のことを助け出そうとしてくれるのは、何故なのか。
リュウが懸命に尽くしてくれたその本心を、恵那は聞いてみたくなった。
「リュウは……どうしてそんなに、私のことを気にかけてくれるの?」
顔を歪ませながら、面目なさそうに聞く。
リュウは恵那の恐々とした顔を見た後に、天に広がっている澄んだ青空に目を向けた。
少しの時間だけ、考えるように無言になると、ピューッという風の音が目立つように聞こえてきた。
風の音が穏やかになったタイミングで、リュウは静かにまた語り出す。
「恵那、昔も死のうとしたことがあるだろ? 中一の時」
「中一の時?」
「そう、中一の時。今から大体……五年前か」
「そんなこと、あったっけ?」
「ひでぇな。俺だけかよ、覚えてるの」
「ごめん」
唐突に言われた、五年前の話を、恵那は覚えていないフリをした。
頭の中から消え捨てた記憶だったのに、リュウはしっかりと覚えていたなんて。
……そう、恵那は過去にも、死のうとしたことがあった。
だけどそれは中学一年生の時で、今よりももっと突発的な感情から生まれたものだった。
その時からすでに、家族の中で居づらい存在になっていた恵那は、漠然と消えてみたいと思うようになったのだ。
恵那が死んだら家族は悲しんでくれるのか、心のどこかで、そうやって家族を困らせてみたいという衝動に駆られて、ある行動に移したのだった。
鮮明に覚えている記憶なのに、知らないフリをしている恵那に対して、リュウは思い出してもらおうと、あの日を回想し出す。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる