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三日目

人捜し④

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「まあ、生きてて良かったけど。恵那までいなくなったら、俺立ち直れなくなってたよ……」

「リュウ……私のこと、そんなに気にかけてたんだね」

「当たり前だろ。まじで心が折れそうだったぞ。遺書を見せてもらって、街中捜し回ってようやくここまで辿り着いたけど……正直出会えたことは奇跡に近いだろ」

「うん、よくこの山奥に来ようと思えたね。何の手掛かりもなくここまで来たの?」

「……いや。実は、この山について書かれている、闇サイトがあって。それを見て、もしかしたらって思ったんだ」

「リュウも、闇サイト見たんだ……」

 リュウのこの言い方だと、単なる一ノ瀬山の神隠しについて書かれている裏サイトではなく、恵那や自殺した浮遊霊たちが閲覧した、もう一つの方の闇サイトを見たのだろう。
 自殺スポットについて書かれている闇サイトを見て、リュウは可能性を見出した。
 恵那がジャージを着て家を飛び出したという情報も相まって、この険しい山奥が怪しいと思ったみたいだ。
 昔から行動力のある人間だとは感じていたけど、ここまでとは恵那も思わなかった。
 自らの身にも危険が及ぶほどの自殺スポットまで、リュウが来てくれた理由は何なのか。ここまでして、恵那のことを助け出そうとしてくれるのは、何故なのか。
 リュウが懸命に尽くしてくれたその本心を、恵那は聞いてみたくなった。

「リュウは……どうしてそんなに、私のことを気にかけてくれるの?」

 顔を歪ませながら、面目なさそうに聞く。
 リュウは恵那の恐々とした顔を見た後に、天に広がっている澄んだ青空に目を向けた。
 少しの時間だけ、考えるように無言になると、ピューッという風の音が目立つように聞こえてきた。
 風の音が穏やかになったタイミングで、リュウは静かにまた語り出す。

「恵那、昔も死のうとしたことがあるだろ? 中一の時」

「中一の時?」

「そう、中一の時。今から大体……五年前か」

「そんなこと、あったっけ?」

「ひでぇな。俺だけかよ、覚えてるの」

「ごめん」

 唐突に言われた、五年前の話を、恵那は覚えていないフリをした。
 頭の中から消え捨てた記憶だったのに、リュウはしっかりと覚えていたなんて。
 ……そう、恵那は過去にも、死のうとしたことがあった。
 だけどそれは中学一年生の時で、今よりももっと突発的な感情から生まれたものだった。
 その時からすでに、家族の中で居づらい存在になっていた恵那は、漠然と消えてみたいと思うようになったのだ。
 恵那が死んだら家族は悲しんでくれるのか、心のどこかで、そうやって家族を困らせてみたいという衝動に駆られて、ある行動に移したのだった。
 鮮明に覚えている記憶なのに、知らないフリをしている恵那に対して、リュウは思い出してもらおうと、あの日を回想し出す。
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