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三日目

人捜し③

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 恵那とリュウを交互に見ながら、この山カフェの新たな疑問について考える藤沢。
 今まで、浮遊霊以外がこの山カフェに訪れたことなんてなかったのに、ここ数日で二人の人間と関わることになるなんて。
 考えてもその原因がわからないため、藤沢はついに「うーん」と項垂れてしまった。

「藤沢さん、リュウと話してもいいですか?」

「ん? ああ、好きなだけ話して来いよ。俺はここに居るから」

「ありがとうございます。リュウ、外に行こう」

「……おお」

 藤沢は頭を抱えている体勢のまま、恵那がリュウと二人っきりになることを許可した。
 すぐ目の前にある断崖絶壁にリュウを連れ出して、風を感じながらこれまでの話をする。
 もちろん、死ぬ気とかはとっくに削がれているので、断崖絶壁の縁にわざわざ行ったりはしない。あくまでも安全な距離を取って、リュウとの話に集中した。

「恵那、お前どうしてこんなことになってんだよ。それに、あの人なんだ? あんなホストみたいな人と、ここで何日間か暮らしてたのか?」

「藤沢さんは……良い人だよ。見た目はチャラついてるけど、私の自殺を止めてくれたし」

「そうかもしれないけど、こんなに危険な場所で、あんな怪しい人と過ごしていたなんて、心配するに決まってるだろ」

「ご、ごめん」

 リュウは鼻周りにじんわりとした汗を浮かべながら、必死になって恵那に説教をする。
 自殺をしようと決意したこと、そしてそれを実行しようとしたこと、すぐに帰らず山に滞在していたこと、その全てを怒られてしまった。
 リュウの言っていることに間違いはないので、恵那は反論をせずにひたすら言葉を浴びている。
 途中で言い過ぎていることに気づいたのか、リュウは声の勢いを殺しながら、恵那に抱いていた疑問を投げかけた。

「やっぱり、兄貴のことを追って、こんなとこまで来たのか……」

「……え?」

「恵那、兄貴のこと、好きだったんだろ? 一年経って、もう見つかんないことを悟って、自分も死ぬことにしたんだろ? だから、こんなとこに来たんだよな?」

「リュウ……」

「死にたくなる気持ちは俺も一緒だけど、少しは相談とかしてくれてもいいだろ! どんだけ不安になったと思ってんだよ」

「本当に……ごめんなさい」

 恵那から外に連れ出したはずなのに、リュウの方が会話の主導権を握っている。
 反省の色を見せるしか、リュウの気持ちを宥める手段がない。
 体を小さくさせながら謝る恵那を見たとしても、リュウの言葉の数が少なくなることはなかった。
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