28 / 97
二日目
ハーブの在り処①
しおりを挟む
山小屋の二階は、布団だけが敷かれているこじんまりとした寝室が、二部屋ある。
その片方に、恵那は住ませてもらっていた。もう片方は、当然藤沢の寝室だ。
三角屋根の天井に付いている正方形の小窓から、心地良い朝日が差し込んでくる。
生きている者には見えないという不思議な山小屋と出会って、一夜が明けた。
眩い光と、一階から聞こえてくる物音、そしてお味噌の良い香りによって、恵那はパッチリと目が覚める。
トントンという、包丁がまな板にぶつかる音で、藤沢が一階で何をしているか把握できた。
恵那は一度だけ思いっきり体を伸ばして、動けるモードに切り替える。
寝起きだとバレないような明るさを作ってから、すでに活動を開始している藤沢のもとへ、何食わぬ顔をして向かった。
「お、やっと起きたか。寝坊助さん」
「藤沢さんが起きるの早いんですよ」
「毎日ハーブティーを飲んでるとな、良い感じでリラックスできるんだよ」
「私も昨日飲んだんですけど」
「こういうのはな、積み重ねなんだ。マルナも継続して飲んでいれば、寝つきやすくなるかもな」
キッチンで朝ご飯を作っている藤沢と会話をしながら、いつもの椅子に座る。
部屋の中は香ばしい匂いと、アロマディフューザーから漂うフローラルの香りが混在していた。
だけど、別に悪い気はしない。むしろ清潔感を感じる香りなので、恵那にとっては清々しい気持ちになれた。
心の中で、久しぶりに爽やかな朝を過ごしているなと、実感する。
「もうちょいで、朝飯できるからな。そこでボーっとしとけ」
「ありがとうございます。こんな山奥に住んでるのに、食材とか確保できるんですね」
「まあ、裏ルートってやつさ。マルナはそんなこと気にしなくていいんだよ」
「そ、そうですか……というか、電気も水道も通ってるし。こんな山奥なのに」
「それも、マルナが気にすることじゃないってば。余計なこと考えるなら、手伝ってもらうぞ」
「すいません、黙っておきます」
何とか有益な情報を得ようと努力しても、藤沢に軽くあしらわれてしまう。
藤沢についても、このアロマが香る山カフェについても、恵那は知らないことだらけだ。
非現実的なこの山小屋の謎を、いつかは解明しないといけない。
恵那の中にある好奇心が、滾るように熱を帯び出した。
昨日はあんなに死にたかったのに、今はこの山小屋での生活を、恵那なりに楽しもうとしている。
「ほい、お待たせ。たくさん食えよ」
その片方に、恵那は住ませてもらっていた。もう片方は、当然藤沢の寝室だ。
三角屋根の天井に付いている正方形の小窓から、心地良い朝日が差し込んでくる。
生きている者には見えないという不思議な山小屋と出会って、一夜が明けた。
眩い光と、一階から聞こえてくる物音、そしてお味噌の良い香りによって、恵那はパッチリと目が覚める。
トントンという、包丁がまな板にぶつかる音で、藤沢が一階で何をしているか把握できた。
恵那は一度だけ思いっきり体を伸ばして、動けるモードに切り替える。
寝起きだとバレないような明るさを作ってから、すでに活動を開始している藤沢のもとへ、何食わぬ顔をして向かった。
「お、やっと起きたか。寝坊助さん」
「藤沢さんが起きるの早いんですよ」
「毎日ハーブティーを飲んでるとな、良い感じでリラックスできるんだよ」
「私も昨日飲んだんですけど」
「こういうのはな、積み重ねなんだ。マルナも継続して飲んでいれば、寝つきやすくなるかもな」
キッチンで朝ご飯を作っている藤沢と会話をしながら、いつもの椅子に座る。
部屋の中は香ばしい匂いと、アロマディフューザーから漂うフローラルの香りが混在していた。
だけど、別に悪い気はしない。むしろ清潔感を感じる香りなので、恵那にとっては清々しい気持ちになれた。
心の中で、久しぶりに爽やかな朝を過ごしているなと、実感する。
「もうちょいで、朝飯できるからな。そこでボーっとしとけ」
「ありがとうございます。こんな山奥に住んでるのに、食材とか確保できるんですね」
「まあ、裏ルートってやつさ。マルナはそんなこと気にしなくていいんだよ」
「そ、そうですか……というか、電気も水道も通ってるし。こんな山奥なのに」
「それも、マルナが気にすることじゃないってば。余計なこと考えるなら、手伝ってもらうぞ」
「すいません、黙っておきます」
何とか有益な情報を得ようと努力しても、藤沢に軽くあしらわれてしまう。
藤沢についても、このアロマが香る山カフェについても、恵那は知らないことだらけだ。
非現実的なこの山小屋の謎を、いつかは解明しないといけない。
恵那の中にある好奇心が、滾るように熱を帯び出した。
昨日はあんなに死にたかったのに、今はこの山小屋での生活を、恵那なりに楽しもうとしている。
「ほい、お待たせ。たくさん食えよ」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる