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一日目
アロマの香りで成仏を②
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アロマの香りが、迷える死者を誘う秘訣なのか。
恵那は完璧に原理を把握した訳ではないけど、細かい成分とかそういう何かがあるのだと思うことにした。
ここに来ている時点で、理屈とか常識は一切通用しないのだ。
現に今、死人と言われている人が、恵那の前に座っているのだから。
茂木は藤沢に言われた言葉を全て飲み込んで、先ほどから握っているハンカチでもう一度目尻を拭った。
その様子を見ながら、藤沢が続けて言葉を送る。
「茂木様の人生……確かに無駄と感じているのかもしれません。ですが、それは茂木様が選んだ道です」
「……もちろん、それは理解しています」
「キツイ言い方になりますが、たとえ向こうから誘われたとしても、奥様がいる男性と関係を持ってはいけないのです」
「はい……ぐうの音も出ないです」
「欲望が働いてしまうのは、人間ですから仕方がないことでしょうけどね……それでも、決して茂木様が被害者だとは思えません」
「自分でもわかっています。嘘をついた彼が悪いとか、裏切られたとか、自分のことを棚に上げて散々言いましたけど……結局は欲に溺れた自分のせいなんです。まさに、自業自得です」
これまでの丁寧な対応とは打って変わって、藤沢は茂木に切れ味鋭い言葉を与えた。押され気味の茂木は、少し涙が引っ込んだように見える。
茂木がした行為は、確かに批判されるべき行為だ。それから逃げるように自殺したことも、別に同情されるようなことではない。
それでも、たった一度の人生を、無駄だったという一言で片付けてしまうのは、それはそれで虚しいだろう。
恵那は心の中で、茂木のことを改めて気の毒に思った。そして、茂木本人も十分にわかりきっていることを、再度説教っぽく指摘している藤沢に対して、苛立ちも覚えた。
茂木はもう、命を捨てて清算しているのだから、追い込むような言葉を与えなくてもいいのに……。
口にする勇気はないが、茂木の味方をしてしまいたくなる状況だった。
俯いている茂木と、それを見て余計に心苦しくなっている恵那。
二人が暗いオーラを纏い出したその時、藤沢はテーブルの中央に配置されているディフューザーのスイッチを押した。
そのスイッチは、香りの強弱をコントロールできるスイッチみたいだった。今までよりも、蒸気の量が増加してきて、香りも強力になっている。
フローラルの香りがまた一層強くなったところで、藤沢は男らしい低い声でまた語り出した。
柔和な顔つきに変わっている藤沢から、今度はどんな言葉が飛び出すのか。恵那はソワソワしながら、藤沢の言葉に注力した。
恵那は完璧に原理を把握した訳ではないけど、細かい成分とかそういう何かがあるのだと思うことにした。
ここに来ている時点で、理屈とか常識は一切通用しないのだ。
現に今、死人と言われている人が、恵那の前に座っているのだから。
茂木は藤沢に言われた言葉を全て飲み込んで、先ほどから握っているハンカチでもう一度目尻を拭った。
その様子を見ながら、藤沢が続けて言葉を送る。
「茂木様の人生……確かに無駄と感じているのかもしれません。ですが、それは茂木様が選んだ道です」
「……もちろん、それは理解しています」
「キツイ言い方になりますが、たとえ向こうから誘われたとしても、奥様がいる男性と関係を持ってはいけないのです」
「はい……ぐうの音も出ないです」
「欲望が働いてしまうのは、人間ですから仕方がないことでしょうけどね……それでも、決して茂木様が被害者だとは思えません」
「自分でもわかっています。嘘をついた彼が悪いとか、裏切られたとか、自分のことを棚に上げて散々言いましたけど……結局は欲に溺れた自分のせいなんです。まさに、自業自得です」
これまでの丁寧な対応とは打って変わって、藤沢は茂木に切れ味鋭い言葉を与えた。押され気味の茂木は、少し涙が引っ込んだように見える。
茂木がした行為は、確かに批判されるべき行為だ。それから逃げるように自殺したことも、別に同情されるようなことではない。
それでも、たった一度の人生を、無駄だったという一言で片付けてしまうのは、それはそれで虚しいだろう。
恵那は心の中で、茂木のことを改めて気の毒に思った。そして、茂木本人も十分にわかりきっていることを、再度説教っぽく指摘している藤沢に対して、苛立ちも覚えた。
茂木はもう、命を捨てて清算しているのだから、追い込むような言葉を与えなくてもいいのに……。
口にする勇気はないが、茂木の味方をしてしまいたくなる状況だった。
俯いている茂木と、それを見て余計に心苦しくなっている恵那。
二人が暗いオーラを纏い出したその時、藤沢はテーブルの中央に配置されているディフューザーのスイッチを押した。
そのスイッチは、香りの強弱をコントロールできるスイッチみたいだった。今までよりも、蒸気の量が増加してきて、香りも強力になっている。
フローラルの香りがまた一層強くなったところで、藤沢は男らしい低い声でまた語り出した。
柔和な顔つきに変わっている藤沢から、今度はどんな言葉が飛び出すのか。恵那はソワソワしながら、藤沢の言葉に注力した。
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