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最終章 おふくろの味 ~北海道味噌の石狩風みそ汁~

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「俺の過去ねぇ……」

 春風は一応、考える素振りを見せている。
 アキはとんかつやみそ汁に口をつけずに、ただ春風の話に集中していた。
 当然思い出せもしない春風は、糸口を掴むためにサリに話しかける。

「ちなみに、最近ここに訪れたお客さんは、みんな人間でしたか?」
「いいえ、同業者もいたわ」
「やっぱりな。胡桃が言うように、みんな辛そうでした?」
「そうねぇ。この仕事にひと区切りつけて、成仏していった人もいたわね。頑張って人間だった時の記憶を取り戻して、消えちゃったわ」

 春風は腕を組んで、もう一度考え込んだ。
 どうやら、自分の過去を取り戻すということが、難題過ぎてできないと思っているみたいだった。
 成仏したお客さんが、よく記憶をひねり出すことができたなぁと、半ば感心してしまっている。

「ヒントになるかもしれないんで教えてほしいんですけど、前に来た人はどんな感じで思い出したんですか?」

 アキのお願いを適当に流すつもりだったけど、春風も知ろうという気に多少はなれた。
 サリと話していく中で、自分が何者だったのか、それが気になってきたのだ。
 他の神様たちにできて、自分にできないわけはない。
 春風も、過去の自分を知りたいと思い始めてきた。

「前のお客さんは夜の部だったけど……斎藤カオルさんって人だったらしいわ……」

 サリは淡々と説明し始めた。斎藤カオルの話だ。
 前にこの店に来店した倉持という人間の話もした。ネトが対応したお客さんでも、サリは頭に入っている。
 倉持の内縁の妻がカオルで、カオルは亡くなった。そして神様になったカオルが、倉持をこの店に誘い、選択させた。

 まさかの繋がりが明るみになり、そこから人間だった記憶を取り戻していき……成仏した。
 縁なのか、不思議な繋がりがあるものねとサリは笑う。
 春風は「なるほど、偶然思い出すこともあるのか」と声にした。サリがそれに答える。

「ええ。些細なことから、記憶が蘇ってくることは多いかもね。あなたも頑張れば、思い出せるかもよ」
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