神様たちのみそ汁 ～女神と死神と白猫が迎え入れます～

最終章 おふくろの味 ～北海道味噌の石狩風みそ汁～

⑦

「石狩風って……豪華ですね。こんなみそ汁、人間だった時でさえも食べたことあるか怪しいな」

　春風は手で口を隠しながら、驚いて話す。
　アキも石狩風のみそ汁に舌鼓を打ち、春風の声に耳を傾けた。
　確かに、アキも石狩風のみそ汁なんて食べたことがない。石狩鍋でさえ、口にしたことがなかったのだ。
　春風の言葉を聞いて、さらに知りたくなった。
　春風が、人間だった時のことを。

「春風君はさ……生きていた時、どんな人間だったんだろうね」

　アキの言葉が春風の箸の動きを止める。春風は「さあ……」と言った後に、もうひと口だけみそ汁を飲んだ。
　意味深にも見えたその表情を追求するように、アキは聞いた。

「春風君は、ずっとこのままでいいの？　疲れたりとかしてない？」
「……別に、してない。俺に与えられたミッションだし、できるところまでやるよ」
「できるところまでって……ここに来た神様の人たちは、みんな苦しそうだったよ？　人に重い選択肢を与えるのは、やっぱり精神的な不安もあるんでしょ？」

　春風は黙ってしまった。きっと春風も、いつまでこんなのやっているんだという感覚はあるのだろう。
　アキは春風に、楽になってほしかった。
　もうこれ以上、辛い立場を背負ってほしくない。
　この店に滞在して、居候をしている中で、神様の気持ちも理解できるようになってしまった。

「胡桃には関係ないだろ。俺はこのままでいい」

　ゆっくりととんかつを食べる春風。サリは聞いていないといった感じで、キッチン周りの拭き掃除をしていた。
　アキは、春風を救いたいという気持ちでいっぱいになった。

「じゃあ、せめて考えてほしい。春風君が生きていた時、どんな人だったか。私はそれが知りたい」

　どうして俺のことがそんなに知りたいのか？　という疑問が飛んで来たら、何て返そうか……アキは心の中でそんなことを考えていた。
　春風の過去が知れたら、成仏させてあげられるかもしれない。
　そうすれば、春風を楽にさせてあげられる。
　その一心で聞いた。