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最終章 おふくろの味 ~北海道味噌の石狩風みそ汁~
⑥
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「こんなちゃんとした飯、しばらく食べてこなかったな」
春風が定食を目の前に、ボソッと呟いた。
サリが「普段は何食べてるの?」と聞くと、「コンビニのパン」とあっさり答えた。
アキが気になって、続けて聞く。
「でも、モテるために色んな店に行って、色んなご飯を知っておくのが肝心って言ってたじゃない?」
「ああ、んなもん、適当に言っただけだ。俺からしたら、飯なんて適当で良かったんだ」
神様の仕事をこなす中で、食事なんて二の次だった。神様の仕事が、春風にとって最も重要なことで、そのために体を動かしているのだ。
圧倒されるような定食が目の前に現れると、春風にも食欲があったことを思い出させてくれる。
春風はサリに食べていいのか聞く。
「ええ、たくさん食べてね。遠慮せずに」
春風はみそ汁から口にした。アキも真似するように、みそ汁を啜る。
北海道味噌はクセがなくすっきりとした味わいだった。
中の具材を食べる前に、ドレッシングがかかったキャベツから食べ始める。
春風、そしてアキのシャキシャキという咀嚼音だけが、サリの耳に入ってきた。
「どう? そのドレッシング美味しいでしょ」
春風の方を見ても、何も答えなそうだったので、アキが代わりに「とても美味しいです!」と答えた。
確かに、甘くてまろやかで、だけどニンニクが効いていて……箸が止まらなくなる味だった。
春風はソースをとんかつに満遍なくかけている。アキもそうした。
「じゃあ俺、とんかついただきます」
サクッという音だけで、美味しいのは確定した。アキも続けてかぶりつく。
衣が口の中で跳ねるみたいにサクサクで、肉汁の甘みとソースの濃厚さがマッチングした。
すぐにご飯も口に入れる。この一口だけでとても幸福感がある。
「みそ汁も食べてね」
サリに言われるがまま、春風はまたみそ汁を口にした。
ニンジンと大根を食べた後に、鮭の切り身も食べてみる。綺麗なピンク色をした鮭はホロホロで、塩味がまた米を口に運ばせる。
春風が定食を目の前に、ボソッと呟いた。
サリが「普段は何食べてるの?」と聞くと、「コンビニのパン」とあっさり答えた。
アキが気になって、続けて聞く。
「でも、モテるために色んな店に行って、色んなご飯を知っておくのが肝心って言ってたじゃない?」
「ああ、んなもん、適当に言っただけだ。俺からしたら、飯なんて適当で良かったんだ」
神様の仕事をこなす中で、食事なんて二の次だった。神様の仕事が、春風にとって最も重要なことで、そのために体を動かしているのだ。
圧倒されるような定食が目の前に現れると、春風にも食欲があったことを思い出させてくれる。
春風はサリに食べていいのか聞く。
「ええ、たくさん食べてね。遠慮せずに」
春風はみそ汁から口にした。アキも真似するように、みそ汁を啜る。
北海道味噌はクセがなくすっきりとした味わいだった。
中の具材を食べる前に、ドレッシングがかかったキャベツから食べ始める。
春風、そしてアキのシャキシャキという咀嚼音だけが、サリの耳に入ってきた。
「どう? そのドレッシング美味しいでしょ」
春風の方を見ても、何も答えなそうだったので、アキが代わりに「とても美味しいです!」と答えた。
確かに、甘くてまろやかで、だけどニンニクが効いていて……箸が止まらなくなる味だった。
春風はソースをとんかつに満遍なくかけている。アキもそうした。
「じゃあ俺、とんかついただきます」
サクッという音だけで、美味しいのは確定した。アキも続けてかぶりつく。
衣が口の中で跳ねるみたいにサクサクで、肉汁の甘みとソースの濃厚さがマッチングした。
すぐにご飯も口に入れる。この一口だけでとても幸福感がある。
「みそ汁も食べてね」
サリに言われるがまま、春風はまたみそ汁を口にした。
ニンジンと大根を食べた後に、鮭の切り身も食べてみる。綺麗なピンク色をした鮭はホロホロで、塩味がまた米を口に運ばせる。
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